ロックとダンスミュージック、そこには壁があるようでない、ないようである。しかし、今回そんな壁を完全に取っ払うがごとく、国内のみならず海外でも活躍する日本屈指のミュージシャン、GACKTのヒット曲をダンスミュージックへと昇華した『GACKTRACKS –ULTRA DJ ReMIX-』が7月1日にリリース!

今作では☆Taku TakahashiやFPM、さらにはTRFのDJ KOOまで、日本を代表する14名のアーティストたちが参加し、GACKT の名曲の数々をEDM〜ハウス、様々なダンスミュージックへとリミックス。オリジナルのエッセンスを残しながらも確実にダンスフロアで映える、新たな魅力溢れるサウンドへと導いている。今回は、本作にも参加したMitomi Tokoto、さらには付属のDVDに収録のリミックス映像を手掛けたVJ WADAKENを招き、「GACKTRACKS –ULTRA DJ ReMIX-」の魅力、そして互いのシーン、そして音楽感について語り合ってもらった。

——GACKTさんは、元々ダンスミュージックに興味はあったんですか?

GACKT:作るか作らないかで言えば、作らない。それは、ボクの中でやっていきたい方向性があるから。ただ、使っている使っていないという意味では、日常の中で使ってる。クラブに行くことも好きだし、ダンスミュージックも聴く。そして、すごくリスペクトもしてる。ただ、特殊な文化だなと思うよ。昔から、その世界で生きている人たちとボクは、どこかで交わることがあるのかなって感覚があって。自分は(ダンスミュージックを)メインでは作ってないけど、ボクは近いところにいるんじゃないかなと感じてた。ロック・ミュージシャンって、あまりクラブに行くことや、クラブで楽しむことができない人が多いじゃん?ボクはよく行くしね。

——そんな中で、GACKTさん自身は身近にダンスミュージックがあったと。

GACKT:どこまでが身近というのかはわからないけど、拒絶するようなものじゃない。

——VJ WADAKENさんとTokotoさんは、GACKTさんについてはどんなイメージをお持ちですか?

VJ WADAKEN:今回僕は映像制作で参加させていただいて、こういったリミックス作品はロック・ミュージシャンではあまり例がないので、単純にすごいなと思いましたね。

Mitomi Tokoto:僕は、実は4年ぐらい前にクラブで何度か会ったことがあるんですよ。当時、僕がDJしている現場に遊びに来てくれて。



——今回リミックスの話が来たときはどう思いました?

Mitomi Tokoto:僕はあまり日本のロックの世界が詳しくなくて……。とりあえず返事をする前に、いろいろと勉強しましたね。GACKTさんのミュージックビデオも全部見て。GACKTさんは自分の世界がある人、今回勉強してわかりました。

——そういったことは作品に影響しました?

Mitomi Tokoto:そこで感じたGACKTさんの世界+派手なTokotoらしく、メロディを加えてプログレッシヴハウス系にしました。自分で言うのもなんですけど、かなり満足してますね(笑)。しかも、今回たまたまパリのデヴィッド・ゲッタのスタジオで作業していて、このリミックスもそこでフィニッシュして。

——すごいタイミング!

Mitomi Tokoto:偶然ですね。制作自体はアイディアがすぐにあったので、10日以内で終わりました。その後、実はすでにageHaでDJをするときにかけたりしていて。リミックスを作るとき、僕はいつも自分のDJでかけられるように作っているので、最終的にクラブでプレイするんですよ。今回もageHaや渋谷のClub Camelotでプレイしたんですけど、すごく盛り上がりました。



——GACKTさんは、Tokotoさんのリミックスを聴いていかがでしたか?

GACKT:正直、スゴいなって思った。こういう言い方は失礼だけど、今回たくさんの方にリミックスをお願いして、なかにはNGも出るだろうなって覚悟してたんだ。このプロジェクトが始まるとき、やるならボクは(リミキサーに)一切注文しない。ボクのアイデンティティは、自分の声が入っていればそれが勝手になるから大丈夫だとわかってたし。もしNGが出たら、みんなには悪いけどこのプロジェクトは中止。ボクはフラットな感じで出来上がりを楽しみにしていたわけだけど、実際に聴いたら本当に驚いたよ。

——それはどういった部分が?

