4周年を迎えた今年2023年4月には、約1ヶ月にも渡る壮大な4周年記念イベントを開催し、ダンスミュージックファンの度肝を抜いた、六本木を代表するナイトクラブ SEL OCTAGON TOKYO。海外アーティストの出演はもちろんだが、SEL OCTAGON TOKYO のもう一つの目玉としてファンが多いのが、実は通常開催のレジデント DJ たちの活躍だ。

都内、そして日本はもちろん、海外水準のクオリティの高いレジデント DJ を抱える SEL OCTAGON TOKYO の Music Director として、音楽部門を統括する KDH 氏。韓国にルーツを持ち、日本語、韓国語、英語、タイ語と4ヶ国語を操る彼は、DJ として世界を股に掛けた活躍を見せ、プロデューサーとして頻繁なリリースを重ねてきた一方で、若くして SEL OCTAGON TOKYO の Music Director として、数々のイベントを成功させてきた実力者だ。


今回は、そんな KDH 氏の普段の生活や、SEL OCTAGON TOKYO の運営の裏側について迫るインタビューを敢行! なかなか聞けない大人気ナイトクラブの裏話を知ることができる超レアなインタビューとなった。
 

何となく始めた DJ が、いつの間にか世界で活躍するレベルに

iFLYER:KDH さんの現在に至るまでのキャリアについて教えてください。

KDH:最初は、韓国にいた際に、趣味で、身内のパーティー等で DJ をしていました。2〜3年の間は、1ヶ月に1回ぐらい DJ する感じで、当時はハウスミュージックをかけていました。 本格的に活動を始めたのは、日本で、2013年頃からです。最初は HipHop、オールジャンル等を掛けていて、次に Bass Music に挑戦、今現在は4つ打ち EDM をメインにプレイしています。


iFLYER:DJ を本格的に始めたきっかけは?

KDH :最初はたまたま、テレビで DJ をしているシーンを見て、やってみようかな、ぐらいの気持ちで始めたんです。でも、会社で働くストレスもあり、それを発散することもできるしということで、DJ 活動を続けていました。それに、僕は一度、音楽の仕事で失敗していたので、若いうちにもう一度、音楽業界でチャレンジしてみたかったというのもあります。日本に来て、DJ としてイベントに呼ばれる頻度も増えて、DJ 活動が楽しくなってきて、本格的に活動するようになりました。

iFLYER:今現在は、DJ 活動をしていて影響を受けているアーティストはいますか?

今僕が目指しているロールモデルは、Martin Garrix(マーティン・ギャリックス)ですね。ジャンルの幅、聴いていて心に響く音楽、DJ セットなど、全部がカッコいい。人の心を動かすことができる彼の音楽は、素晴らしいと思います。


iFLYER: 日本のクラブ以外でも、韓国やアジア圏、ヨーロッパ圏のクラブでも活躍されていますが、世界のナイトクラブと日本のナイトクラブでプレイされる際の違いなどはいかがでしょうか?

KDH:国によってクラブや音楽文化は変わってきて、韓国だとコリアンバウンスというジャンルがあり、主要クラブではどこのクラブでもそれしか流れないんですよ。中国ではハード系で BPM が早い曲が好まれます。ヨーロッパだと、有名 DJ 以外ではテックハウスが主流になっていたりと、だいぶ違いますね。

日本はどちらかというと、コマーシャル的で有名な曲がフィットしていますね。海外でも、DJ バーや中小規模のクラブだと、日本と似ているジャンルのところも多いです。大きなクラブは国によって、ジャンル感がだいぶ違っていて面白いですね。

iFLYER:海外でプレイする際には、その辺りの点を事前にリサーチしてから行くのでしょうか?

KDH:事前リサーチもしますが、基本的に自分の曲を中心にプレイしながらフロアの様子を見つつ、変化をつけていきます。

iFLYER:特に日本のクラブで DJ する際に気をつけていることはありますか? 日本のお客さんの反応はいかがでしょうか?

