オーストラリアのニュースを伝える ABC Australia によると、オーストラリアのオルベリーでは、他のオーストラリアの地域では見られないようなユニークなクラブ体験のために、土曜日の日中、開催会場前に行列ができているそうだ。このユニークなクラブ体験 の"イベント" とは、世界中で広がっているムーブメントの一環で、日中に行われるクラブイベント。30歳以上のクラブ好きを対象にしたもので、土曜日の日中にクラブへ出かけ、夜の9時には帰宅またはベッドで就寝できるという、従来の型にはまらない発想のイベントだ。


ABC Australia が行った参加者へのインタビューにて、参加者の一人である Joanna van Deventer は「睡眠を重要視する人にはすごく素晴らしい仕組み」としており「私たちは18歳より多少年上だからって、楽しんじゃいけないってことではない。もしかしたら、膝や腰が痛くなるかもしれない。でも音楽は最高だし、早い時間に楽しめるのは素晴らしい。ちゃんと睡眠が取れるからね」とコメント。

別の参加者は、外出時に安心して快適に過ごせることが重要だとし「この年齢層にとって時間帯は大事なこと。夜9時以降には(私たちの年齢層を)あまり(通常のクラブで)見ないでしょうから、歓迎されていないと感じたり、居心地が悪いと思ってしまう。ここは大人だけの安全な環境で、みんな同じ音楽を楽しんでいる。30歳以上向けのイベントがほとんどないので、こういうイベントは本当に素晴らしい」と話した。

また ABC Australia によると、日中のクラブイベントは地方では比較的新しいものとされているそうだが、実は、首都圏では1990年代から存在していたとの事でオーストラリア・メルボルンの「Revolver」というクラブは午前7時からスタートするのだそうだ。

ナイトタイム文化を守ることを目的とした調査、コンサルティング、アドボカシー活動を行う機関 Vibelab の Jane Slingo(ジェーン・スリンゴ)によると、「午後6時から翌朝6時までしか行われない活動に縛られる必要はなくなっているという認識だ」とコメント。また同氏によると、日中のクラブイベントはアルコール消費量の減少に対応して「ソフトクラブ(英語:Soft-clubbing)」と呼ばれるようになったとのことだ。

更に、2014〜2019年にオーストラリアにて施行されたロックアウト法(深夜以降の入場や飲酒を制限する法律)が、消費者のナイトライフのトレンドを午前1時以前の時間帯にシフトさせた。このロックアウト法の結果として、午後11時〜午前1時ごろにナイトライフが集中し、日中や早い時間帯のソフトクラブが注目されるようになった。このことからオーストラリア、特にシドニーでは日中のクラブ増加を促し、ソフトクラブは自然な習慣として定着しているようだ。

つまり、2014〜2019年に、ロックアウト法の下クラブで遊んでいた人々は、現在30代〜40代前半くらいであるため、この世代が「日中クラブ」や「ソフトクラブ」に再度注目し始めているわけである。ロックアウト法が施行されてたことも相まって、オーストラリアにて「日中クラブ」や「ソフトクラブ」は、特に大きな話題になり始めているのかもしれない。