GACKT:こんなアプローチをするんだとか、人によってはこんなコード進行に変えるんだとか、とにかくいろいろな部分で驚いた。そして、それを自然と言葉にしている自分にも驚いたし、とにかく、いろいろなアイディアを実践してきてくれたDJを改めてリスペクトしたよ。ボクらの中には、特に売れてしまった人たちってスタイルが固定して、そこから伸びない人が多い。決してそれがダメとは言わない。でも、ボクは人前に立つ以上、ずっとチャレンジし続けるべきだと思い続けてて。今回参加してくれたDJたちも、きっと同じ想いで新しい音楽を探し続けていると感じたよ。そういう部分を成熟した他のミュージシャンももっと見習うべき、刺激を受けるべきだよ。ボクは、“キープ”って言葉はこの世に存在しないと思ってる。あがるか落ちるかしかなくて、チャレンジした結果キープに見えることはあっても、キープしようとしてキープできるものじゃない。キープしようと思ったら必ず落ちる。今の日本のロック・ミュージシャンには、そこをもっと理解してほしい。

——VJ WADAKENさんは、オリジナルのミュージックビデオをリミックスし、今作のミュージックビデオ的ダイジェスト映像を手掛けられましたがいかがでした?

VJ WADAKEN:以前からMTVやスペースシャワーなどでGACKTさんのミュージックビデオを見ていて、曲もだいたい知っていたんですよ。それで、そのリミックスがどんな曲になるのか勝手にイメージして、映像のプランも予め考えていて。でも、それが結構裏切られたというか。個性をぶつけてくる人もいれば、曲に合わせてくる人、その2つに分かれていて、みんないろいろ考えてるんですよね。おかげで、僕は当初のプランが全部覆されました。

GACKT:映像も素晴らしかった。ボクは特にそうなんだけど、ミュージックビデオはうまくハマるときとそうでないときがある。うまくできればその作品は大切なものになるし、できなかったものはいつ見ても悔しさが残る。でも、今回は悔しかった想いさえも取っ払って、使ってくれているっていう感覚。それがとにかく嬉しくて。今回は、“嬉しい”っていう言葉が一番大きいかもしれない。

——VJ WADAKENさん的に、アルバム全体を通してどんな印象でした?

VJ WADAKEN:非常にバラエティに富んでいると思いますね。それを受けて(今回の映像が収録される)DVDではGACKTさんの様々な表情が見れるように、視覚的にもバラエティ豊かに楽しめるように制作しました。元々あるミュージックビデオを再構築し、今までのGACKTさんにはなかった新しい世界観で見せることを念頭に置いて。あとは、2秒間の1シーンを、30時間ぐらいかけて編集した箇所があって、見直したら自分でも見過ごしそうになるぐらい一瞬で(笑)。ただ、その積み重ねなくしてはできない世界観を表現できたかなと思うし、あとからGACKTさんにも面白いねと言って頂けたのでホッとしました。ファンの方にはおなじみのミュージックビデオが、新たにリミックスされた様を楽しんでいただき、クラブミュージック好きには特典DVDを見てそれからGACKTさんのオリジナルビデオ、楽曲や映像に触れてもらえると嬉しいですね。



——Tokotoさんはリミックスの制作にあたって、どんなことを意識しましたか?

Mitomi Tokoto:僕は普段、リミックスの仕事は、どんな作品でも100%受けている訳ではありません。それは他の作業もあるし、第一に自分のDJでも使えると思わないとやらないから。今回は、本当に使えると思ったんですよね。GACKTさんだからスーパー・ドラマティックなものができる、それは他のアーティストではできないことなんですよね。それで、久しぶりに90年代のトランスっぽい感じがいいなと思って。GACKTさんのイメージと90年代のトランス、その2つが頭にあって、それを合わせて作りました。

——リミックスに関して言えば、日本語詩のダンスミュージックは、譜割などが難しいという話も聞きますが……。

Mitomi Tokoto:僕は日本語がうまくないし、日本語の歌詞はいつも音楽として聴いているだけ。だから、歌詞の意味はそんなにわかってなくて。今回は“OASIS”という曲で、実は今でも意味はタイトルしかわからないんですけど、ミュージックビデオとか勉強して、歌い方もあるかもしれないけど、僕的に映画っぽかったんですよね。それも、真面目でドラマティックな映画。だから、リミックスもその雰囲気に仕上げました。

