今回ご紹介するミュージックビデオの数々は、独創的な特殊効果で映像をより劇的なものとしたり、YouTube がメジャーとなるよりもずっと以前からドキュメンタリーのアプローチを取り入れたり、まだ誰も見たことのない未来世界を演出するために魚眼レンズを利用したりと、様々な創意工夫に溢れており、その音楽とマッチした素晴らしい映像美が詰め込められている。
当時リアルタイムで見ていた方はノスタルジーに浸って、初めて見る方は90年台のクリエイティビティに驚愕しつつ、今年で20週年を迎えるミュージックビデオの数々をご覧いただければと思う。
 

The Chemical Brothers -「Let Forever Be」

監督:Michel Gondry(ミシェル・ゴンドリー)

3枚目のスタジオアルバム『Surrender』に収録せれており、このアルバムから2曲目のシングルとしてもリリースせれた。これぞミシェル・ゴンドリーといえるようなビデオで、イギリスのバンド The Kinks(キンクス)のボーカル Ray Davies(レイ・デイヴィス)の「Starmaker」からインスピレーションを得て作られた。低予算の DIY で作られたサイケデリックな特殊効果によりどんどん映像に引き込まれていき、観ている方は次に何が起こるか誰も予測できない面白さがある。彼の時間、努力、想像力のみで作られた、複雑で魅力的な世界の MV は一度見たら忘れられない。
 
 

Fatboy Slim -「Praise You」

監督:Spike Jonze(スパイク・ジョーンズ)

2枚目のスタジオアルバム『You've Come a Long Way, Baby』に収録されており、このアルバムから3番目のシングルとしてもリリースされた。架空のダンスグループ Torrance Community Dance Group の7人が集まって映画館も前で曲に合わせてパフォーマンスするという MV。異様な雰囲気と曲に合っているのか合っていないのかわからないダンスが印象的。Spike Jonze 監督本人がダンンスグループのリーダーとして出演している。
 
 

Björk -「All Is Full of Love」

監督:Chris Cunningham(クリス・カニンガム)

3枚目のスタジオアルバム『 Homogenic』に収録。別名「変態映像作家」とも呼ばれる衝撃的な映像が特徴の監督が手がけた作品。2体のロボットがキスをして愛し合う姿が奇妙で、とても美くしいMV。2011年には「TIME」誌が発表した「過去30年におけるベスト・ミュージック・ビデオ」にもマイケル・ジャクソン「Thriller」、ジャミロクワイ「Virtual Insanity」らと並んで選出されるなど、その他数々の賞を受賞。ニューヨークの近代美術館にも常設展示されている。
 
 

Aphex Twin -「Windowlicker」

監督:Chris Cunningham(クリス・カニンガム)

8枚目のシングルとしてリリース。「All Is Full of Love」と同じく、Chris Cunningham 監督の作品。当時のアメリカのギャングスタヒップホップミュージックビデオのパロィー作品で、10分と長く作品としての見応えは抜群。奇妙で過激な描写が含まれる為、フルの映像はどのチャンネルでも夜間のみの放送と制限されていた。
 
 

Blur -「Coffee + TV」

監督:Garth Jennings(ガース・ジェニングス)

6枚目のスタジオアルバム『13』に収録されており、このアルバムから2番目のシングルとしてもリリースされた。バンドのギタリスト Graham Coxon(グレアム・コクソン)が作曲し、歌っている。牛乳パックが旅をして恋をしてギタリストの Coxon を探すという内容で、音楽と映像がとてもマッチしている。数々の賞を受賞し、アメリカでもヘビートーテーションされた。
 
 

Lauryn Hill -「Everything Is Everything」

監督:Sanji(サンジ)

スタジオアルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』に収録。Macy Grey(メイシー・グレイ)、Mary J. Blige(メアリー・J. ブライジ)、など MV で高く評価されてた Sanji によって作られた。MV はニューヨークを描いたもので、街がレコードになっており、街の様々な場所をターンテーブルの針が最後になるまで駆け抜けていくというもの。2000年には、最優秀ミュージックビデオ/ショートフィルムのグラミー賞に、ソウルトレインレディオブソウルアワードにノミネートと数々の賞にノミネートされている。
 
 

Sigur Ros -「Vidrar Vel Til Loftarasa」

監督:Arni & Kinski

2枚目のスタジオアルバム『Ágætis byrjun』に収録。1950年代アイスランドの設定で、サッカーをしている男の子がゴールを決めた後にキスをし始め、それを父親がやめさせるというもの。この映像にはバンドメンバー全員が出演しており、サッカーチームのコーチや審判、観客に扮している。
 
 

Eminem -「My Name Is」

監督:Phillip Atwell(フィリップ・アットウェル)、Dr. Dre(ドクター・ドレ)

2枚目のスタジオアルバム『The Slim Shady LP』に収録。後に「Stan」、「Lose Yourself」、「The Real Slim Shady」などの MV も手がける Phillip Atwell の作品。様々なテレビ番組や映画のパロディーが作品に盛り込まれていて、また当時の大統領ビル・クリントンやテレビ司会者のジョニー・カーソンなどもモノマネをした Eminem が登場する。
 
 

Foo Fighters -「Learn To Fly」

監督:Jesse Peretz(ジェシー・ペレス)

3枚目のスタジオアルバム『There Is Nothing Left to Lose』に収録されており、このアルバムからファーストシングルとしてもリリースされた。飛行機内で繰り広げられる出来事が作品となっており、Foo Fighters のメンバーが乗員を演じている。終始バカらしら全開で、イギリスのモンティー・パイソン的な要素が詰められた作品。
 
 

Korn -「Freak On A Leash」

監督:Todd McFarlane(トッド・マクファーレン)、Jonathan Dayton(ジョナサン・デイトン)、Valerie Faris(バレリー・ファリス)、Graham Morris(グラハム・モーリス)

3枚目のスタジオアルバム『Follow the Leader』に収録。アニメーションと実写の世界が繋がっている設定。メンバーがライブをしている部屋の壁は弾丸跡まみれで、外の光が穴を通して差し込む映像はどこか美しくもある。このビデオは1999年の MTV Video Music Awards で最優秀編集賞および最優秀ロックビデオ賞を受賞し、その後2000年に最優秀短編音楽ビデオ賞でグラミー賞を受賞。