Billboard の親会社である MRC が発表した Music 360 Report の調査結果によると、今後3年間で、ライブ配信企業は数百億ドルの価値となる可能性があるが、そこに「EDM 業界は含まれない」とのことだ。


今年、2020年3月から新型コロナの影響により音楽業界は不運な状況が続いている。全世界において、アーティストを含む音楽関係者の多くは失業することになった。フェスティバル、イベント、コンサートは 1番最初に休業せざるを得なくなり、また復興も最も最後となるだろうと見られている。だが、多くのフェスやイベントはライブ配信に切り替えたり、ドライブインフェスを開催したりと、大幅に規模を縮小しつつイベントをなんとか開催しているのが現状だ。


同データによると「音楽視聴者の47%は、音楽業界はライブ配信やバーチャルコンサートを開催することが重要だと考えている」とのことだが、現時点でそのうちの 「たった 25%程度がライブ配信を実際に視聴している」とのことだが、視聴者は徐々に増加傾向にあるそうだ。

また、Billboard によると、トップアーティストは 1度のライブ配信で、約100万ドル(日本円約1億5千万)を稼いでいる。米ソニー・ミュージック元上級幹部の Thomas Hesse 氏は「コンサート・ライブ配信業界は、今後3年間で、約60億ドル(日本円約 6,100億円)の収益に達する可能性がある」と考えているそうだ。また Pandora の共同創立者である Tim Westergren 氏は、「大きな期待を寄せている。今後3年間で数百億ドル(日本円約数兆円)の価値が生まれるかもしれない」と述べている。


現在多くのアーティストは、独自の配信プラットフォームを構築し、閲覧するために約20ドル~50ドル程度のチケットを購入するという流れになってる。

Billboard は、Oliver Heldens(オリバー・ヘルデンス)や Tomorrowland(トゥモローランド)の配信を例示的に上げているが、これらの数字は通常の  EDM 配信の比較とはならない。なぜなら EDM のライブ配信の大半は、Facebook、Twitch、YouTube 等を使用し、無料で配信されているからだ。

また、ライブ配信が始まった当初、EDM シーンでは「慈善団体への寄付を募る形式のライブ配信」をしきりに行っていた。そのため、アーティストにパフォーマンス料などが支払われていることはない。こういったことが、今後の EDM シーンにおけるライブ配信にとって危険な前例を作ってしまったと報告されている。

フェスが開催できない今、アーティストたちは現在もかなりの打撃を受けている。ファンは無料の配信を期待しているため、ライブ配信にお金を支払う人は少なくなり、代わりに無料の配信を探す人が増えているそうだ。
ロック、ポップ、ヒップホップといった​別ジャンルでは、配信により利益を得ているが、EDM は依然として苦戦している。結果として、アーティスト側で「価値のあるコンテンツ」を作成し、ファンにとっても「手頃なチケット価格で魅力的な内容」という部分でバランスを取らなくてはならない。


しかし現在は「供給」部分に問題が発生しているという。Ariana Grande(アリアナ・グランデ)Ed Sheeran(エド・シーラン)といったアーティストが月に1回程度またはそれ以下の頻度でライブ配信を行えば「需要」を生みだせるかもしれない。

だが EDM アーティストの場合、現在、毎週のようにライブ配信されているため「供給」が過剰している状況である。供給過剰な中で「需要」を生みだすのは難しい。


残念ながら現在、簡単な解決策はない。多くのアーティストはフェスティバルやイベントが再開された時、すぐに現場に戻れるよう、また流れの早い EDM シーンにおいて、常にメディアに露出している必要性があるだろう。それはトップアーティストも同様で「ヘッドライナー」として現場に戻れるよう、ある程度の露出をしておく必要があるかもしれない。

更に、ライブ配信を無料で行い続けているアーティストは、すぐに「配信停止」または「チケット制」という流れに持っていくのは難しい。
ニューヨーク・Le Poisson Rouge のマーケティング責任者は「無料で配信を行っている人は誰一人としていない」とコメントしているそうだが、実際には、特に EDM シーンは無料で配信しなければならない状況下にあることは確かだ。