KDH:個人的な意見として、日本のクラブシーンは、昔からあまり変化がないイメージがあるので、できるだけ毎回新しい曲を取り入れて、発信していけるようにセットを考えています。頑張ってます!(笑)

iFLYER:新しい曲というのは、ご自身で掘ったりしているんですか? それとも、繋がりのあるアーティストの方から送られてきたりするのでしょうか?

KDH:掘ったりもしますし、仲良くなった海外アーティストから「君の DJ プレイに合うと思うよ」と、プライベートマッシュアップや ID  曲などが送られてきます。大体、発売1週間〜2週間前に送られてくることが多いです。面白いのが、発売される前は何度かけてもフロアの反応がなかったりするのですが、発売された途端にワーっと盛り上がることも多いんですよ!  たまに、お客さんに「あの曲、これだったのか!」みたいに、答え合わせ的な感じで SNS でタグ付けされたりして、そういう反応を見るのも面白いですね。
 

忙しい中でも曲作りはできる! 長期間掛けてじっくり作成するのが KDH 流

iFLYER:KDH さんは、SEL OCTAGON TOKYO のレジデント DJ も務めてらっしゃるので、かなりお忙しいかと思うんですが、今後のリリース予定はいかがですか?

KDH:7月に、韓国出身の DJ / プロデューサーで、SEL OCTAGON TOKYO のインターナショナル・レジデント の JEONGHYEON(ジョンヒョン)とのコラボ曲が発売されます。
2023年に入ってから、2〜3週間ごとにリリースしています。

iFLYER:結構なハイペースでリリースされてますよね。どういったタイミングで曲の制作に集中しているのでしょうか?

KDH:基本的に、最近リリースした曲を作り始めたのは去年ぐらいですので、集中して短期間で制作するのではなく、半年〜1年掛けて少しずつ作業しています。また、去年作り始めた曲を途中でコラボに変更し、アイディアをコラボ相手に共有して作業したり、ということもしています。


iFLYER:他のアーティストとコラボする際には、どんな流れで決まるのでしょうか?

KDH:これは本当に様々で、仲良くなって曲を聴かせあってコラボすることになったり、僕の曲を気に入ったアーティストから DM で曲が送られてきて、コラボを誘われたりも最近は多くなってきました。基本的には直接会うよりも、データを送り合ったり、海外のアーティストとはビデオ通話で話しながらコラボを進めていきます。

コラボする際には特に、作り始めと完成形で全然違うジャンルになっていたりということもあります。最近だと、Steff da Campo(ステフ・ダ・カンポ)というアーティストとコラボした「Kanpai」という曲は、一緒に飲みに行った時に、僕がふざけて「ステフ・ザ・カンパイ!」と乾杯していたら「”Kanpai” って曲、作ってみない?」と言われて、僕のアイディアを渡したんですが、その後やり取りしているうちに最初とは全然違うジャンルになってました(笑)。

手探りでスタートし、たった1年半でフェス級のアーティストたちのブッキングまでもこなせるように

iFLYER:SEL OCTAGON TOKYO のブッキングは KDH さんが担当しているとのことですが、いつ頃から担当されてるのでしょうか?
KDH:2020年の1月からなんですが、その2ヶ月後にコロナでずっと店が閉まっていて、その後は2021年11月の再オープンから現在までずっと担当しています

iFLYER:ブッキングを始めたきっかけは?

KDH:元々、僕は SEL OCTAGON TOKYO のサウンドプロデューサーだったのですが、仕事の幅が徐々に広がっていきました(笑)。最初はブッキングについて何も知らなかったのですが、とにかく連絡をしまくってブッキングしていました。

iFLYER:そこから現在では、先日の周年イベントでは1ヶ月に渡って Don Diablo(ドン・ディアブロ)をはじめとするトップアーティストを何人も呼んでいるとは、凄いですね……!!

KDH:1年半掛けてここまでやれるようになりました。2020年は、韓国のアーティスト呼ぶことが多かったので、友達感覚で呼べていたので難しいことはなかったんですが……。

iFLYER:今現在はなかなか呼ぶのが難しいようなビッグアーティストもブッキングされていますが、大変な点などはありますか?

