日本時間2026年4月11日から2週にわたって開催される米最大級の音楽フェスティバル「Coachella Valley Music and Arts Festival(コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル / コーチェラ・フェスティバル)」の2日目のヘッドライナーとして、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)が出演した。
今年開催のグラミー賞®にて4年ぶりの TV 歌唱を果たした Justin Bieber が、日本時間4月12日、初の Coachella ヘッドライナーとしてここ数年で最大規模となるコンサートを行った。今回のステージでは、最新作『SWAG』と『SWAG II』2枚のアルバムからの楽曲を中心に、「Baby」「Sorry」「Beauty and the Beat」などデビュー当時からのヒット作を含めたパフォーマンスを披露。世界中を沸かせたそのステージのライブレポートが到着した。
また、この公演のセットリストをまとめたプレイリストも併せて公開となった。
>>プレイリストはこちらから
最新アルバム『SWAG』のスキット、「THERAPY SESSION」で Justin Bieber はこう吐露した。I have had to go through a lot of my struggles as a human, as all of us do, really publicly. And so people are always asking if I'm okay And that starts to really weigh on me. You know? It starts to make me feel like I'm the one with issues and everyone else is perfect
みんなと同じように、人としてたくさん苦労を経験してきたけど、(自分の場合は)全部つつ抜けになってしまう。それで、しょっちゅう “大丈夫か?” って聞かれて、それがすごい重荷になってきたんだ。わかる?‥なんか問題を抱えているのは俺だけで、ほかの人は完璧みたいな気がしてきて
現在32歳の彼は、ほんものの『トゥルーマン・ショー』を生きている。2008年、13歳で世に出てきてから、YouTube を中心に築いたファンダムのおかげで親しみやすいポップ・スターとして、世界中に知られている存在だ。変声期を経てもなお、甘酸っぱい鼻にかかった歌声と、ドラム、ピアノ、ギター、トランペットを操れるミュージシャン・シップが強み。
アイドル要素が強いティーンのシンガーから方向転換を図ったのが、『Purpose』(2015)だった。同作でダンサブルな曲が増えたと思ったら、『Changes』(2020)でR&Bに回帰して、翌年の『Justice』も同じ路線。2025年の連作『SWAG』と『SWAG Ⅱ』ではこのうえなくメジャーな存在でありながら、インディーR&Bのカラーを強めた新しいポップを打ち出したのは記憶に新しい。
きちんと音楽を聴くファンから根強い支持がある一方、セレブリティとして消費されてしまう需要も多い。世間が「勝手な心配」をする対象として、つねにパパラッチに追いかけられる。芸能一家出身の Hailey(ヘイリー)と結婚し、2024年に父になっても放っておいてもらえず、冒頭のスキットのような精神状態になってしまう。少し変わった振る舞いがあったり、体調不良でツアーをキャンセルしたため借金が嵩んだりと、話題になりやすい理由があったのは事実。だが、子供の頃から知っているせいなのか、インターネット上の親しみやすさが裏目に出たのか、とくに好き放題を言っていい存在だと扱われているのは、見直すべきだろう。
その「リアル・トゥルーマン・ショー」を逆手に取ったのが、終わったばかりの Coachella のステージだ。パシフィック・タイム、23時30分ジャスト。赤いフーディーを着込んだ Justin はひとり、ステージに座って「ALL I CAN TAKE」を歌い出した。2か月前のグラミー賞のパフォーマンスから予想はしていたが、シンプルというよりミニマムなステージだ。SNSのタイムラインに、#bieberchella のハッシュタグが踊り出す。Coachella のポップ・スターのステージは大勢のダンサーが登場する人海戦術や派手なセットが定番だが、すべてを無視している。
2曲目の「SPEED DEMON」をマイク1本で歌う様は、どちらかといえばラッパーに近い。「いろんな人が来ているね。ベッドルームで観ている人も多いよね」と言いながら、テーブルに置かれた MacBook を覗き込むと、ドアップの顔がこちらから見え、一瞬、ジャスティンもプライベートな空間にいる錯覚を起こさせた。そして、これが Coachella、いや、大型音楽フェス史上初めての試みのポイントなのである。
