白い音は踊れない?
黒い音はいまいち盛り上がれない?
そのジャッジを下すのはもう少し待って欲しい。
本作「Chief 2 Thief」は間違いなく黒くもあり白くもある。
Tsuguharu x Hayashiの1st albumにして大きな野心作だ。
音楽的に面白いけどグルーヴが弱い。
グルーヴは申し分無いけど単調過ぎる。
そんな耳の肥えたリスナーの要求をこそ満たしてくれるのが本作「Chief 2 Thief」ではないかと思う。

本人はこのアルバムについて「リスニングとダンスのバランスを大事にしたアルバム」と語っている。
今回のアルバムは4つ打ちを基本としながらも、かなりバラエティ豊かな楽曲で構成されている。
ビートは自他共に認めるNY HOUSE、Body&SOUL上がりの音だ。
上モノについては本人は次のように語っている。
「最後の一曲を除いては、超えちゃいけない線の手前で出来るだけポップにしたかった。
 最後の一曲はレーベルオーナーへのプレゼントです。」

彼の音楽的バックグラウンドは非常に多岐に渡る。
彼は音楽大学を卒業しており、あらゆる音楽に真摯に向かい合ってきた。
学生時代はオーケストラのスコアを書きながら、リズムマシンやシンセサイザーを触ってきた。
その確かな音楽理論によって構築された楽曲にクラブミュージックの概念やグルーヴを組み合わせたものが、
今回の楽曲群と言えるだろう。

1曲目のRim de forはHiroshi Watanabeの耳に止まり、PLAZA IN CROWDから2012年2月にリリースされた
彼のミックスCD「Century Groove Innovation Vol.1」に収録されている。
マスタリングのエンジニアは、Masao Saotome。ジャケットのデザイナーは、Masakatsu Mizutaniである。
Tsuguharu x Hayashiに呼応した各界の人の縁により、この作品は誕生した。
これはまた、彼の真摯な人間性から成ったものと言えるだろう。

最後に今回の作品に対し、彼は「今回は記念のようなもの」と語っている。
本作で一区切りを終えたとするTsuguharu x Hayashiはこれから何を目指し、何を表現していくのか。
今後も目が離せない重要人物の一人であることは間違いない。