世界的なムーブメントとしてダンスミュージックシーンを席巻し、現在ではダンスミュージックファンならずとも、ポップ・ミュージックの延長線上としても幅広い層に聴かれるようになったハウスミュージック。しかし、一口に「ハウスミュージック」と言っても、そのジャンルは細分化されており、何が何やら違いがわからない!という方も多いことだろう。
しかも、EDM と呼ばれるジャンルが台頭してきた前後では、同じ名前のジャンルでも全く別物に変化を遂げてしまっている場合もあり、ますます音楽ファンを困惑させていることも……。

このシリーズでは、その違いも含めてダンスミュージックシーンで使用されている音楽ジャンルを誰にでも分かりやすく、今一度紹介していきたいと思う。
第一回目は上記の通り、HOUSE(ハウス)と呼ばれるジャンルについてをご紹介しよう。​
 

HOUSE MUSIC(ハウス・ミュージック)

HOUSE MUSIC の名前の由来となったのは1977年にシカゴにオープンしたクラブ「Warehouse(ウェアハウス)」からきているというのが最も有力な説とされている。HOUSE MUSIC の特徴として BPM は120~125くらい、一小節に四分音符で四つキックが入る、いわゆる「4つ打ち」で進んでいく。リズムの繰り返しが基本的な構造は、聴く者に徐々に陶酔感を与えていく。ディスコやダンスクラシックをルーツに作曲されるが、それらとは違う魅力を持っている。
 

∟ TROPICAL HOUSE(トロピカル・ハウス)
ハウスの起源とされているシカゴ・ハウスの系譜とは全く別物であり、EDM の DEEP HOUSE から派生していったジャンル。メジャーコードを主に使用し、リズムは4つ打ち、スチールパン、マリンバ、サックス、ギターなどが使用され、南国感が全面に押し出されている。

代表的なアーティスト:Chris Malinchak(クリス・マリンチャック)、Klingande(クリンガンデ)、Kygo(カイゴ)、Duke Dumont(デューク・デュモン)、Lost Frequencies(ロスト・フリクエンシーズ)、Robin Schulz(ロビン・シュルツ)、Jonas Blue (ジョナス・ブルー)、Gryffin (グリフィン)
 
 
 

∟ BIG ROOM HOUSE(ビッグルーム・ハウス)
エレクトロ・ハウスのサブジャンルで、2010年半ば以降の EDM の中でも、最も人気のあるジャンルの一つとして挙げられる。BPM は126〜132ぐらいが主流で、強力で駆り立てるようなドロップで構成されている。ハード・テクノで用いられる激しい低音の4つ打ちが特徴。

代表的なアーティスト:David Guetta(デビッド・ゲッタ)、Hardwell(ハードウェル)、Armin van Buuren(アーミン・ヴァン・ブーレン)、The Chainsmokers(チェインスモーカーズ)、Dimitri Vegas & Like Mike(デミトリ・ベガス&ライク・マイク)、Nicky Romero(ニッキー・ロメロ)、Tiësto(ティエスト)、Afrojack(アフロジャック)、Zedd(ゼッド)
 
 
 

∟ PROGRESSIVE HOUSE(プログレッシブ・ハウス)
1990年代初頭に生まれたサブジャンルで、1980年代後半のアメリカとヨーロッパのハウスミュージックから発展、イギリスで確立していった。プログレッシブという言葉は、ロックミュージックの実験形式とメジャーなスタイルとを区別するために、1970年代に最初に使用されはじめた。ダンスミュージックにおいても一緒で、探索的なスタイルをプログレッシブと呼ぶようになったのが始まり。
BPM 123〜130ぐらいの曲が多く、4つ打ちが基本で高音のキラキラしたシンセサイザーの音、エフェクトを多く使うハウスミュージックのことを指す。

代表的なアーティスト:deadmau5(デッドマウス)、Avicii(アビーチー)、Alesso(アレッソ)Steve Angello(スティーブ・アンジェロ)、Afrojack(アフロジャック)、Sebastian Ingrosso(セバスチャン・イングトッソ)、Axwell(アクスウェル)、Martin Garrix(マーティン・ギャリックス)、Zedd(ゼッド)、DubVision(ダブビジョン)、Swedish House Mafia(スウェディッシュ ハウス マフィア)、Nicky Romero (ニッキー・ロメロ)、Calvin Harris (カルビン・ハリス)
 
