テクノロジーを駆使して「一見不可能」とも思える問題を解決することを目的とする会社である Not Impossible Labs が、聴覚障がい者や難聴者向けとなる新たな触覚テクノロジーを駆使したハプティックスーツ(振動ベスト)を開発した。

これは、聴覚障がい者が皮膚を通して音楽を体験できるようになるというもの。
このハプティックスーツを装着することにより、あらゆる種類の難聴を持つ人々は、音楽を「聴く」のではなく「感じる」ことができるという。
 

上記の動画の後半では、この開発に合わせて昨年開催された聴覚障がいを持つ人々と通常の聴覚の人々が半々の割合で来場するロックライブの様子が収められており、このスーツがどのように動作するのかが分かる。

このハプティックスーツは、肩と胸の下、腹部にベルトを通して背中にパッドを取り付け、更に両手首、両足にもベルトで装置を取り付けると、スーツの各所にある装置が音楽に合わせて振動し、音の雰囲気をダイレクトに皮膚に伝えるものとなっているようだ。更に、音楽に合わせてスーツの各所に取り付けられた青いライトが滑らかに点灯し、SF 的な雰囲気を醸し出している。


ベストは、我々が何かに触れた際に起こる運動感覚反応の「触覚フィードバック」を利用している。
触覚フィードバックとは、私たちが何かに触れたり、何かが私たちの身体に触れた際に私たちが受け取る近接反応である。私たちは接触することによって受ける反応に応じて、その物体を認識している。

通常の音楽イベントのライブでは、スピーカーシステムからの振動しかなかったが、この新たなハプティックスーツの発明により、聴覚障がい者や難聴者でも音楽を楽しむことができるようになった。

チームの技術責任者である Daniel Belquer 氏は、このハプティックスーツを実行するためのソフトウェアについてを次のように説明している。

"現在、システム内には24の振動ポイントがあり、それらは全て個別に制御可能である。周波数と振幅をコントロールできる。音を強くしたり弱くしたり、高くしたり低くしたりできる。

このプロジェクトは経験だけではない。コミュニティのことも考えられている。このコンセプトの核心にあるものは、どうやって一緒に人間になれるのか、ということなのだ。"

Music.Not Impossible と題されたこのプロジェクトは、何年もの歳月をかけて研究を重ねてきた。聴覚障がい者のシンガーソングライターである Mandy Harvey との共同研究、開発、共同作業を何年もかけて行い、作曲、翻訳、振動をワイヤレスで送信するための完全なプラットフォームが開発された。

これまでにも、振動で音楽を体感できるボディースーツと椅子取り付け型のシートが Arespower から発売されていたが、こちらは主に映画やゲームの迫力を増して楽しむことを目的として作られたもので、低音に反応して振動を起こすものとなっており、更にBluetooth に接続しなければならないものであるため、外部からの音を直接感じることはできなかった。

Not Impossible Labs のハプティックスーツが普及することにより、聴覚障がい者・難聴者にとってのより豊かなライフスタイルの支えとなることが期待されている。