先週末からいよいよ日本での初公演がスタートした、生きる伝説と言える世界的ファッション・デザイナー、ジャンポール・ゴルチエが⾃らプロデュースし、更に作・演出・衣裳も本人が手がけたというランウェイミュージカル『ファッション・フリーク・ショー』


開催前からファッション業界、音楽業界、エンターテインメントシーンと、あらゆるシーンからの大きな注目を集めていた同ショーは、ジャンポール・ゴルチエ氏の幼少期からスタートし、ファッションデザイナーとしてデビューを果たして様々な功績を得たその背景や、⼈との出会いや別れ、⼈⽣の苦悩や幸福などを、レビュー、サーカス、ファッションショーなどを交えながら表現していくというもの。
 

筆者はファッションに関してかなりの無知。とりあえず不潔感がなくてその場で浮かない格好をしてりゃ良いや……という安易さで着る服を選んでいるような人間で、ジャンポール・ゴルチエ氏に関しても「世界的に評価されているレジェンド級のファッションデザイナー」「マドンナのコーンブラのデザイナー」「ゲイカルチャーのデザイナー」という、ジャンポール・ゴルチエ氏に非常に失礼なくらい大雑把な表現しかできない程度にしか把握していなかった。そんな筆者が、この度、その程度の知識のままこの『ファッション・フリーク・ショー』を見に行ってみた。

結論から先に言わせてもらう。
めちゃくちゃ良かった!!!!
予定が合わずに諦めたが、あまりにも良すぎて、リピーター券を買いそうになったぐらい良かった!!(会場で販売している)

街でポスターを見かけたことはあるけど、これは一体どんなショーなの?と思っていた方、気になってるけどファッションはちょっと敷居が高いなぁ〜、と思っていた方のご参考になればと思う。
 

グッズから度肝を抜かれる、さすがのファッション・フリーク・ショー

会場に到着すると、思い思いのファッションでキメてきたお客さんたちでロビーが賑わっていた。それだけでもうワクワクしてくる。
また、ゴルチエ氏自身がゲイであることをカミングアウトしていることもあり、ゲイカップルの姿も多かった。
グッズ売り場には日本限定発売のグッズ等も売られていたが、中でも一際目を引いたのは、ショーのポスターのジャンポール・ゴルチエ​氏の頭部を模った針山。デザイナーさんが腕時計のように腕に巻いてまち針を刺すアレである。ジャンポール・ゴルチエ​氏の頭に針をブッ刺しまくっていいのだろうか……と若干不安になったが、こんなユニークなグッズにもOKを出すのがゴルチエ氏なのだろうな、と氏のデザインしたオートクチュールを眺めながら納得。アヴァンギャルドは幼少期から彼の得意とするところだ。(とショーを見た後で思い返した。)

なお、会場で売り切れのグッズも、WEB サイトでは購入可能なものもあるとのことなので、会場で購入できなかった方、ショーには行けないけどグッズが欲しい!という方は要チェック。

>>「ファッション・フリーク・ショー」グッズ購入はこちらから

なお、エントランス階の更に上の階では、ドリンクや軽食が楽しめるので、ショーの前に一杯飲んでから、というのもアリかも。ヒカリエ12階は非常に眺めが良く、優雅な気分にしてくれる。

コメディタッチ & 超ダンサブルに進んでいくので一切飽きる暇なし!!

筆者は正直なところ、ファッションに引き続き、観劇やミュージカルがあまり得意な方でもない。じっとしているのが苦手で、物によっては途中で飽きてしまうのだ……。そのため「ファッション・フリーク・ショー」に関しても "ランウェイ・ミュージカル" とのことで途中で寝てしまわないか、少し心配だった。

しかし、それは全くの杞憂だった。
むしろ、ずっと動いていた。ノリノリで。


CHIC「Le Freak」マドンナの「Vogue」、デヴィッド・ボウイ「レッツ・ダンス」といったの世界的ヒット曲〜が、ゴルチエ氏の人生の描写に合わせて次から次に流れていき、その度に場面が転換したり、シルクスクリーンに映し出された高解像度の映像が流れたりする中、多数のダンサーたちが、 時にはシルク・ドゥ・ソレイユを彷彿とさせるようなアクロバットを取り入れつつ、パレコレを飾ったオートクチュールなど200着を超える作品をまとい、舞台狭しと縦横無尽に踊りまくる!!


