渋谷では浮ついたハロウィンムード真っ只中の2018年10月27日(土)、一方の豊洲 PIT ではエレクトロミュージックの祭典【MIRAI TOKYO - Audiovisual Media Art Show(ミライ・トーキョー - オーディオヴィジュアル・メディア・アート・ショー)】が開催された。

"未来" という想像力が宇宙レベルで拡がりテクノロジーという創造力が "今日" という境界線でエレクトロニック・ミュージックの先端へ没入する。

というテーマのもとに開催されたこちらのイベントには、90年代を代表するミニマルテクノのパイオニア RICHIE HAWTIN(リッチー・ホウティン)、そしてエレクトロニック・ミュージックからメディア・アートまでを横断し、ビョーク、イギー・ポップ、坂本龍一ら世界的なアーティストたちとのコラボレーションでも知られる ALVA NOTO(アルヴァ・ノト)が出演するとあり、エレクトロミュージックシーン、ダンスミュージックシーンの双方から注目が集まっていた。
 
 

最初にフロアを温めたのは、日本人アーティスト勢。オープニング DJ として抜擢された ISHIJIMA は、次世代テクノ DJ の一人として期待されているアーティスト。ミニマルミュージックをリアルタイムに構築していくスタイルを得意としている。点と線で構成された図形が目まぐるしく変化していく VJ をバックに、ミニマルな四つ打ちをベースとしつつユニークに展開されていくサウンドで、聴く者を飽きさせない。軽快なリズムに、踊りながらフロアに入ってくる来場者も目についた。


Akiko Kiyama は、テクノに限定されない広範なエレクトロニックミュージックを体現するプロジェクト "Aalko" のライブセットとして登場。水面越しにライトの明かりを見ているかのような揺らぎのある映像が流れる中、モジュラーが生み出すサウンドに合わせて呪文のような言葉が乗ったりと、エクスペリメンタルな要素がふんだんに詰まったライブパフォーマンスが披露された。


ゴーッというノイズ音から始まった ALVA NOTO は、アルバム UNI シリーズの3部作完結編 [UNIEQAV] を再演。光の線が上下に揺れる映像、目を瞑っていると自然と左右に揺れてしまうような心地良いサウンドから、徐々に展開していく。弾けるような低音と共に背後の映像が連動して切り替わる。金色の光の粒の群れが小刻みに振動したり捻れたり、かと思えば様々な色彩とデジタルな線で構成されたミニマルな映像等が流れ、そしてそれに呼応する音楽がオーディエンスに更なる没入感を与えていく。


クライマックスに向けてどんどん音数が増えていき、オーディエンスを更に激しく踊らせ、アートとダンスミュージック、どちらに対しても強くアプローチする ALVA NOTO のライブは、その卓越したセンスとテクニックで、天才と呼ばれる所以を見せつけたものとなった。


そしてこの日のトリを務めたのは、ミニマルテクノのアーティストと言えば必ず筆頭に名が挙がる RICHIE HAWTIN。世界ツアー中の最新プロジェクト[CLOSE - Spontaneity & Synchronicity]が披露されるとあり、オーディエンスの期待は最初から最高潮だった。


ドロドロとした轟音と心拍数を強制的に上げられそうな BPM のビートで、ミニマルで硬質な、機械的な音のうねりの中に飲み込まれて行く。
胃袋の底から鷲掴みにされてシェイクされ続けているようなサウンドに、次から次へと様々な音が展開されていく。各機材には多数のカメラが取り付けられており、機材を操る RICHIE HAWTIN の手元や、彼の姿を左右、頭上からリアルタイムにキャッチ、音に反応するようにどんどん形を変えていくエフェクトで加工されてVJとして投影される。


今回のイベントでは、各アーティスト共に「音」と「映像」との連動性によって生み出される表現が特に重視されているように思われたが、それの最たるものが、RICHIE HAWTIN のライブだった。


サウンドだけではなく、映像だけでもない、その二つのコンビネーションによって初めて到達することのできる新たな表現を、とことん堪能することができた約5時間。各アーティストが、更なる様々なアプローチによって、まだ見ぬ新世界を見せてくれることを期待しつつ、会場を後にした。

Written by きのや

MIRAI TOKYO - Audiovisual Media Art Show

日時:2018年10月27日(土)
会場:豊洲PIT 東京都江東区豊洲6丁目1−23
出演:
Richie Hawtin [CLOSE - Spontaneity & Synchronicity (live)]
Alva Noto [UNIEQAV (live)]
Aalko aka Akiko Kiyama (live)
ISHIJIMA [Openning DJ]