音楽配信プラットフォーム大手の Spotify(スポティファイ)が、ストリーミング詐欺を防止し、今後5年間で "現役アーティスト" への支払いを強化する目的で、プラットフォーム上のアーティストへのロイヤルティ(著作権使用料)の支払い方法やルールを刷新することを発表した。この新たな規約には、2024年第1四半期(4月〜6月)に移行予定とされている。

Spotify は、同プラットフォームがロイヤルティの支払いをどのように分配するのかについての長年の議論に取り組んできている。今回の規約変更に関しては、3つの大きな変更が実装されるとのことだ。
 

1. ロイヤルティを受け取るための「年間最低ストリーミング数」のしきい値を導入

Spotify で楽曲にロイヤルティの支払いが発生するための "年間最低ストリーミング数のしきい値" が導入される。これにより、これまでロイヤルティとして支払われていた楽曲のうちの0.5%が、規約改定後はロイヤルティ支払いの対象外になるとのことだ。
現在は、30秒を超えるオーディオファイルが Spotify にアップロードされた場合にロイヤルティの支払いが発生している。現在の支払い額は、1ストリームあたり0.003ドル、つまり1ドルを取得するには229ストリームが必要となる。

Spotify の新たな支払いモデルでは、ロイヤルティの支払いを受け取るためには、各トラックが Spotify が設定した "年間最低ストリーミング数のしきい値" を超える必要が出てくるとのことだ。この "しきい値" が何ストリーム数になるのかはまだ発表されていないが、音楽業界系ニュース&分析サイトの Music Business Worldwide によると、新たなシステムは「今日の、平均して月収が5セント(約7.5円)未満であるトラックの集団を(Spotify の収益にする)ように設計されている」と情報筋が漏らしていたのことだ。

これについて、Spotify は「小規模なアーティストに不利益であるように思えるが、より広い規模で見ると、数セントを生み出す数十万のトラックの量が、最終的には大きな壺に蓄積され、どのアーティストにとっても実質的な影響はない」と述べている。
新たなルールの下では、一時金の支払いは各社の「Streamshare」で折半され、より多くの「お気に入り」アーティストに支払われることになるとのことだ。

2. Spotify にアップロードしたトラックで不正行為が検出された場合、音楽(レーベル含む)配信者に金銭的な罰則が科される

Spotify は、オーディオのアップロードに関して、これまでで最も堅牢な不正検出システムの1つを備えている。今年5月、Spotify は AI ツールまたは「ストリームファーミング」による不正行為の検出により、ライブラリから数万曲を削除した。
興味深いことに、多くのアーティスト(および一部のレーベル)が、より多くのストリームを獲得する方法として、AI ツールやストリームファーミングを使用した方法に注目しているが、現在の規約では、アップロードした者にフラグが立てられ、トラックが削除されている。
ただし、Spotify の新たなルール変更では、トラックが削除されてフラグが立てられるだけではなく、アップロードしたユーザーに対してペナルティが課せられることになる。

3. 音楽以外の「ノイズ」トラック等は、ロイヤルティ発生のための「曲の長さ」が大幅に長くなる

現在、「ノイズ」は Spotify にアップロードされる音源の中でもなかなかの稼ぎ頭ジャンルとなっている。多数のノイズが Spotify 上にアップロードされているが、これらのノイズはロイヤルティ支払いを受け取るのに必要な最短秒数で大量のストリーム数を集める傾向がある。例としてあげると、40秒の「ホワイトノイズ」「雨の音」トラックをアップロードしたユーザーは、Taylor Swift(テイラー・スウィフト)の曲と同じロイヤルティを受け取っているとのことだ。

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しかし Spotify はこれが不服だったようだ。確かに、需要があるからこそ供給があるわけだし、アイディア勝負で言えばナイスアイディアではあるが、"音楽配信プラットフォーム" として考えると、ノイズがテイラー・スウィフトと同じだけ稼いでしまうという点はフェアではないという結論に達したようだ。
Spotify は、今後はノイズのような音楽ではないトラックに課す、ロイヤルティ受け取りに必要な "楽曲の長さ" の設定を大幅に延長し、これらを取り締まる計画であるようだ。ただ、多くのアップロード者が「このノイズは音楽である」と主張する可能性もあるが……。