世界で最も権威ある音楽賞の一つと見なされている、アメリカのグラミー賞。
アメリカの音楽産業において優れた作品を創り上げたクリエイターの業績を讃え、業界全体の振興と支援を目的とする賞と評されている。
 
だが数年前、ヒップホップ界のレジェンド Eminem(エミネム)は、米・グラミー賞を主催するThe Recording Academy(ザ・レコーディング・アカデミー)について 「The Recording Academy は1番最高な作品に報いを差し出すことをしないし、不正なゲームには興味がない」と発言。そして 2021年、多くのアーティストたちが Eminem の発言が正しいと感じるようになってきた、と E Pro が伝えている。

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2021年のグラミー賞にて、アメリカ出身のラッパーである Nas(ナズ) は「ベスト・ラップ・アルバム賞」を初受賞した。Nas は1991年から活動を始め、これまでにも数々の伝説を残し、1997年に初めてグラミー賞にノミネートされて以降、これまでに14回もノミネートされているものの、1度も受賞したことがなかった。つまり、ノミネートはされ続けてきたものの、グラミー賞の受賞に至るまでに約20年以上もかかったわけである。E pro は「Nas はもっと早くに受賞されるべきだった」と伝えている。
 

また The Recording Academy は、現代におけるトレンドに細心の注意を払って作品を決めていないとも批判されており、芸術的な誠実さとはかけ離れた独自のノミネート方法をが採用されているとして、多くのミュージシャンが SNS を通して抗議を始めている。

The Weekend(ザ・ウィークエンド)もグラミー賞に抗議している1人だ。
 

グラミー賞は、未だに汚職されたままだ。君たちは僕と僕のファンに借りがある、それから業界に透明性がない。

The Weeknd は、レコード会社がグラミー賞の審査に必要な音源を提出することも禁止しているそうだ。

また One Direction(ワン・ダイレクション)の元メンバーである Zayn Malik(ゼイン・マリク)は、ソロ活動を始めた後ノミネートされると思われていたが、未だノミネートされておらず、下記のツイートを投稿している。
 

グラミー賞とグラミー賞に関わっている全ての人間はクソだ。握手をしてプレゼントを渡さない限り、ノミネートすることも考えてくれない。来年は彼らにお菓子がたくさん詰まったギフトボックスを送るよ。

更に、アメリカ出身のラッパー Lil Wayne(リル・ウェイン)も下のようにツイート。たった一言であるものの、心情が十分に伝わってくる言葉だ。
 

グラミー賞はクソだ

人気シンガーである Halsey(ホールジー)も、先日 Instagram ストーリーにてグラミー賞について言及した。(※現在は24時間以上経っているため削除済み)

裏で行われるプライベートなことが全てだったりする。現場で権力のある人と仲良くなったり、人づてにキャンペーンを行ったりね。それから(権力を持った人と)握手を交わして、何かしら特別な「賄賂」が必要だったりする、だけどその「賄賂」は「賄賂ではない」と通用する不確かで曖昧なものだったりする。

また Eminem は、2020年11月に YouTube の投稿されたインタビューにて「グラミー賞」について下記のように語っている。

▼ Eminem Slams: “Never again will I go to the Grammys”. Relevant Again After 2021 Nominations Snubs

(一部抜粋)
彼らはいつも僕をグラミー賞に招待する。毎年だ。もう見たくない。理由はどうであれ毎年、アルバムがグラミー賞を受賞するかもしれないって仄めかしてくるんだ。少し前までは(受賞することは)意味があることだったと思うが、今は大したことではない。
毎年グラミー賞に行っていて、ある年に「アルバム・オブ・ザ・イヤー」にノミネートされた。だけど受賞したのは Norah Jones(ノラ・ジョーンズ)だった。僕たちは「え、誰?」ってね。彼女の音楽をディスっている訳ではなくて、その時僕は彼女の名前を1度も聞いたことがなかったし、僕たちの仲間も誰も彼女のことは知らなかった。
それから別の年にも Eminem Show のアルバムでノミネートされて招待されたから行った。例えば、僕ではなく、Kanye West(カニエ・ウエスト)がグラミー賞を受賞したなら話は分かる。なぜなら彼には多くのフォロワーがいるし、音楽業界に大きな影響を与えているからリスペクトする。だけどそうやって僕が受賞するかもしれないと匂わせて、僕らや他のアーティストを会場に招待してグラミー賞の番組の1部として宣伝するのはあり得ない。だからもう一生僕をグラミー賞に招待しないでくれ。僕の答えは1億年経っても「NO」だ。

(グラミー賞の投票についての質問についての Eminem の回答)
まず最初に……投票は完全に嘘っぱちだ。彼らは彼らが賞をあげたい人にあげているだけだ。全然彼らは分かっていないね。

(グラミー賞にノミネートされたら? という質問についての Eminem の」回答)
まず初めに、僕はノミネートされるわけがない。だって彼らは僕が彼らを嫌っているのを知っているからね。でももしもノミネートされたとしても受賞することはない。だって彼らは僕が彼らを嫌っていることを知っているからね。

このように、グラミー賞の扱い方に不満を持つアーティストが増えてきており、それによってグラミー賞の価値が今後変わってしまう可能性も否めないのかもしれない。