しなやかな動きと豊かな表情、そして印象的だったのは、ダンサーのちょっとした動きに様々な意味が込められている点。ネタバレになるからあまり言えないが、猥褻でセクシャルなシーンも、悲しみに溢れるシーンも、ゴルチエ氏の衣装とダンスという奇抜&過激過ぎるオブラート…いや、ゴルチエ氏の場合 "コンドーム" と言ったほうが的確かもしれないが、それ包んで表現することにより、非常に煌びやかでユニークなのに心にグッと訴えかけてくるエンターテインメントに仕立てられていた。


更に、オーディエンス側を舞台に引き込むような仕掛けが盛りだくさんで、完全に "体験型" のショーだった。ただ眺めるだけのミュージカルとは全く違う、完全に新しい、まさにエンターテインメント・ショーであった。
コメディ要素が強いシーン以外、舞台上にセリフはほとんどなく、音楽、ダンス、ファッションが、ゴルチエ氏の人生や価値観、そしてゴルチエ氏が生きてきた時代をありありを伝えてくる。時にそれは、言葉で説明されるより強烈で、観る者の脳にダイレクトに突き刺さってくる。
最愛の恋人が天に召された後にゴルチエ氏が悲しみに打ちひしがれるシーンでは、彼の自伝だから何が起こるのかの予想はついていたにも関わらず、それまでアッパーでハイテンションなシーンが続いた後だったため、そのギャップに思わず涙が溢れそうになった……正直、観る前には全く予想もしていなかった自分のショーへののめり込みっぷりに、ちょっとドン引きしてしまったほどだ……。
 

元気がない人、自分に自身がない人こそ見るべきショー

また「ファッション・フリーク・ショー」を見たことで、一つ驚いたことがある。
ファッション=美しいもの、そして美しい人のものである、といった無意識の固定観念に囚われていた筆者だったが、ゴルチエ氏はむしろ "全てのものに美しさがある" という超オープンマインドで生きてきた人のようだった。それはショーに出演するダンサーたちが様々な肌の色を持ち、背の高かったり低かったり、痩せていたり太っていたり、とにかく多様だったことや、彼のデザインした衣装に込められたテーマにも反映されている。

過激なファッションデザインが特徴のゴルチエ氏のオートクチュールの中、要所要所で裸が登場することも印象的だった。捉え方は人それぞれだろうし、ここであまりネタバレになるようなことを言いたくはないが、そこにジャンポール・ゴルチエ氏の本質的なメッセージが込められているのでは……と感じさせられた。

アヴァンギャルドなファッションデザイナー、しかもゲイ。更に恋人はエイズで死亡……。大変なことがなかったわけがないだろう。人一倍の逆境に次ぐ逆境を乗り越え、世界的成功を収めた彼は、自らの成功に裏打ちされた自信はもちろん持っているだろうが、ありとあらゆるものの中に美を見出すことができる優しさ、そして自由を愛する人なのだろう。

観劇後、非常に清々しい気持ちになったのと共に「自分は自分で良いんだ」という自信がわき、明日からまた頑張ろうと思えた。まるでゴルチエ氏に背中を押してもらったような、そんな気分にさせられたショーだった。


「東急シアターオーブ」開催の東京公演は6月4日までで、その後大阪「フェスティバルホール」へと舞台を移して6⽉7⽇(⽔)〜6⽉11⽇(⽇)まで開催されるので、興味があるけどまだ観てない、という方は、今すぐチケットを抑えて観に行って欲しい。とにかくオススメ。
また、
⽇本公演スペシャルゲストとして城⽥優、七海ひろき、江口拓也、ナジャ・グランディーバも登場するとのことなので、気になる方は各ゲストの出演日をオフィシャルサイトでチェックしてみて欲しい。
 

ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』

日時:
【東京】2023年5⽉19⽇(⾦)〜6⽉4⽇(⽇)全21回 @東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)
【⼤阪】2023年6⽉7⽇(⽔)〜6⽉11⽇(⽇)全7回 @フェスティバルホール
料金:
【東京】VIP席30,000円(特典付)/S席︓13,500円/A席︓9,000円
【⼤阪】VIP席28,000円(特典付)/S席︓12,000円/A席︓7,000円
※VIP 特典については、オフィシャル HP にてご確認ください。
※ZAIKO での販売は、東京公演のチケットのみとなります。

>>東京公演のチケット購入、公演日程一覧はこちらから

スタッフ:作 / 演出 / ⾐裳 ジャンポール・ゴルチエ
キャスト:招聘来⽇カンパニーキャスト
⽇本公演スペシャルゲスト:七海ひろき、江口拓也、ナジャ・グランディーバ ※出演日順
HP:https://fashionfreakshow.jp/

主催:ファッション・フリーク・ショー 実⾏委員会
企画製作:エイベックス・エンタテイメント/TS3/RGM Productions
後援:在⽇フランス⼤使館/アンスティチュ・フランセ⽇本
特別協⼒:東京クリエイティブサロン実⾏委員会 渋⾕ファッションウイーク