7月26日から28日に新潟の苗場スキー場で開催された FUJI ROCK FESTIVAL '19。23回目となる今年は The Chemical Brothers(ケミカル・ブラザーズ)、SIA(シーア)、The Cure(キュアー)、Martin Garrix(マーティン・ギャリックス)、Thom Yorke Tomorrow's Modern Boxes(トム・ヨーク・トゥモローズ・モダン・ボクセス)、James Blake(ジェームス・ブレイク)、Daniel Caessar(ダニエル・シーザー)など、様々なジャンルのバラエティー豊かなアーティストラインナップとなった。そして Red Hot Chilli Pipers(レッド・ホット・チリ・パイパーズ)という一見レッチリかと思わせるバンドもラインナップされ、話題となっていた。

台風 6号が接近していた1日目はどんよりとした天気となり、雨が降っては止んでの繰り返しだったが、気温的にはすごしやすく、夜は長袖が必要なほどであった。


一時的に降っていた雨が止んで軽く日差しが差し込んだ WHITE STAGE には、初来日のオーストラリア出身バンド King Gizzard & The Lizard Wizard(キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザード)が来日を待ちわびた大勢のファンの前に登場。リハーサルから全力で演奏する彼らの姿に観客のボルテージは上昇していった。オーストラリアを拠点に活動する7人組のサイケデリック・ロックバンド King Gizzard & The Lizard Wizard はサイケデリック・ロックバンドと紹介されがちだが、様々なジャンルの音源をリリースしており、いわゆるサイケデリック・ロックバンドの枠には収まらない活躍を見せている。リリースも頻繁で、2017年には 5枚の異なるコンセプトのアルバムをリリースしている。そんな彼らの待ちに待った来日ということで WHITE STAGE は満員の観客で埋め尽くされていた。
今月 16日にリリースされるスラッシュ・メタルのアルバム『Infest The Rats' Nest』に収録されている「Self-Immolate」、「Mars for the Rich」、「Organ Farmer」からスタート。まさかのメタル3曲から始まるとは思っていなかったが、ぶっ通しでの演奏となり、4曲目からは彼らの代表曲が披露された。複雑にループし続けるビートとリフはまさにサイケデリックで、マスロック的でトランス的な楽曲はオーディエンスを釘付けにしていた。
始めと終わりをメタルで締めた King Gizzard & The Lizard Wizard。新しいサイケデリックを体現している彼らは、これからも進化し続け、新しい姿を見せてくれるに違いないと確信できるようなライブとなった。

【King Gizzard & The Lizard Wizard セットリスト】
1. Self-Immolate
2. Mars for the Rich
3. Organ Farmer
4. Crumbling Castle
5. The Fourth Colour
6. Robot Stop
7. Gamma Knife
8. The Lord of Lightning
9. Venusian 2
10. Planet B



そしてこちらも初来日の Janelle Monae(ジャネール・モネイ)。今年のグラミー賞で最優秀アルバム賞にノミネートされた『Dirty Computer』を引っさげての来日となった。しかも 最大規模のステージである GREEN STAGE への出演ということで、彼女のパフォーマンスを観るために多くのフジロッカーが集まった。
「2001年宇宙の旅」のテーマソングで入場した Janelle Monae。彼女のステイルである18世紀の古典的な黒と白のパターンを組み合わせた衣装で登場。
『Dirty Computer』に収録されている「Crazy, Classic, Life」からスタートしたライブは、音はもちろん目でも楽しめる内容に。Janelle Monae は衣装チェンジを繰り返し、それに合わせて演出もどんどん変化、ラップ、ダンス、ギター、など変幻自在のステージはまさに万華鏡のように移り変わり、常に美しかった。
終盤には「Make Me Feel」、「Tightrope」を披露、まるでマイケル・ジャクソンやジェイムス・ブラウンのようなキレのある動きはソウルフルで、カリスマ性を感じさせられた。Janelle Monae は曲の合間に、人種、性別、性差、宗教 などの違いによって生まれる差別、マイノリティの権利のために戦っていこうと観客に呼びかけ、彼女の覚悟と決意が込められたメッセージは、言葉の違う日本でも確実に観客の心に届いたことだろう。