この大舞台に先駆け、3月末と4月の頭に2回、彼にしては小さなウエスト・ハリウッドの会場で公開リハーサルのようなライブを行なった。このとき、セットリストがほぼ最新作を占めたので、「FIRST PLACE」「GO BABY」「BUTTERFLIES」「WALKING AWAY」、短いヴァースをつなぐメドレーと新作からの曲が続いたのはあまり驚かなかった。会場に詰めかけた熱心なビリーバー(Belieber)たちは当然、『SWAG』の曲を聴き込んでいて、「GO BABY」で合唱が起こった。
白い砂丘を思わせるゆるやかな勾配があるミニマムなセットで、たった一人、佇んで歌い続ける彼は、インターネットの先にいる無数のファンと1対1で向かい合うかのよう。みんなとつながりながら、孤独を抱える彼の心象風景をそのまま具現化したような演出だ。ステージの上で寝転がって歌う様は、パーソナル・スペースにバーチャルなファンを招いているようにも、砂漠で「ぼく」を待っている21世紀の星の王子さまにも見えた。
『Changes』のアートワークを思わせる、オレンジ色の照明にステージが染まった。The Kid Laroi(キッド・ラロイ)が飛び出して、2人で放った大ヒット「Stay」(2021)を投入。生身の弟分と交流した Justin 王子は、生気を帯びたリアルな存在に戻っていく。そして、ふたりのギタリストが登場して、アコースティック・セット。「THINGS YOU DO」「GLORY VOICE MEMO」「ZUMA HOUSE」「DOTTED LINE」も公開リハーサル代わりのコンサートでのセットリストと同じだ。ネタバレを心配しないあたり、Justin は強い。このセクションのラスト、「EVERYTHING HALLELUJAH」で観客席にいた妻、Hailey に歌いかけ、会場が沸いた。
ギタリストが捌けると、ジャスティンは MacBook に向かい、また世界中のオーディエンスと向き合った。ここで YouTube 上の前髪がやたら重かった昔の自分のビデオを流して、一緒に歌い出したのだ。最初は、彼の人気を決定づけた「Baby」。1オクターブ以上、声域が違いそうな昔の自分の声に合わせて真剣に歌うのだから、おもしろい。「何を見せられているかわからないけど、なんだか楽しいぞ」という空気がオーディエンスに広がり、シンガロングがさざ波のように広がる。「ねぇ、これ覚えている?」、「これは?」と友達に語りかけるように、曲を切り替えるジャスティン。映画『ベスト・キッド』(2010)に使われた「Never Say Never」など、ビリーバーでないとすぐにわからない曲を混ぜるあたりが、うまい。
昔の曲が続いたあと、クリス・ブラウンの「With You」や Ne-Yo「So Sick」のカヴァーを披露した。そもそも彼が注目されるきっかけになったカヴァー動画である。このときの天使のような歌声と愛らしさ、ドラム・プレイの腕前で一気にバイラルになり、アッシャーの目に止まったのはもはや伝説だ。
デビューして人気が爆発してからは、ティーン・アイドルを指すバブルガム・シンガーのイメージから脱却するために、必要以上に悪ぶっていた時期もあった。だから、昔の自分と楽しそうに合唱する姿を見せて、過去と「仲直り」をしたのかもしれない。パパラッチにキレて問題になったときのビデオまで流して、当時の自分の訴えと声を合わせる場面も。ここでは本音が漏れ聞こえた。Skrillex(スクリレックス)の「Where Are Ü Now」(2015)、DJ Khaled(DJ キャレド)との「I'm the One」(2017)で彼らしい “スワッグ” を取り戻し、このセクションは終わった。
ラップトップの前から離れ、モノトーンの照明の中で「YUKON」を歌い上げた。『SWAG』期のいまの彼だけが、「リアル」なのだ。「DEVOTION」では最新作のプロダクションで大活躍したDijion(ディジョン)が登場。彼自身、前日のアウトドア・シアターでのステージの斬新さで話題を集めたばかり。ゲストの登場は続き、後ろ姿ばかりが映ってすぐにわからなかった Tems(テムズ)と一緒に「I THINK YOU'RE SPECIAL」を歌った。彼女のファンらしく、Justin がとてもうれしそうな顔を見せたのが印象的だった。
「Wizkid(ウィズキッド)も来てるんだ、どこ?」とジャスティンが叫ぶと、ナイジェリアの大スターがサングラス姿で登場。「Essence (Remix)」(2021)を3人でパフォームし、アフリカ大陸の人たちが大騒ぎしているのが目に浮かぶような美しいシーンだった。Luis Fonsi(ルイス・フォンシ)と Daddy Yankee(
ダディ・ヤンキー)の「Despacito (Remix)」(2017)でヴァースを重ねたときも、ラテン・ポップとレゲトンを広く紹介した結果になったし、Justin Bieber は世界の音楽をうまくつなげるアーティストでもある。頭上の大きな円状の照明が、天にも宇宙船にも見え、このセクションの Justin は文字通り後光が差していた。