KDH:一番大変なのは時差ですね。ヨーロッパと日本で時差でがあるので、基本的に今日送った連絡に返事が来るのが翌日なので、連絡を取り合うのに一番苦労します。土日は完全に休みになっちゃうので、向こうは。日本の夜中に連絡しないと連絡取れなかったり。


iFLYER:先日も、SEL OCTAGON TOKYO の SNS で Krewella(クルーウェラ)の公演が発表されて SNS は大騒ぎとなっていましたね! KDH さんのブッキングに関してファンが喜んでいるのを目にすることも多いのですが、ブッキングの際には、どういった基準でアーティストを選んでいるんでしょうか? 

KDH:一番気をつけている点は、お店のコンセプトやジャンル感に合うかどうかです。うちはハウス〜EDM のジャンルがメインなので、そこにフィットすること、なおかつ集客が見込めること、そしてフィーのバランスの良いアーティストを選んでいます。たまに試験的に、流行のジャンルやお客さんが希望するアーティストをブッキングすることもあります。今も色々とトライをしている段階ですね。また、定期的に SNS でファンの方に「見たいアーティストがいますか?」と質問してるんですが、その回答をまとめて、一番多かったアーティストをブッキングしたりもしています。

iFLYER:実際にその流れで呼んだアーティストは?

KDH:RetroVision(レトロヴィジョン) など、4〜5組は呼んでます。去年だけでも月に3〜4組呼んでいるので、あまり覚えてないんですが……(笑)。

iFLYER:そうやってブッキングしたアーティストと仲良くなって、コラボに至ったり、というのもあるのでしょうか?

KDH:はい。先ほどの Steff da Campo もそうですし、Smack(スマック)、あと進行中のアーティストも何人かいます。今はまだ言えないですが。あとは、コラボが進行している最中のアーティストに、リリース前に来日してもらうこともあります。
 

昼のオフィスワークから夜のクラブ営業までこなす、超多忙な KDH 氏の1週間……!!

iFLYER:DJ をしながらクラブの Music Director としてブッキングも担当されているという KDH さんのライフスタイルに憧れている読者も多いと思います。KDH さんの1日、1週間のお仕事や生活の流れについて教えていただけますか?

KDH:結構イレギュラーなことが多いのですが、基本的には朝11時ぐらいに起きて、溜まったメールや What’s Up(海外でよく使われている LINE のようなアプリ)の対応から始めて、昼間は SEL OCTAGON TOKYO  の仕事の連絡や、書類、ブッキングリスト等のオフィスワークをしています。時間が余ったら曲作りや、今年は YouTube、TikTok にも力を入れたいと思っているので、その撮影等の作業をしています。夕方に時間があれば1〜2時間仮眠を取る場合もあります。また、夕方にはミーティングや外国人アーティストのアテンドが入ることも多いです。夜はクラブの営業となりますので、出演する DJ の取りまとめから、照明演出の管理、グルーブ感のある音楽の流れを作ることで、フロアメーキングができるよう動いています。また、また、同時に海外のアーティストやエージェントとも連絡を取り合っています。

休日もありますが、連絡やメールは常に確認しています。

僕の休日は平日なのですが、海外の週末は完全に休みで平日しか連絡が取れないので、平日の間に完結しないといけないので。昼〜夕方は国内、夕方〜夜は海外との連絡のやりとりをすることが多いですね。時差がありますので。

iFLYER:SEL OCTAGON TOKYO の4周年の際には、約1ヶ月に渡って、Don Diablo をはじめとするフェス級のアーティストが連日来日し、クラブミュージックファンたちを驚かせていましたが、 大変だった点、やってよかったなと思った点を教えてください。

KDH:いつも来ていただいている常連さんから「やっぱり OCTAGON が大好き!」と言っていただいたり、これまで名前は知ってたけど OCTAGON に来たことがなかったという新しいお客さんから「初めて来たけどめちゃくちゃ良かったです」と言っていただいたり、Twitter でツイートしていただいたり、直接言っていただけたりというのがとても嬉しかったです。
また、僕のイメージしてきた、どこのクラブでもやったことがないような “周年” を開催できたことに対する達成感もひとしおでした。


iFLYER:イベントタイトルも「OCTAGON 4TH ANNIVERSARY FESTIVAL」で、1ヶ月分合わせたら本当にフェスティバル規模のラインナップで、話題になっていましたね。特に Don Diablo の日は、混雑して大変だったのでは?

