悲しい気分になったとき、我々は悲しい音楽を楽しむことがある。時として、それは気分を良くすることもある。

雑誌 Emotion に掲載された、2015年の研究に基づいた最新の研究結果では「気分が低迷している人々はハッピーな曲を聴くよりも悲しい曲を聴くことを好む傾向にある」とのことだ。

南フロリダ大学の研究者は、76人の女性学部生の前で、様々なクラシック音楽を聴かせた。この76人のうち、半数がうつ病と診断されていた人々だった。
ハッピーな音楽では、Jacques Offenbach の "Infernal Gallop" が、悲しい音楽では Samuel Barber の "Adagio for Strings" が含まれていた。

 

2015年の研究結果と同じく、うつ病と診断された参加者たちは、ハッピーな音楽を聴くよりもむしろ悲しい音楽を聴くことを好んだ。更に、参加者たちは悲しい音楽は「悲しい音楽を聴いた後は、以前よりも気分が良くなった」と語った。それにより、悲しい音楽には、心を落ち着かせる効果があるのではないか、と見られている。

今回の被験対象は女性の学部生のみを対象とした小規模な研究であるため、更なる研究が必要であるとのことだが、この研究結果は非常に興味深いものであり、音楽療法などの分野に影響を与える可能性があると見られている。

訓練を受けた音楽療法士は、歌を歌ったり音楽を聴いたり、また音楽を一緒に演奏するといったことを患者とのやりとりの中に取り入れており、これらは疼痛緩和から癌患者への治療にまで幅広く使用されてきた。治療・予防に関する医療情報源として最高水準のエビデンスを誇る「コクラン共同計画」の2017年のレビューによると、悲しい音楽による効果は、うつ病患者に少なくとも短期間の効果をもたらした、とのことである。将来的には音楽療法において、悲しい音楽に更なる焦点が当てられるようになるだろう、とのことだ。