「ウクライナを攻撃するロシア」という構図は、日々様々なニュースの中で報道されているが、その一方で攻撃を加えているロシアの一般市民たちはこれについてどのように感じているのか、そしてロシアの音楽シーンでは何が起こっているのか、それに関してなかなか知り得ない部分は大きい。

IQ が、過去には The Prodigy、Tiesto、Armin Van Buuren、Sum 41 等のアーティストの公演を行なってきたモスクワの東にあるライブ音楽会場「Tele-Club Ekaterinburg」のプロデューサー/アートディレクター/ブッカーの Semyon Galperin 氏が、このロシアによるウクライナ侵攻に関してのインタビューを掲載しているので、一部を要約してお伝えしたい。 Semyon Galperin 氏は、ロシアのエンターテインメントシーンの重要人物の一人であり、紛争の終結を求める書簡に署名をしている。

https://www.facebook.com/semyon.galperin​

金融制裁によってチケットの返金もできない……多くのロシア企業に破産の可能性が

Semyon Galperin 氏は、このインタビュー記事の中で、今後のロシアのエンターテインメントシーンについて「近い将来にロシアで外国人アーティストの公演ができるとは思わない」と述べており、また既に計画中であったり、チケットが販売されている海外アーティスト公演は全てキャンセルされることを確信しているという。

そして、現在イベント主催者はチケット購入者に返金する必要があるが、一部のチケット代は既に代理店の銀行口座にあり、ほとんどのロシアの銀行は厳しい制裁を受けているため、それを返金することができず、ロシアにおける国際的なビジネスの分野は酷い損失を被っており、それはおそらく多くの主要なロシア企業を破産させるか、または深刻な債務を負わせるであろうとのことだ。
 

ロシア政府は過去にも頻繁に、ロシア国内で開催予定のアーティスト、特にプーチンに批判的なアーティストのライブ公演をキャンセルさせてきた

ロシア政府は、特に2014年のクリミア危機の際には、常に様々なアーティストのライブ公演をキャンセルさせていたとのことで、その後キャンセルは少なくなったが、昨年10月以来、再び政府がショーをキャンセルさせようとすることが多くなったとも述べている。
約一週間前には、ロシアのラッパー Noize MC の公演がキャンセルされたが、Noize MC は過去にプーチンを批判しており、同じ理由で多くのバンドがキャンセルされているとのことだ。
 
 

ロシアの芸能界は親プーチン、ライブ産業は反プーチンという矛盾

基本的にロシアの芸能界はプーチンを支持するか、沈黙を守るようになるだろうとのことで、そのためロシアは「歌手はいても最早コンサート業界はない」という矛盾した状況に陥っているという。

また、ロシアは海外アーティストにとってはツアー先としては新興市場であるため、ロシアツアーをキャンセルしても海外アーティストにとって大きな経済的痛手となるとは思わないとのことだ。ロシア国内の海外アーティストのファンに関しては、西洋文化に興味を持っている層であるため、世界に対してもより広い視点を持っており、従って反プーチンである場合が大きいも述べている。

我々ロシアのコンサート、演劇、音楽業界従事者は、ウクライナで開催し、ヨーロッパの全ての国や旧ソ連に必然的に影響を与えるイベントに対する我々の態度を策定する必要があると考えている。

我々の仕事ごとは、文化的価値を創造することだ。我々の使命は、人々がアートにアクセスできるようにすることだ。

文化は不可分の価値であり、文化へのアクセスは基本的人権だ。いかなる武力紛争も、この権利と、生命、健康、自由、幸福に対する人権の不可分を試みるだろう。我々は、ウクライナ領土での軍事行動を直ちに停止することが不可分であり、っその結果は不可逆的であると信じている。

……
もちろん、それ(ロシアのウクライナ侵攻)は我々の選択ではなく、私はプーチンを支持したこともない。常に反対し、それを表明していた。
しかし、それでも我々はショック、恥、罪悪感を感じており、ウクライナと全世界からの支援の言葉を聞いて驚いている。世界中の人々は、戦争を始めたのはプーチンであることを理解しており、多くの善良で正直なロシア人がいる。

金融システムがブロックされているために、顧客にチケット料金を払い戻すためのオプションをどのように見つければいいのかといった、奇妙な質問も来るが、これはウクライナの人々が経験している酷い苦しみと比較すると全く小さな問題のように聞こえる。しかし、前述のように、音楽ファンの大多数は戦争を支持しておらず、彼らの財政的問題は近いうちに甚大なものとなるため、彼らにもきちんと対応するのが適切だろう。

私者、人道援助、医療援助、育児、そして彼らが必要とするかもしれない全てのもので、ウクライナの人々を助けて欲しいと世界中に願っている。