ドナルド・トランプ大統領が、米国の公共放送への資金提供を全面的に打ち切る可能性を示唆し、さらに FCC(連邦通信委員会)による調査が開始されるなど、NPR(米国公共ラジオ)PBS(公共放送サービス)が厳しい状況に追い込まれている。
なお、NPR は音楽ファンから絶大な支持を得ているアーティストが NPR のオフィスでライブをする動画シリーズ「Tiny Desk Concert」でよく知られている。
 

トランプ大統領は2024年の選挙期間中、米国のメディアに対して厳しい批判を繰り返し、特に CBS の放送免許剥奪を要求するなど、敵対姿勢を強めていた。
なかでも、トランプ大統領が最も強い敵意を示しているのが、1967年に連邦法で設立された非営利法人「公共放送公社(Corporation for Public Broadcasting, CPB)」である。 この機関は NPR や PBS といった公共メディアに資金を提供しており、その存続が危機に瀕している。

トランプ大統領は2024年4月、自身の SNS「Truth Social」に

「NPRへの資金提供はもうやめだ!完全な詐欺だ!彼らはリベラルの偽情報マシンだ。1ドルたりとも出さない!」

と投稿。CPB への補助金廃止を明言し、公共放送の存続に直接的な脅威を与えている。
 

現在、NPR は直接的な連邦資金の割合が1%程度とされるが、加盟局は約10%の資金を CPB から受けており、特に地方局は依存度が高いという。 PBS は全体の16%を連邦資金に頼っているとされ、この削減は地方の公共放送にとって大きな痛手となる可能性がある。

これまで公共放送は、民主・共和両党の支持を一定程度受けてきた。しかし、トランプ政権がこの方針を本格的に推し進めれば、NPR や PBS の財務基盤が揺らぎ、番組の縮小や廃止を余儀なくされる可能性が高い。

今後、NPR や PBS がどのように資金確保を進め、独立性を維持していくのかが、大きな課題となるだろう。