ミニマルで抑制されたハウスグルーヴというシンプルきわまりないトラックメイクを一貫して徹底させながら、そこへ驚くほどエレガントでセクシーな作家性を浮かび上がらせる当代きってのマエストロ。
ドイツに生まれ、アメリカ、スペインを経てイングランドで少年期を過ごしたThomas Melchiorは1990年代初頭になる頃にはロンドンでジャズ・ファンク・バンドの一員としてミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせている。ジャズやファンクが持つタイトで削ぎ落とされたトーンや、初期ニューウェーブやエレクトロ/アシッドハウスが持つミニマルな反復性に当時から大きく魅了されていた彼は、[Rephlex]やMove Dの[Source]といったレーベル群からVulvaやYoniなどの名義でソロワークを展開する。90年代中盤にBaby Fordと活動を共にするようになって以降は、よりタイトでヒプノティックなシーケンスを軸にしたミニマルトラックを[Ifach]、[Trelik]、そして自身のレーベル[Aspect Music]からリリース。
繊細に作り込まれた音色をミニマルなシーケンス上に並べ、その反復性の内部に潜む官能やグルーヴを浮き彫りにするという彼の一貫した作家性が2000年代以降のモダンなミニマルハウスやテクノに与えた影響は非常に大きなものであり、とりわけ'04に[Playhouse]からリリースされた『The Meaning』、そして'07に[Perlon]からリリースされた『No Disco Future』という両アルバムはクラシックと呼ぶにふさわしい風格を今も放ち続けている。
スペインやブラジルでのしばしの放浪の後、2003年以降ドイツ・ベルリンに定住しているThomasはRicardo VillalobosやZipと共にスタジオをシェアしながら[Perlon]をリリースの基盤とした制作活動を続けており、盟友Baby FordおよびTim HuttonとのプロジェクトSoul CapsuleをはじめBruno Pronsatoら他アーティストとのコラボレーション・ワーク、ルーマニア[ar:pi:ar]やデンマーク[Lomidhigh Organic]からのCinderfella Ltd.名義でのリリースなども積極的に展開している。