日本では8月11日に公開予定のバービー人形を主題とした映画「バービー(Barbie)」が、Twitter上で大変なことになっている。
それというのも、「バービー」の米公式 Twitter アカウント @barbiethemovie が、「バービー」と、7月21日にアメリカで公開された、原爆を開発した物理学者を描いたクリストファー・ノーラン監督による映画「オッペンハイマー」を掛け合わせたネタ画像を投稿するハッシュタグ #barbenheimer(バーベンハイマー)でのファンたちのネタ画像投稿に対して面白がるコメント返しをしてしまったため、それを見た日本人たちが「原爆の問題を矮小化している」「アジア人蔑視」等、大激怒している状況だ。




原爆投下後らしき背景をバックに最高の笑顔を浮かべるバービーの画像には「It's going to be a summer to remember (思い出に残る夏になる)(キスとハートの絵文字)」、更にバービー役のマーゴット・ロビーのヘアスタイルが原爆のキノコ雲をコラージュしたアフロヘアになっている画像に対しては「This Ken is a stylist (ケンはスタイリスト)」等、ネタに乗っかるようなコメントを付きで RT してしまった公式に対し、その後日本のワーナー ブラザース ジャパン合同会社が、本国公式の Twitter での対応に「極めて遺憾」と批判、米ワーナー・ブラザーズが「ワーナー・ブラザースは先の配慮に欠けたソーシャルメディアへの投稿を遺憾に思っております。深くお詫び申し上げます」と公式に謝罪し、該当ツイートを削除するに至ったが、炎上はまだまだ鎮火しそうにない。
 

怒りの日本人たちの対抗も、アメリカ人の心には全く響かず? 日本と海外の温度差とは

そんな中、怒った日本人の中には「#NoBarbenheimer」というハッシュタグを作り、無実のアメリカ国民が被害を受けた9.11の悲惨な出来事の画像をピンクにコラージュした画像などを作り「あなたたちがやっているのはこういうことです」と英語のコメント付きで投稿するような人も出てきた。
 

しかし、残念ながらそんな声も、多数のアメリカ人の心には響かなかったようだ。
「9.11はアメリカ人の中でもネタにしてるジョークだから別に」
「アメリカ人の怒らせ方を分かってないよね」
「これは良い画像」

等のコメントが付いてしまう始末……。

アメリカと日本だけではない! 各国で違ってくる "第二次世界大戦への意見" の対立に……

更には「#NoBarbenheimer」に対抗する「#YesBarbenheimer」というハッシュタグが出てきたり、「太平洋戦争を始めたのは日本」「日本が悪いのに何言ってるの?」「原爆は戦争を終わらせた」「南京大虐殺の画像を見ろ」「日本兵はもっと酷いことをしてきた」という反論も。
そのような反論はアメリカ人だけではなく、アカウント名が韓国語や中国語のユーザーからの声も多く見受けられ、それに対して驚きを隠せない日本人の声も少なくない。
 

日本国内では、社会科では必ず原爆について勉強させられるばかりではなく「火垂るの墓」や「はだしのゲン」最近では「この世界の片隅に」等のアニメ、漫画、文学作品等を通して、原爆=恐ろしいもの、再びあってはならないもの、邪悪なものとして捉えられており、また多くの学校が遠足や修学旅行等で訪れる原爆に関する資料館「広島平和記念資料館」で石に焼き付いた人の影や燃え残った人の爪等、衝撃的な展示を目にして一生忘れられないトラウマとなっている人が多い。

しかしアメリカ、韓国、中国等、日本以外の国々では、原爆が決してイコール悪として扱われておらず、むしろ「必要悪だった」「原爆が戦争を終わらせた」として、逆に原爆を使用したアメリカの判断を賞賛する声が多く、また戦時中の日本軍の残虐さを主張する声や、「日本は敗戦国なのだから悪である」という声も多い。その辺りの温度感が、今回の Twitter での炎上がここまで大きくなってしまった原因の一つだろう。

また、このミームが広がったタイミングも最悪だった。日本では、毎年8月6日、9日は、広島と長崎に原爆が投下された日として大々的に黙祷を捧げるなどし、原爆で死んだ人々を追悼すると共に、原爆の恐ろしさを忘れてはならない日として認識されている。その直前にこのミームが社会現象になってしまった、というのが、日本人の心を更に逆撫でしてしまったのは間違いないだろう。更に、謝罪したとはいえ、オフィシャルは対して日本人の怒りに配慮していないとして依然不満を抱えている日本人の意見も多い。
 

ベトナムでは「バービー」が上映禁止に……原因は中国!?

また、日本国外でも「バービー」「オッペンハイマー」は問題を引き起こしている。
「バービー」では中国側が一方的に主権を主張する南シナ海の「九段線」が描かれているとしてベトナム​で上映禁止になっており、また「オッペンハイマー」ではヒンドゥー教でもっとも尊敬されている聖典のひとつである「バガヴァッド・ギーター」がセックスシーンに用いられたことをインド当局が問題視しているとのことで、アメリカ国内における中国以外へのアジア諸国への配慮のなさ、文化の軽視が問題視されている。


 

アメリカ・ハリウッドではストライキの真っ最中……出演者や脚本家が宣伝しない代わりに仕掛けられたミーム!?

また、一部ではこんな見方もあるようだ。
今現在、アメリカ・ハリウッドでは、出演者、脚本家等による、60年ぶりのストライキの真っ最中。労働環境の改善、AI の規制を求めたストライキは、この夏公開予定の映画の宣伝にも暗い影を落としている。このストライキには「バービー」主演のマーゴット・ロビーも賛同を示していた。
このストライキのせいで、出演者等による映画の宣伝が難しくなったハリウッドでは、あえて「バービー」と「オッペンハイマー」の公開日を同一日に設定し、「Barbie」と「Oppenheimer」を掛け合わせた #Barbenheimer というハッシュタグを作り、インターネットミームを作り出し、更に多くの映画ファンに両方の映画を見てもらおうと画策したとのウワサも。
 

通常「バービー」のような映画は、若い女性にウケは良いものの、硬派な男性はあまり見に行かない。しかし、インターネットミームとなれば話は別で、ミーム好きなオタク男性たちもギャル向け映画「バービー」を見に行くきっかけとなる。現に、この#Barbenheimer が社会現象となったアメリカでは、男性が「オッペンハイマー」と「バービー」をハシゴする場合も少なくないとか。


果たして今後、「バービー」「オッペンハイマー」の行方は……「バービー」は日本では8月11日(金)に公開予定となっており「オッペンハイマー」公開日は未だ発表されていないが、Twitter を見ていると、少なくない数の日本人が「映画館に行くのをやめた」とツイートしているが、逆に今回の騒動で映画の存在を知り興味が湧いた、という人もいる上に、主演が日本でも人気のマーゴット・ロビーであるため、この夏のヒット作となる可能性は高いだろう。