もはや誰もが知る音楽ジャンルとなった EDM。日本では2014年ごろから EDM に特化したフェスやクラブイベントが急激に増え、現在に至るまで様々な海外 DJ/プロデューサー がライブを行うために来日している。しかしここ数年でにわかにささやかれている「EDM の時代は終わった」という噂。実際にはどうなのだろうか。IMS IBIZA が発表した、エレクトロニック・ミュージックの市場に関するレポートを元に分析してみよう。
 

エレクトロニック・ミュージックの市場は国によって英米では衰退傾向

BVMI, BPI, IFPI が発表したダンスミュージックの音源販売シェアはアメリカ、イギリスでは衰退気味。しかしドイツ、カナダでは上昇傾向にあり、ダンスミュージック市場は完全衰退とは言い切れない状況である。
 

Dance / Eletcro は世界で3番目に人気の音楽



IFPI が18ヶ国の1万9000人の16-64歳を対象にした普段聴く音楽のアンケートでは、回答者の32%が Dance / Electro を選択した。この統計を元にすると世界では約15億人がダンスミュージックを普段から聴いているということになる。つまり、アメリカやイギリスでダンスミュージックが衰退しているものの、世界規模で見ると Hip-Hop より頻繁に聞かれているジャンルなのである。
 

トップ DJ たちのギャラは急減少



Forbes が発表した DJ の推定の出演年収上位10人の合計額は約2億6千万ドルと、2017年に比べて急減少。これまで1位を守ってきた Calvin Harris も2017年から2018年にかけて 50万ドルの減額推定となっている。これまで EDM 系の DJ たちのギャラが高騰していたため、適正額に戻っているのではないかと読み取ることができる。
 

テクノ系のフィメール DJ の人気が上昇中



festicket が発表した2018年のフェス出演数ランキングを見ると、1位に Nina Kraviz、2位に Amelie Lens、4位に Charlotte de Witte といったテクノ系のフィメール DJ がランクイン。Amelie Lens は2017年の出演数が4本だったが1年間で需要が急上昇。

また、フェスの出演数上位となったテクノ系フィメール DJ 3名は SNS のフォロワー数も EDM 系 DJ と比べると増加率が勝っている。しかし Nina Kraviz の Instagram のフォロワーは100万人、Marshmello の Instagram のフォロワーは2000万人と、まだ大きく差が開いている。


 

総評:フィメール DJ たちが急上昇中で EDM のDJ たちは変化が必要



もちろん、EDM でトップを目指す日本の DJ/プロデューサー たちが気落ちする必要はない。市場規模が縮小傾向にあるとはいえ、規模はまだ大きい。しかし EDM シーンのトップで活躍する DJ たちは今後さらに成長するために変化が必要とされている。例えば Marshmello はダンスミュージックより頻繁に聞かれているポップミュージックのプロデュースを開始したり、David Guetta は別名義でテックハウスを制作したりと、新たなジャンルを展開している。

以上のデータを見る限り、まだ「EDM の時代は終わった」とは言い切れないが「EDM シーンが過渡期に入った」と言うのがふさわしいだろう。今後の動きにも注目して欲しい。

Written by So-on