クラブが好きで、クラブに通う女性(時には男性も)の中には、こんな経験を持つ方は少なくないと思う。

異性に話しかけられたけど、クラブで音がうるさいのでかなり顔と顔を近づけて話を聞いてたら、いつの間にか腰に手を回されてた。

他の知らないお客さんたちもみんなで盛り上がってたら、急に抱きつかれてキスされた。

フロアで踊ることに熱中していたら、背中に誰かが当たってくる。よく確認したらお尻を触られてた。嫌なので逃げたのに気づいたら側にいてまた触ってくる。終いには、背後からズボンのお尻に手を突っ込まれた。

クラブでこのようなことが発生すると「クラブだし……」「みんな酔っ払ってるし……」ということで、なんとなく「クラブあるある」ネタとして流してしまいがちだ。

しかし、果たしてクラブでなら OK なのだろうか?

クラブ以外でこのようなことが発生した場合は、明らかに痴漢行為で警察を呼ばれても仕方がないことだ。それなのに「クラブだから」というだけで「仕方がない」こととされてしまうのはおかしな話である。


 

クラブで痴漢してしまう人の言い分

クラブでついつい痴漢してしまう、クラブでは痴漢されても仕方がない、と考えている痴漢擁護派の言い分はこうだ。

痴漢したつもりは全くない。でも酔ってたし、クラブではこのくらいのスキンシップするもんでしょ。

クラブはみんな、ナンパされるのを待ってるような場所。痴漢だなんだと騒ぐなら、クラブに来ないで欲しい。

嫌ならハッキリ断れば良い。断らないなら、声を掛けた方は OK なんだと思っても当然。痴漢だなんだと言ってたら、誘いたくても誘えない。出会いがなくなる。

確かにクラブではナンパが多いし、ナンパしたい・されたい男女もいるだろう。しかし、大前提としてほとんどのクラブではしつこいナンパは禁止されており、注意されても言うことを聞かない客は出禁にされる

それにナンパがエスカレートした場合、それはナンパではなくストーカーだ。そもそも、ナンパと痴漢は全く違う。両者を混同してはならない。

例えナンパされた側が「NO」とハッキリ言えなかったとしても、それはイコール「お触りOK」というわけではない。酔った異性にしつこく体を触られて、怖くて動けなくなっていることもある。
クラブ痴漢擁護派の方は、自分が被害者ではないので、痴漢されているときの相手の状況や心理を分かっていないことが多い。


クラブ痴漢擁護派の方は、想像してみてほしい。自分よりも身長も横幅も1.5倍はある、ガタイの良い軍隊上がりのようなゴリマッチョが、酔っ払ってしつこく自分の体を触ってきたら「断ったら暴力を振るわれるかも……」と怖くなるのではないだろうか? しかも周囲の人たちは暗がりで状況を把握していない。逃げたくても人がいっぱいで思うように逃げられない。

ここまで想像したら「黙っているから触ってもOK」ではない、ということがお分りいただけるだろうか?
 

クラブで痴漢されないためには? 

「クラブで痴漢をされないために、露出の高い服を着ていくべきではない」と答える人もいるだろう。しかし、パンツルックでいたってパンツの中に手を突っ込まれる女性や、Tシャツにジーパンの男性だって服の上から触られることすらあるのだから「露出が高い服を着ている=痴漢されやすい」とは言い切れない。露出が高い服を着ていたって、プロレスラーのように強そうだったら、筋肉を触られることはあっても痴漢されることはまずないだろう。

クラブで痴漢されない方法は……ハッキリ言って「ない」。どんな人でも痴漢される恐れはあるが、やはり、か弱そうに見えると、痴漢されやすいかもしれない。

クラブは「暗い」「人がたくさんいる」「皆お酒に酔っている」と、非常に痴漢が発生しやすい条件が揃っている。

だからと言って、痴漢をして良いというわけではないし、いざ痴漢されてショックを受けている人に対し「だったらクラブへ行くな」と言うのもお門違いだ。

クラブに遊びに来るお客さんの多くは、音楽を楽しみたい、ダンスを楽しみたいと考えてクラブに来ているわけであって、痴漢されるために来ているのではない。クラブだからと言って初対面の異性の体をベタベタ触りまくったり、突然キスしたりすれば、クラブ以外で痴漢をするのと同じように警察に捕まることをお忘れなく。


クラブで痴漢されてしまった時の対処法は?

クラブで自分が痴漢やしつこいナンパのターゲットにされてしまったときには……やはり、クラブのセキュリティに頼るのが一番手っ取り早い。自分で対処しようとしても、酔って強気になった相手から暴力を振るわれたり、お構いなしで痴漢行為が続けられたりする場合もある。

もし、周りにセキュリティが見当たらない、逃げたくても人混みでその場を離れられない、という場合、自分で怖くて何もできないのであれば、恥ずかしがらず、怖がらず、隣にいる人に助けを求めてみよう。案外皆親切だし、助けてくれることは多い。


そしてあなたも、クラブで痴漢の被害に遭っている人を見たり、しつこいナンパに困っている人に遭遇した場合は、ぜひ助けてあげて欲しい。具体的な方法を挙げるのであれば、知人のふりをして間に入り、その場から被害を受けている人を離れさせてあげるのが一番良いだろう。もし自分でうまくできそうになかったり、やはりちょっと怖い……というのであれば、あなたが近くにいるクラブのスタッフやセキュリティに声を掛け、被害に遭っている人がいることを伝えてあげるのも良いだろう。

クラブに来ている人たちは、同じ音楽、同じ空間を愛している仲間。仲間が困ったときには助ける、それが真のクラブキッズだ。
クラブをもっと幅広い人たちが安心して楽しめるように、そしてクラブカルチャーがもっと開かれたものになるために、皆で意識を変えていく必要があるのではないだろうか。

Written by きのや