「もう最後の曲なんだ」と一言断って歌い出したのは、「DAISIES」。Dijion と、彼の相棒の Mk.Gee がプロダクションに参加した穏やかな曲で、当の Mk.Gee がベースを抱えて登場。そびえ立つようにベースをつまびく彼を背に、Justin がラップトップの前とステージの端を行き来すると、花火が上がった。「トゥルーマン・ショー」を演じ続けながらも、21世紀最大のスターの一人として、別格のセンスと歌唱力、存在感を見せつけた Justin Bieber。Coachella の歴史がひとつ、動いた夜だった。
Written By 池城美菜子
■アルバム情報
Justin Bieber『SWAG』/ジャスティン・ビーバー『スワッグ』(国内盤)
発売中
視聴・購入はこちら: https://umj.lnk.to/JB_SWAG

【国内盤 CD】
・通常 CD、歌詞対訳・解説付き
・品番:UICD-6237
・価格:¥3,300(税込)
【直輸入盤仕様 LP】
・生産限定/帯付き LP(2枚組)
・品番:UIJS-7008/9
・価格:¥8,470(税込)
【Justin Bieber / ジャスティン・ビーバー】▽トラックリスト
ALL I CAN TAKE
DAISIES
YUKON
GO BABY
THINGS YOU DO
BUTTERFLIES
WAY IT IS
FIRST PLACE
SOULFUL
WALKING AWAY
GLORY VOICE MEMO
DEVOTION
DADZ LOVE
THERAPY SESSION
SWEET SPOT
STANDING ON BUSINESS
405
SWAG
ZUMA HOUSE
TOO LONG
FORGIVENESS
1994年3月1日、カナダはオンタリオ州ストラトフォード生まれ。独学でドラム、ギター、ピアノ、トランペットを習得したシンガー・ソングライター。12歳の頃YouTubeにアップしたパフォーマンス映像が瞬く間に5,000万再生を突破。ネット上で話題になったことでDef Jamと契約。
2010年、1stアルバム『My World 2.0』が全米アルバム・チャート通算3週1位を獲得。未成年の男性アーティストとして47年ぶりの大記録を達成する。同年のアメリカン・ミュージック・アワードでアーティスト・オブ・ジ・イヤーを含む最多4部門を受賞。第53回グラミー賞では「最優秀新人賞」含む2部門にノミネート。
2011年、自伝映画『ジャスティン・ビーバー ネヴァー・セイ・ネヴァー』を公開。全米興行成績はマイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』の記録を超えるスタートを見せた。その後、2011年の2ndアルバム『アンダー・ザ・ミスルトゥ』、2012年の3rdアルバム『ビリーヴ』の他、企画アルバムである2011年の『ネヴァー・セイ・ネヴァー(リミックス)』、2013年の『ビリーヴ(アコースティック)』と5作品が連続で全米No.1に輝き、10代で5作品が全米1位となった最年少記録を樹立。
2015年には4thアルバム『パーパス』をリリース。本作からは「ホワット・ドゥ・ユー・ミーン?」「ソーリー」「ラヴ・ユアセルフ」の3曲が全米No.1ヒットに。
2016年、第58回グラミー賞で「ディプロ&スクリレックス/ホウェア・アー・ユー・ナウ withジャスティン・ビーバー」が“最優秀ダンス・レコーディング賞”を受賞。自身初のグラミー賞を受賞。
翌2017年、第59回グラミー賞ではシングル「ラヴ・ユアセルフ」が“最優秀楽曲賞”含む2部門、アルバム『パーパス』が“最優秀アルバム賞”を含む2部門、合計4部門にノミネート。同年、ラテンミュージック界の大物=ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキーのシングル「デスパシート」に客演。全米シングル・チャート史上、最長記録(※当時)となる16週1位に輝く。
2020年にリリースされた5thアルバム『チェンジズ』も全米初登場1位を記録し、第63回グラミー賞「最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム」にノミネート。同年グラミー賞に参加楽曲含む4曲でノミネートされている。
翌年2021年には6th アルバム『ジャスティス』をリリースし、これでアルバム全6作が全米初登場1位を記録。リミックス・アルバムなど含むと、ソロ・アーティストとして史上最年少で8作目の全米1位を獲得した。収録曲には男性ソロ・アーティストとして初めて全米シングル初登場1位を獲得した「Peaches」をはじめ、「Lonely」「Holy」などのヒット曲が収録されている。
2018年には妻でモデルのヘイリー・ビーバーと結婚し、2024年に第1子ジャック=ブルース・ビーバーが生まれる。
2025年7月11日、一切の前触れもなく7thアルバム『SWAG』をリリース、9月5日には続編『SWAG II』をリリースし、大きな話題を集めた。
21世紀のキング・オブ・ポップ”と称されるアーティストである。
【アーティスト情報】
日本公式 HP:https://www.universal-music.co.jp/justin-bieber/
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