アメリカのミュージシャン組合「United Musicians and Allied Workers(UMAW)」が2026年7月8日、全米のコンサート会場に対し、アーティストが長年批判してきた一連の "悪しき商慣行" を廃止するよう求めるキャンペーン「Raise the Bar(基準を上げろ)」を発足した。

この「Raise the Bar」キャンペーンに参加を希望するベニューは、UMAWが設置した Google フォームから申し込みができるほか、ファンやアーティストが地元のベニューに参加を呼びかけるためのメールテンプレートも UMAW から提供されるとのことだ。

キャンペーンが求める4つの公約は以下の通りだ。

「契約の透明性」——会場がアーティストに対して明確な書面契約を提供すること。
「グッズ売上からのカット禁止」——会場がアーティストのグッズ売上の一部を徴収しないこと。
「pay-to-play (ペイ・トゥ・プレイ)禁止」——アーティストが出演機会を得るために費用を負担させられないこと。
「door polling(ドアポーリング)禁止」——来場者数に基づいてアーティストのギャラを算定するシステムの廃止。

UMAW は「Ticketmaster(チケットマスター) も傘下に持つ巨大エンターテインメント複合企業 Live Nation (ライブ・ネイション)を含む大手企業所有の会場が、こうした慣行を業界全体に広める原動力になった」と名指しした。連邦陪審はごく最近、Live Nation が違法な独占を行っていたとする反トラスト法訴訟において原告側勝訴の評決を下している。


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UMAW は声明で以下のように述べている。

グッズカット、pay-to-play 、door polling、そして契約の不透明性は会場の最も悪しき慣行の典型例であり、過去のものとなるべきだ。Live Nation の独占体制のような大手企業系会場がこうした慣行を業界全体に広め、あらゆる場所でアーティストの労働環境を引き下げてきた。

実際、Live Nation と AEG という2社は新型コロナウイルス禍で多くの独立系会場が閉鎖・売却を余儀なくされた後、さらにシェアを拡大しており、メイン州ポートランドの独立系プロモーターたちが Live Nation の進出を市議会で阻止したことがニュースになるほど、その市場支配力は全米に及んでいる。

グッズ売上からの会場へのキックバックは、今回の争点の中でも特に感情的な対立を生んでいる。多くの会場はグッズの制作にも宣伝にも一切関与していないにもかかわらず、売上の一部を徴収するからだ。

ストリーミングの状況も背景を悪化させている。1再生あたりの報酬の低下、過密化した市場、そして AI 生成トラックの大量流入により、録音音楽は多くの独立アーティストにとって安定した主収入源とはなりえなくなった。英国ミュージシャン組合が実施した調査では、組合員の92%がストリーミングから得る収入が全体の5%未満と回答している。


UMAW はすでにこうした慣行を避けている多くの独立系会場を称え、その可視性を高めることがさらなる参加を促すと述べた。発足時点でサンフランシスコ、フィラデルフィア、ピッツバーグ、ブルックリンなど主要都市の20会場以上が賛同を表明しており、その中にはブルックリンの「St. Vitus」、ピッツバーグの「Mr. Roboto Project」、フィラデルフィアの「First Unitarian Church / R5 Productions」などが含まれる。

UMAW はオンラインディレクトリを作成し、署名した会場を掲載。今後数週間でリストを大幅に拡大する計画であるとのことだ。
このキャンペーンにはAFM(全米音楽家連盟)傘下のフリーランスミュージシャン協会(Freelance Musicians Association)、Maine Music Alliance、Vocal Kentucky、Rising Artists Foundation など複数の関連団体が正式に支持を表明している。