【Janelle Monae セットリスト】
1. Crazy, Classic, Life
2. Screwed
3. Django Jane
4. Q.U.E.E.N.
5. Electric Lady
6. PrimeTime
7. Pynk
8. Yoga
9. I Like That
10. Make Me Feel
11. Cold War
12. Tightrope



日もすっかり暮れ、雨が降るか降らないかの曇り空の下の WHITE STAGE では、Tycho(タイコ)のライブがスタート。名曲「A Walk」で幕を開けたセットでは、イントロの音と共に歓声があがり、会場が陶酔感に包まれた。透明感のある浮遊するようなトラックとバックに映る映像が、どこか違う世界への入り口かのように会場全体を Tycho ワールドへと引きずりこんだ。
続けて「L」、「Weather」が演奏されると、新作にフィーチャリングアーティストとして参加している Saint Sinner(セイント・シナー)が登場し、「Japan」「Easy」「For How Long」「Pink & Blue」と 4曲続けて披露。彼女の透き通る声が楽器のアンサンブルと溶け合って心地の良い空間が出来上がっていた。 
その後、代表曲の「Awake」、さらに「Horizen」「Epoch」「Division」とアップテンポな曲が鳴り響くと観客達は体を揺らし、最後にはもう一度 Saint Sinner が登場して「No Stress」を歌い上げ、ライブを締めくくった。

【Tycho セットリスト】
1. A Walk
2. L
3. Weather
4. Japan (feat. Saint Sinner)
5. Easy (feat. Saint Sinner)
6. For How Long (feat. Saint Sinner)
7. Pink & Blue (feat. Saint Sinner)
8. Awake
9. Horizon
10. Epoch
11. Division
12. No Stress (feat. Saint Sinner)




The Chemical Brothers(ケミカル・ブラザーズ)が苗場に帰ってきた! 8年ぶり、7度目の出演となった The Chemical Brothers は、新旧取り揃えたセットで、定番の聴きたい観客にも答える誰が見ても圧巻のステージだった。まずは定番の Beatles(ビートルズ)の「Tomorrow Never Knows」の Junior Parker(ジュニア・パーカー)カバーでオープニングを飾り、「Go」の Go の声と共にスタート。グラストンベリーではグラストン仕様になっていたものがフジでは ”Hold Tight Fujirock" 後ろのスクリーンに映し出され、観客は湧き上がった。
「Star Guitar」披露した後には New Order(ニュー・オーダー)の「Temptation」をプレイ。この2曲がミックスされて聞こえた時の歓声はこの日一番のものだった。そして「Hey Boy Hey Girl」「Saturate」「EScape Velocity」などライブには欠かせない名曲も披露。
セットの途中では大量の紙吹雪や、ドデカいボール、巨大な赤と青のロボットなど 8年前の FUJI でも披露していたものもアップデートされていて、次から次へといろんなものが投入され終始楽しませる要素で埋まっていた。
終盤はこれぞケミカルというような名曲のオンパレード。「Dig Your Own Hole」「Galvanize 」から「Leave Home」ときて「Block Rockin' Beats」で終わるという、予定調和だが最高の締め括りは、一度見たらもう一生忘れることはないだろう。

【The Chemical Brothers セットリスト】
1. Go
2. Free Yourself
3. Chemical Beats
4. MAH
5. EML Ritual
6. Swoon
7. Temptation
8. Star Guitar
9. Got to Keep On
10. Hey Boy Hey Girl
11. Eve of Destruction
12. Saturate
13. Elektrobank
14. No Geography
15. Escape Velocity
16. The Golden Path
17. Hoops
18. Get Up On It Like This
19. Under The Influence
20. Dig Your Own Hole
21. Wide Open
22. Galvanize
23. C-H-E-M-I-C-A-L
24. Leave Home
25. Song To The Siren
26. Block Rockin' Beats


FUJI ROCK FESTIVAL '19

日時:2018年 7月26日、27日、28日(25日には前夜祭開催)
会場:新潟県湯沢町苗場スキー場 新潟県南魚沼郡湯沢町三国
HP:https://www.fujirockfestival.com/

主催:SMASH http://smash-jpn.com/