KDH:ビッグアーティストが来る際には、特にオペレーションに気を配りました。無理にフロアにお客様を詰め込んだり、無駄に並ばせることがないように、並び始める時間のアナウンスや、1時間ごとに列の様子などを SNS でお客様に共有し、なるべくせっかく来てくれたお客様が入れないという残念なことがないように、セーフティファーストで対応しました。他のイベントの日にも、外国人アーティストが出演する日には、優先入場付きの前売りチケットを発行する等、とにかくお客様に負担がないように気を配っています。

iFLYER:今後、SEL OCTAGON TOKYO にはどのような外国人アーティストが出演するのでしょうか? 教えていただける範囲で良いので、情報やヒントがあればお願いします!

KDH:今年も話題性のあるアーティストが続々決まってきているので、ぜひアナウンスを楽しみにお待ち下さい!
相変わらずいつものジャンルだけど、4周年イベントの際には、Sub Zero Project(サブ・ゼロ・プロジェクト)等のハードスタイル、ハードダンスのジャンルに対するお客様の反応がとても良かったので、そういったジャンルのアーティストも増やしていこうかな、と検討中です。まだ分からないですけどね(笑)。また、EDM ファンも、そこまで EDM を知らなくても名前を知っているかもしれないアーティストも、今朝決まって……。

iFLYER:そ、それは、かなりの大物アーティストということでしょうか!?!?

KDH:そうですね……基本的に、3〜4ヶ月前から、周年の際には6ヶ月前からブッキング交渉は進んでいるので……なので、今年中ぐらいに……(笑)。

iFLYER:逆に、ギリギリに決まる場合もあるんですか?

KDH:なるべくそれはしないようにしています。ビザ取得の関係もあるので。ファンの方たちは早くから予定を空けて楽しみにしてくださっているので、なるべくキャンセルや延期がないように気を配っています。

iFLYER:なるほど……今日のインタビューを通して、本当に OCTAGON さんはお客様ファーストで営業されているんだな、と実感しました!

KDH:ありがとうございます。

ファンが作ってくれた自分のグッズが宝物!

iFLYER:それでは最後に、KDH さんの今後の活動予定について教えてください。

KDH:今年は、新曲のリリースがたくさん決まっています。
海外からブッキングのお話をいただくことも増えてきているので、いろんな国でプレイができるように頑張りたいですね。ヨーロッパのエージェントからも声を掛けていただいて、まだ契約に関しては検討中ではありますが、ヨーロッパでの活動も増えていくのではないかという感じです。

iFLYER:そうなってくると、OCTAGON のブッキングや仕事もやりつつ、レジデント DJ もやりつつ、海外遠征となりますから、これまた忙しくなりますね! KDH さんのファンの方は、KDH さんの動向をちゃんとチェックしておかないと会えなくなってしまいますね……。

KDH:そういう時は、前もって SNS でアナウンスするようにします!(笑)また、僕以外の SEL OCTAGON TOKYO のレジデント DJ たちも、皆、意識高く頑張っていますので、ぜひ応援していただければ嬉しいです!

iFLYER:今までにファンの方からもらって嬉しかったものなどはありますか?

KDH:ファンの方が、僕のグッズを作ってくれたりすることがあるんですよ。こういったキーホルダーや、僕の写真がプリントされたパッケージのお菓子などは、もったいなくて食べられなくて家に飾ってあります。


iFLYER:このグッズに描いてある狐の絵は?

KDH:僕の昔の DJ 名が、KONZO だったんです。それで皆からコンさんと呼ばれていて、コンというと狐の鳴き声っぽいので、そこから来たイラストですね。

iFLYER:カワイイ! これはもらったら嬉しくなってしまいますね。ファンから愛されてますね〜! 本日はどうもありがとうございました。

 

SEL OCTAGON TOKYO

東京都港区六本木7丁目8-6 Axall Roppongi B1F

Official
Twitter
Facebook
Instagram