イギリス政府が、ミュージシャンのライブツアー支援のためのツアー資金の受給資格を判断するための基準を厳格化した。
この制度は、音楽輸出成長制度（MEG）を通じたもので、ツアー費用が急騰する中、アーティストを対象とした5,000〜15,000ポンド（約104万3,500円〜310万8,000円）の助成金が提供されるというものだ。

Arts Professional のレポートによると、今回更新された判断基準には、申請者のアーティストがこの制度の評判を落とすリスクのある活動内容や来歴についてを自己申告することが義務付けられるとのことで、具体的にはテロ、暴力、性的違法行為、詐欺、汚職に関連する犯罪が含まれているとのことだ。
申請者は、ビジネス貿易省（DBT）による追加審査を受け、ソーシャルメディアの活動や報道内容も審査の対象となる。年齢、障害、性転換、人種、宗教、性別、性的指向など9つの「保護特性」に基づく差別の禁止や平等促進を目的とした包括的な法律である「2010年平等法」や、公的機関による人権侵害に対し、裁判所が条約の精神に沿って「適合解釈」を求めたり、「不適合宣言」を出したりする権限を与える「1998年人権法」に違反した場合も申請の却下や支給の延期、場合によっては取り消される確率も高まるとのことだ。

この受給資格判断の厳格化の動きには、2023年12月に助成金の申請を承認されたものの、当時のビジネス大臣 Kemi Badenoch 氏により支援が一時的に撤回されていた パンク精神とハウス、テクノ、ドラムンベース等のクラブミュージックの影響を受けたサウンドと社会風刺やユーモアを織り交ぜたリリックで知られる北アイルランド発のラップ・トリオ Kneecap（ニーキャップ）への1万5,000ポンド（約312万7,500円）の支払いをきっかけに、MEG（国民栄誉賞）のプロセスに関する長期にわたる見直しが行われた結果となる。Kemi Badenoch 氏は、Kneecap が「イギリスに反している」と主張、それに対して Kneecap は検閲を非難。この支援撤回は、Kneecap の非常に政治的な音楽性やリリースとツアーのアートワーク、フランス語の使用、イギリス政府の内政と外交政策への激しい批判が直接的な結果であると示唆した。

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その後、差別訴訟では Kneecap に有利な判決が下され、Kemi Badenoch 氏の決定は「違法かつ手続き上不公平」であるとされ、助成金は支払われ、Kneecap はそれを彼らの地元である北アイルランドの首都ベルファストの地元慈善団体に寄付、労働党政権はこの判決に異議を唱えなかったものの、この判決を可能とした枠組みを法改正してしまったというわけである。

Kneecap はパレスチナを声高に支援し、イスラエルによるガザでのジェノサイドを強く非難していることで物議を醸しており、今年初めにはライブで、レバノンのイスラム教シーア派組織で武力勢力であるヒズボラに関連する旗を振ったとしてテロ容疑で起訴されたが、9月に棄却されていた。