FUJI ROCK FESTIVAL'18 、2日目は近づく台風12号の風雨の気配に怯えながらの1日となったが、この日も Skrillex(スクリレックス)、Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)と、見逃せないアーティストが多数ラインナップされており、合羽に身を包んだオーディエンスは雨にも負けず、広い苗場の山を行き来していた。
 

メタルファンでもロックファンでもない方でも「マキシマムザホルモン」のことは知っている方は多いことだろう。グリーンステージには大勢の老若男女が集まり、マキシマムザホルモンのお決まりの SE SPACE COMBINE "marchin’mint flavors" が流れると、会場全体に唸るような歓声が上がり、モッシュピットは狂気乱舞。どんより曇った夕方に "恋のメガラバ" でマキシマムホルモンのライブがスタートした。
世界のファエステイバルを経験している彼らのパフォーマンスはワールドクラス。次から次へと畳み掛けるように演奏していく。途中の MC では、ちょうど苗場に向かっていた台風12号の進路予想図と小田和正の『OH!YEAH!』のジャケットの体の曲がり方が似ているという話の途中にBGMで『ラブストーリーは突然に』が流れ、まさに旬過ぎる時事ネタと完璧な振りと落ちで会場が爆笑に包まれた。ライブの合間にこれほど笑いが生まれたグリーンステージも珍しかったのではないだろうか。彼らが愛される理由は、その完成された音楽性はもちろんのこと、様々な方面から観客を楽しませてくれるエンターテインメント性も人気の秘密だろう。

@浜野カズシ

"Saturday Night" から始まったステージには、まだ Carla Thomas(カーラ・トーマス) の姿はなく、妹の Vaneese Thomas(バニーズ・トーマス)の歌声が観客を盛り上げていた。彼女が「今日は何曜日?」と尋ねると「Saturday Night!!」とオーディエンスからレスポンスが。次の曲では「あなたたちをメンフィスへ連れて行ってあげる」と宣言。「クイーン・オブ・メンフィス」の呼びかけと共に、ソウルクィーン Carla Thomas が満を持して登場すると、初来日の彼女を待っていたオーディエンスから大歓声が沸き起こった。Otis Redding とのデュエットで有名な "Lovey Dovey" "B-A-B-Y" は高揚感に包まれており、まさに Field Of Heaven にふさわしいパフォーマンスとなった。

Ⓒ Tsuyoshi Ikegami

Skrillex のライブでは、始まる前に前列に Skrillex   のロゴの入った黒いマスクが配られ、ステージ両サイドの巨大スクリーンでカウントが始まると、フロアに高揚感が高まっていく。Skrillex が登場すると、会場のヘッドバンガーたちは両手を天に突き上げて咆哮した。最近の世界各国のダンスミュージックフェスでは、今年惜しまれつつもこの世を去った Avicii の楽曲が追悼の意も込めて多数のアーティストたちにプレイされているが、ここフジロックでも Skrillex によって "Levels" の Skrillex Remix がプレイされた。Skrillex の楽曲の中でも一際人気が高い "Breakin' A Sweat" では、会場が揺れるほどに盛り上がり、日本の国旗を大きく振り翳すパフォーマンスにファンたちは熱狂。

@Masanori Naruse

更に、アンコールではかねてより親交がある X JAPAN の YOSHIKI がステージ上に登場し、YOSHIKI がピアノ、Skrillex がギターを担当して X JAPAN の名曲 "ENDLESS RAIN" を演奏。気合の入った YOSHIKI は上着を脱ぎ捨て、今度はドラムセットへ。そしてなんと、今度は YOSHIKI のドラムで Skrillex の世界的大ヒット曲 "Scary Monsters & Nice Sprites" が演奏されるというまさかの展開で会場は発狂したような騒ぎに。ライブのラストには、Skrillex と YOSHIKI が肩を組み、安堵もお互いに「Thank You!!」と叫び合い、観客と共に記念撮影をするなど、熱狂と一体感に溢れたライブとなった。



2013年以来2回目のフジロック登場となった Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)。前回は Björk(ビョーク)のライブと時間帯が被っていたためオーディエンスが少なかったので、彼にしてみればその雪辱を晴らしてやろうという気持ちもあったのではないだろうか……と邪推してしまう。あの時と現在とでは、彼自身も、彼を取り巻く環境も大きく変わっており、現在ではもし Björk の裏でライブを行ったとしても、彼女と同じくらい、もしかしたらそれ以上のオーディエンスが詰めかけることは間違いないだろう。数々の賞を総舐めにしてきた彼の佇まいからは、更にビッグアーティストとして成長した、Hip HopシーンのTOPの座に君臨する者の一人としての、堂々たる貫禄とオーラが感じられた。両端にバンドセットはいるものの、あの広いグリーンステージにほぼ一人で立ち、数え切れないオーディエンスたちを相手に全く怯まず、むしろ観客たちを始終ラップで圧倒し続けた。

@Photography by:Christopher Parsons for Top Dawg Entertainment