AI を駆使したコンテンツ制作・動画編集のプラットフォームである Kapwing が発表した最新レポートによると、AI 音楽アーティストが作り出した楽曲が、音楽再生プラットフォームの Spotify や YouTube にて、6桁〜7桁の収益を獲得しており、中でも AI 音楽アーティストのトップ10は合計で Spotify と YouTube の再生回数が合計23億回を超えており、600万ドル(約9億4,461万円)以上の収益を稼ぎ出していることが明らかになった。
Kapwing は、AI音楽アーティストのランキング・追跡データベース AiMCharts のデータベースから、最も人気のある AI 音楽アーティストのシードリストを構築し、音楽配信プラットフォームのリアルタイム・データ分析/追跡サービス Songstats から Spotify のストリーム数・フォロワー数・プレイリスト掲載数・チャートエントリー数を取得。そして Spotify は1再生あたり0.004ドル、YouTube は SocialBlade の RPM 中間値(1,000回あたり2.12ドル)を用いて推計収益を算出した。
その結果、Spotifyで最も稼いでいる AI 音楽アーティストは「1950年代風」ボーカリストの Enlly Blue(エンリー・ブルー)で、9,520万回の再生から推計38万800ドルを獲得。YouTube のトップはCherry 葵 Nightcore(チェリー・アオイ・ナイトコア)で、ナイトコアと EDM の楽曲を毎日のようにアップロードし、9億4,100万回の再生から推計200万ドルを稼いでいる。
ただし、Cherry 葵 Nightcore に関しては、Kapwing レポートでは「AI で生成された可能性がある」と示唆しているものの、Cherry 葵 Nightcore 本人は「AI ではなく従来の音楽制作機材でリミックスしている」と主張しているため、確定ではない点は留意が必要だ。
また、Suno 駆動のシンセロックプロジェクト「Masters of Prophecy(マスターズ・オブ・プロフェシー)」はクロスプラットフォームのフォロワー数3,610万人で最大の訴求力を持つ。2025年の Drake(ドレイク)と Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)のビーフを題材にした AI 楽曲「BBL Drizzy」で知られるコメディアン King Willonius(キング・ウィロニウス)は、500以上のプラットフォームチャートエントリーという同レポート最多記録を持つ。
AI が生み出す楽曲が「突破口を開いた」際の影響力も示されている。Josh Fawaz によるマドンナの AI ダンスカバー「Like a Prayer」は、Spotify で3,900万回以上のストリームを記録し、オーストラリアの全国エアプレイチャートで4週連続1位を獲得。ABC(オーストラリア放送協会)の調査後に初めて「GenerativeAI」クレジットを追加するという問題も起こした。0.004ドル/ストリームの Kapwing モデルで試算すると、この1曲だけで約15万6,000ドル(約2,400万円)の収益になる。
AI 音楽の台頭に対し、業界の対応も加速している。ノルウェー発、現在はアメリカを拠点とする、高音質な音楽やミュージックビデオの配信で知られる音楽ストリーミングサービスの Tidal(タイダル)は、すでに完全 AI 生成トラックへのロイヤルティ支払いを停止している。RIAA とグラミー賞を含む業界連合は「AI が生成した録音」と「AI が支援した録音」を明確に区別する業界標準のラベリングと開示ルールを提案している。
一方、フランス・パリを本拠地とする音楽再生プラットフォーム Deezer のデータは、その深刻さを数字で示している。AI アップロードの比率は2025年1月の10%から2026年5月には40%近くにまで急拡大。今も毎日約7万5,000曲の AI 楽曲が Deezer に届いているという。
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ストリーミングの「ロイヤルティプール」は有限だ。AI アーティストが獲得するシェアが増えるほど、人間アーティストへの分配が減る——その構造的な問題に対し、業界が明確な答えを出せるかどうかが今後の焦点となる。








