90年代のヒップホップ・シーンをリードし続け、今もジャンルを超え絶大な支持を集めているA Tribe Called Quest(ATCQ)。彼らのデビュー作にして、90年代ヒップホップ黄金期の幕開けを飾った名作『People's Instinctive Travels and the Paths of Rhythm』の〈25周年記念盤〉のリリースを祝うDJツアーのため来日したメンバー、アリ・シャヒード・ムハマド(DJ/プロデューサー)が、渋谷にオープンしたばかりの都内最大級のエンターテイメント・ストア「HMV&BOOKS TOKYO」でトークショーを行った。ATCQのデビュー当時の話から、アリ・シャヒードがプロデューサーとして携わったディアンジェロについてなど、これまで語られてこなかったお宝トークが続出した。(インタビュアー:高橋芳朗/音楽ジャーナリスト)

立ち見を含め100人を超えるヒップホップ・ヘッズが集まる中、トークショーに先立ち、1990年にJungle Brothersと共に行ったヨーロッパ・ツアーのライヴ・ビデオ“The Art of Moving Butts in Europe”(未DVD化)が上映された後、トークショーはスタート。まずは、デビュー盤にしてそれまでのヒップホップの既成概念を打ち砕いた革新的な音楽性について聞かれ、「19歳の時には誰だって他の奴らとは違うんだっていうある種の野望を持っているもの。デビューした頃はそんなに評価されていたわけではなかったけど、25年経った今もこうやって皆が体を揺らしながら聴いてくれているというのが結果だ」と誇らしげに語った。そして、ATCQのもう一人の柱ともいえるQティップに対しては「彼のラップは、どちらかと言えば、ジャズに近いかたちで、ノンストップでグルーヴが続く。彼は天才だと思う」と最大限の賛辞を贈った。また、当時ニューヨークに住み、このデビュー・アルバムにも参加したテイ・トウワを「知り合ってすぐに、すごく幅広い引き出しのあるミュージシャンだとわかった」と評した。さらに、1995年にプロデューサーとしてデビューに携わったディアンジェロについても話が及び、「新作『ブラック・メサイア』はとても良いレコード。今までやってきたことを繰り返さない勇気のある選択だったと思う。また次のレコードを作るのに、10年、20年、30年とかからないことを祈るよ」とエールを送った。
*トークショーの聞き起こしが気になる方は、こちらまで。

その夜、渋谷のSOUND MUSEUM VISIONで行われたATCQ25周年を祝うパーティーには盟友テイ・トウワが出演。立錐の余地もないほどファンで埋まったフロアにまずテイ・トウワが登場し、ATCQと出会った頃のニューヨークを意識した80~90年代のヒップホップ~ハウスを中心にスピン。途中でテイ・トウワ自身の「Technova」をサンプリングしたATCQのヒット曲「Find A Way」がプレイされるとフロアは熱狂の渦に。そして自らマイクを持ち、お祝いのメッセージと共に次のアリ・シャヒードを呼び込んだ。アリ・シャヒードもフロアの盛り上がりに応えるかのように、「Can I Kick It?」や「I left My Wallet In El Segundo」といったデビュー・アルバムからはもちろん、「Scenario」や「Electric Relaxation」などATCQクラシックを連発。アリ・シャヒードは明け方まで、テイ・トウワをはじめとする旧友や日本のファンと旧交を温めあった。

日本でも11月25日に発売されるアルバム『ピープルズ・インスティクティヴ・トラヴェルズ:25th Anniversary Edition』には、今作用にリマスターされたオリジナル・アルバム音源に加え、ATCQから大きな影響を受けたと公言するファレル・ウィリアムス、シーロー・グリーン、J.コールによる新たなリミックス・バージョンが収録されていることでも話題を呼んでいる。日本盤だけのボーナス・トラックとして、アイズレー・ブラザーズの「Between the Sheets」を使った歴史的なリミックスと称賛される「Bonita Applebum (Hootie Mix)」が追加収録されていますので、気になる方は、以下に詳細があります。

Pharrell William Remix
 

Cee Lo Green との共演
 

J-Cole Remix