Vinyl Record Manufacturers Association(VRMA)と Vinyl Alliance が発表した新しい報告書が、レコード制作における各段階が環境に与える影響と、それに伴うカーボンフットプリントの詳細を明らかにした。

カーボンフットプリント(CFP)とは Carbon Footprint of Products の略称で、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みのこと。


この報告書は、レコードの製作プロセス全体がどのようなカーボンフットプリントを持つかに焦点を当て、未来のレコードプレス業界に何を意味するかについても探っている。

レコードは過去10年間人気が高く、今となっては CD を上回る売り上げとなっている。現在メインストリームとなったレコードは、収集家のコレクターズアイテムという側面や、CD よりも優れた音質により購入者が増えているが、デジタルでのストリーミングとは異なり、地球からの資源を使用し、製品を世界中に輸送するためのコストが必要となる。

では、人気絶頂のレコードを作るために必要な各段階のカーボンフットプリントはどれくらいなのだろうか。報告書によるとレコードの寿命は「クレードル・トゥ・グレイブ(ゆりかごから墓場まで)」と呼ばれ、素材の調達や製造、消費者による使用、そして廃棄されるまでの全てを考慮しているという。調査によると、標準的な黒色の140gのビニールレコードのカーボンフットプリントは1.15 kg CO2e。この数値は、牛乳1パイント(473ml)のフットプリントよりやや低く、8オンスのステーキよりもカーボン排出量が少ないことに相当する。


報告書は、カーボンフットプリントを削減するための5つの戦略を提示しており、1.空輸の排除、2.バイオアトリビュートPVCの利用、3.軽量プレスの実施、4.パッケージングの簡素化、5.生産におけるゼロカーボンエネルギーの採用を提案している。また、レコードの重量は、180gの場合は14%200gの場合は19%スプラッターデザインの特別版では26%増加するようだ。しかし、市場調査によるとレコード購入者の69%がより持続可能なオプションを購入し、77%がエコフレンドリーな製品に追加料金を支払う意思があることも示されており、これらの方法は近い将来に実現可能と判断されている。

レコード業界の未来に関して、この報告書の数値に基づくのであれば、今後数年間でより環境に配慮したレコード製作プロセスが期待できそうだ。

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