 
 

∟ FUTURE HOUSE(フューチャー・ハウス)
ディープハウスと UK ガラージュが融合し、さらに他の EDM ジャンルの要素とテクニックを取り入れた、2010年代のイギリスで出現したハウスミュージックのジャンル。フランスの DJ Tchami(チャミ)によって造られた言葉で、インタビューの中で Tchami は、Soundcloud にアップロードした自身の曲に Future House のタグ付けをしたことから使われるようになった、と語っている。

代表的なアーティスト:Oliver Heldens(オリバー・ヘルデンス)、Tchami(チャミ)、Don Diablo(ドン・ディアブロ)、Mike Williams(マイク・ウィリアムス)、Mesto(メスト)、Brooks(ブルックス)、Curbi(カービ) 、Lucas & Steve (ルーカス&スティーブ)、Cheat Codes (チート・コーズ)
 
 
 

∟ DEEP HOUSE(ディープ・ハウス)
1980年代に始まったハウスミュージックのサブジャンルで、当初はシカゴ・ハウスと1980年代のジャズファンクとソウルミュージックを融合させたものであった。通常 BPM は110〜125、ソウルフルなメロディーが特徴で派手な音は使用されない。
EDM のジャンルにおける「DEEP HOUSE」は、従来のディープハウスが意味するジャンルの音楽とは関連性がなく、ポップなハウスミュージックのことを指す。

代表的なアーティスト:Kaskade(カスケード)、Sam Feldt​(サム・フェルド)、David Guetta (デヴィッド・ゲッタ)、Hot Since 82 (ホット・シンス82)、ZHU(ツ)、Shiba San(シバ・サン)、EDX(イーディーエックス)、Michael Calfan(マイケル・カルファン)、Moodymann(ムーディーマン)、John Talabot(ジョン・タラボット)
 
 
 

∟ TECH HOUSE(テック・ハウス)
テクノとハウスを組み合わせたハウスミュージックのサブジャンル。1990年代半ばから後半にかけてイギリスで発展したシーン。スタイルの基本構造はハウスと同じだが、キックの音やハイハット、スネアの音などがテクノの要素に置き換えられている。歌ものでメロディアスなものは少ないが、一部ソウルフルなボーカルの要素を取り入れているものもある。
現在テック・ハウスはとても人気があり、有料オンライン音楽配信サービス Beatport のトップ100を見ても、そのうちの多数がテック・ハウスのトラックに占められている。

代表的なアーティスト:Fisher (フィッシャー)、Mark Knight (マーク・ナイト)Green Velvet(グリーン・ベルベット)、Hot Since 82 (ホット・シンス82)、Carl Cox(カール・コックス)、Armand van Helden(アーマンド・ヴァン・ヘルデン)、Eric Prydz(エリック・プレイズ)、Riva Starr(リバ・スター)、Prok & Fitch(プロック&フィッチ)、Erick Morillo(エリック・モレロ)、Eats Everything(イーツ・エブリシング)、Weiss(ウィース)
 
 
 

∟ ELECTRO HOUSE(エレクトロ・ハウス)
重低音とディストーションを特徴とし、多くのトラックでこれが用いられている。テンポは通常 BPM 125〜135の間で作られることが多く、しばしばテックハウスに似ているものの、テックハウスと比較してメロディックな要素、電子音に影響を受けたサンプルやシンセの音が使用されていることが多い。エレクトロハウスは90年代後半に出現したが、主流になったのは2002年にリリースされた Benny Benassi(ベニー・ベナッシ)の「Satisfaction」がきっかけだと言われている。

代表的なアーティスト:Hardwell(ハードウェル)、W&W(ダブリュー&ダブリュー)、Quintino (クインティーノ)、Showtek(ショーテック)、KSHMR(カシミア)、Martin Garrix (マーティン・ギャリックス)、Laidback Luke (レイドバック・ルーク)、Dimitri Vegas & Like Mike(ディミトリベガス & ライクマイク)、Basement Jaxx(ベースメント・ジャックス)、Fedde Le Grand(フェデ・ル・グランド)、Porter Robinson(ポーター・ロビンソン)、中田ヤスタカ
 
 
 

∟ FRENCH HOUSE(フレンチ・ハウス)
90年代半ばにフランス人のアーティストたちによって作られたジャンル。古いディスコのループとハウスビートを混ぜたものが、独自の音楽として昇華されていった。