——ドラマティックというのは、すごくわかります。

Mitomi Tokoto:使っているブラグも、映画のBGMでよく使われているプラグインを使ったりしてますからね。ハリウッド(作品)のオープニングみたいな(笑)。リスナーがどう感じるかはわからないけど、僕は今回そういう思いで作ってて。それでいて、ageHaのアリーナでもプレイできる感じにも。

——GACKTさんの人生もドラマティックですよね。そういった部分でそう感じたのところもあるのかなと。

GACKT:ボクの場合はドラマティックというか、危ないだけ。好き放題生きてるだけだからさ(笑)。でも、今回プライベートで話すのはマーク(パンサー)ぐらいしかいないなかで、ほとんど知らないDJたちにオファーを出して、想像以上にみんながやるよって言ってくれて。ボクは全てのDJたちに対して「何もオーダーしない」ことを貫いたから、それは逆に言えば、DJにとってみたら知り合いじゃないことは言い訳にできない。しかも、他のDJたちと横並びになっちゃうから、彼らにとっては勝負でもあるわけで。そういった環境の中でどんなものが出てくるかが楽しみだったし、全てを聴いた後、ボクは改めて彼らをリスペクトしたよ。そして安心したというか。

——こうしてダンスミュージックに触れてみて、GACKTさんは自分でもやりたいと思いませんでした?

GACKT:今までもいろいろな案があったけど、ソロでは追求したい音楽があるからそこに集中していく。それ以外のアプローチは、別のバンド形態でチャレンジしていきたい。でも、そのとき自分がどう変化しているのか、それは興味あるよね。今までそういったオファーをずっと断ってきて、まさかこういった形で関わると思わなかったから。今回のプロジェクトでこうしてみんなと繋がれたのだから、まずはプライベートで仲良くできたらいいよね。今までも(クラブに)聴きに行っていたけど、みんなが回しているところに遊びに行って、そこで声かけられたらなって思ってる。



——7月にはリリースパーティが行われますが、そこで期待することは?

GACKT:ボク自身、リリースパーティではある意味、お客として楽しめたらなって思ってる。

——自分も楽しみたい?

GACKT:もちろんみんなも楽しんでほしいし、ボクも楽しめたらいいな(笑)。コンサートとクラブ、どちらに行くかと言えば、ボクは圧倒的にクラブ。なぜかと言えば、ロックやポップにしてもそうだけど、それを聴きに行っても楽しくない。感動がないんだ。ただ聴いていても何も得るものがないから。でも、クラブにはいいDJがいて、そこで自分の気持ちがハマるとずっと楽しんでいられる。その感覚がボクはすごく好き。だからボクはクラブに行くんだよ。今回のイベントでも、そんな気持ちになれたらいいな。

Writer:Tadayuki Sugiyama
Stylist(GACKT):ROCKEY
Hair & Make-up(GACKT):たなべこうた



  
 
GACKTRACKS - ULTRA DJ ReMIX - Release Party
2015年7月3日(金) @ シャングリ・ラ 東京
TIME:21:45 open / 22:30 start~midnight
PRICE:前売券 5,000円  / 当日券7,000円
※別途、drink代(1,000円)必要。


LINEUP:GACKT
【REMIXER DJ】DAICHI YOKOTA (club-D),DJ KOO (TRF),DJ OMKT,el poco maro,MARC PANTHER (globe),MASANORI MORITA (STUDIO APARTMENT),ROCKETMAN,RYOTA NOZAKI (Jazztronik),SATORU KURIHARA (Jazzin'park),☆Taku Takahashi (m-flo / block.fm),TeddyLoid,Takeru John Otoguro (block.fm),and SECRET GUEST!!
【DJ】DJ BEBE,Hisanori H (ENTIA RECORDS),NORISHIROCKS DEEJAYZ,and more
【VJ】VJ WADAKEN
【DANCERS】CYBER JAPAN DANCERS,G-DANCERS (EGA,TAKA,TAKASHI,TAKA-KI, MADOKA,RYO)