代表的なアーティスト:Daft Punk(ダフト・パンク)、Justice(ジャスティス)、Break Bot(ブレイク・ボット)、Motorbass(モーターベース)、St Germain(サンジェルマン)、Bob Sinclar(ボブ・シンクラー)、Madeon(マデオン)、David Guetta(デイビッド・ゲッタ)、Martin Solveig(マーティン・ソルベグ)
 
 
 
∟ LATIN HOUSE(ラテン・ハウス)
ハウスミュージックとプエルトリコ、キューバ、ドミニカなどのラテンアメリカの音楽を組み合わせたエレクトロニックダンスミュージックのジャンル。1980年代後半にラテンアメリカ系のハウスミュージックの先駆者がスペイン語のハウスのレコードを発表したことによりジャンルを生み出され確立していった。

代表的なアーティスト:Kryder(クライダー)、Cato Anaya(カト・アナヤ)、The Cube Guys(ザ・キューブ・ガイズ)、Leandro Da Silva(レアンドロ・ダ・シルバ)、Divolly & Markward (ディボリー&マークワード)、Victor Porfidio(ビクター・ポーフィディオ)、Eddie Thoneick(エディー・ザニーック)、Jesse Velez(ジェシー・バレス)、Raz(ラズ)、Liz Torres(リズ・トレス)、Afro Medusa(アフロ・メデューサ)、LUCIANO(ルチアーノ)、Gilles Peterson(ジャイルス・ピーターソン)、DJ MARKY(DJマーキー)、Masters at Work(マスター・アット・ワーク) 
 
 
 

∟ TRIBAL HOUSE / AFRO HOUSE(トライバル・ハウス / アフロ・ハウス)
世界の民族音楽とクラシック・ハウスを組み合わせたハウスミュージックのサブジャンル。構造はディープハウスと似ているが、民族音楽の用いられるパーカッションの音が入っていることが多い。特にアフリカ(アフロ)の文化や音楽の影響が強いハウスはアフロハウスと呼ばれ、アフロ・ビートの要素が大きく取り入れている。4つ打ちにポリリズムのリズムパターンが混ざっていて、エレクトロニックミュージックのスタイルで見られるような、メロディーラインや長時間のシンセサウンドが利用されることは少ない。

代表的なアーティスト:Kryder(クライダー)、Tom Staar(トム・スター)、Sunnery James & Ryan Marciano(サネリー・ジェームス&ライアン・マルチアーノ)、Cato Anaya (カト・アナヤ)、Roger Sanchez(ロジャー・サンチェス)、Steve Lawler(スティーブ・ローラー)、Martin Solveig(マーティン・ソルヴェイグ)、Osunlade(オスンラデ)、Max Pela(マックス・ペラ)、Jephté Guillaume(ジェフテ・ギオム)
 
 
 

∟ ITALO HOUSE(イタロ・ハウス)
イタリアを起源とするハウスミュージックの一種。1980年代後半からイタリア、イギリス、アメリカで人気を博した、ハウスミュージックとイタロディスコを融合させたもの。ジャンルの主な音楽的特徴は、クラシックなシカゴのハウスよりも叙情的な形式で、主に電子ピアノの和音を使用すること。現在イタロ・ハウスはマイナーでジャンル名自体聞くことが少ないが、日本では「ユーロビート」として愛聴されている。

代表的なアーティスト:Black Box(ブラック・ボックス)、49ers(フォーティナイナーズ)、FPI Project(FPI プロジェクト)、Italobrothers(イタロブラザーズ)、Starlight(スターライト)
 
 
 

∟ GARAGE HOUSE(ガラージュ・ハウス)
クラシック・ハウスミュージックと並行して開発されたダンスミュージック。よりソウルフルな R&B 派生サウンドを持つガラージュ・ハウスは、ニューヨークの Paradise Garage というクラブと、ニュージャージーの Club Zanzibar で、1980年代初頭から半ばにかけて発展していった。初期のハウスミュージックとの間には多くの類似点があり、両者を区別することは困難だが、シカゴハウスが世界的に人気を博したことによりニューヨークのガラージュ・ハウスはシカゴのクラシック・ハウスとは区別された。

代表的なアーティスト:Todd Edwards(トッド・エドワーズ)、Masters at Work(マスター・アット・ワーク)、Robin S(ロビン・S)、Hex(ヘックス)、Bizarre Inc.(ビザール・インク)