緊急事態宣言下の中で開催され、先日幕を閉じた「東京オリンピック2020」。今回の開催については、状況が状況だけに開催前から物議を醸していたが、開催中はテレビやインターネットで毎日中継の放映や試合結果、金メダルの数などが報道されているたため、観ていた方も多いのではないだろうか。

そんな中、iFLYER ユーザーの皆様と同様に、2年にも渡ってフェスティバルに参加できていない筆者が、知人が偶然チケットを当選購入していたため、それに便乗して久しぶりのフェス……もとい「東京オリンピック2020 自転車競技」を見に会場へ足を運んできたので、そのレポートをお届けしたい。

■ 有観客会場と無観客会場

東京の会場は「無観客」での開催となったが、日本にある4つの会場では、ある一定の規定を満たしていれば有観客での開となった。その会場の1つが静岡県にある「伊豆ベロドローム」である。その他「伊豆 MTB コース」「富士スピードウェイ」「宮城スタジアム」でも有観客での開催となった。

伊豆ベロドロームは、東京駅から約2時間の静岡県伊豆市に位置する。公式に記載のある収容人数は3,600人。

■ 修善寺の駅に到着!

伊豆ベロドロームの最寄り駅となる「修善寺駅」はこぢんまりとした地方の駅で、オリンピックの公式マスコットの青い「MIRAITOWA(ミライトワ)」、ピンクの「SOMEITY(ソメイティー)」が出迎えてくれた。


駅構内には、多くの青い「東京オリンピック」Tシャツを着たボランティアがいて、到着した人々よりもボランティアの人数の方が多いほど。この日の気温は33度の酷暑日だったが、到着するや否や、すぐさまボランティアの方が我々に駆け寄り「冷却パック」と「うちわ」を差し出してくれた。
更に、多くのボランティアは「シャトルバスはこちら」「何か困っている事はないですか」と書かれたプラカードを手にしており、新型コロナ対策として「声」を出さずに立っていた。

▼ 左の男性がプラカードを持っている

我々がシャトルバス乗り場や諸々の質問をすると「楽しんで来てくださいね!」「会場に行けるなんてラッキーですね!」と声を掛けてくれる……。
ただ観客としてやってきた我々だが、まるで貴賓としてもてなされているかのような気分に。これが、日本が世界に向けて発信したかった「お・も・て・な・し」なのか……と、内心とても感激させられた。

なお、オリンピック観戦の規定で、最寄り駅等での「飲酒」や「喫煙」は禁止されており、ベンチが多数設置されている駅前の広場にも、飲酒している人は
誰一人としていなかった。

■ 警察犬まで!? 物々しい伊豆ベロドロームのエントランス

修善寺から専用シャトルバスで約10分。伊豆ベロドロームに到着すると、まず「検温」される。その後、空港にいるような警察犬がお出迎え……。さすがはオリンピックである。


更に、空港の「保安検査場」のような場所でカバンの中身も検査される。手荷物については公式サイトに「1人あたり持ち込める飲み物は750ml」と記載があったため、筆者はペットボトル1本を持参。検査官に「ペットボトルを出して一口飲んでください」と言われて、目の前で一口飲んで OK が出た。これは飲み物が爆発物等でないかのチェックだそうだ。その後、ボディーチェックの機械を通りセキュリティーチェックが完了。

▼ 東京オリンピックの会場を彩る、小学生が育てたアサガオの鉢。選手たちを励ます子どもたちのメッセージが、一つ一つに添えられている。

なお、消毒液なども「1人が使用する分量」しか持ち込めないとのことで、筆者はジェル状のサニタイザーをカバンから取り出し検査官にチェックされたが、それで検査は無事終了して入場が許可された。この時点でも周囲に全く人はおらず、本当に開催されているのか不思議に思ったほどである。

■ 会場内

会場へ入場すると、無料で「タオル」や「うちわ」が配られていた。また会場外では、海外からのレポーターも多く撮影していた。


筆者も声をかけられ、イギリスのラジオ番組のレポーターからインタビューを受けたが、いくつか質問されたうち、1つユニークな質問が。
会場内での声援や大声を出す事は禁止ですが、守りますか?
我々は「もちろんです」と答えたが、海外だと観戦しながら大声を出さないようにすることは難しいのだろうか……?(日本人には特に苦ではないと思うが…。)文化の違いを感じさせる質問だった……。



会場内には駅同様、多くのボランティアが。ここでもコロナ対策で声を出さないようにするためか「写真撮ります」等が書かれたプレートを持って立っていて、至れり尽くせりでもてなされた。


実際の観客数は、キャパシティーの半分〜3分の1程度に見えた。座席は指定席だったが、筆者の座席前後左右誰もおらず、海外チームの関係者またはコーチと思われる人々がまだらに座っていた。
日本人よりも外国人の方が多く、また観客よりも関係者とボランティアの方が多いように見えて、なんだか不思議な感じだった。


様々な国のアスリートが出場していたが、観客はほぼ日本人なため、アスリートたちにどのような声援を送るのか、気にはなっていたが、筆者を含め、観客達は、どの国のアスリートにも「拍手」で応援していた。
もちろん日本人の選手が出場すると一際拍手は大きくなったものの「声」は出さない。感謝や労いの気持ちなどの気持ちを込めて、一心に拍手を送った。


競技は「男子スプリント」「女子ケイリン」などの自転車競技で、予選や「男子チームパーシュート」の決勝が行われた。
決勝戦は、特にかなりの盛り上がりを見せていた。金メダルがイタリア、銀メダルはデンマーク、銅メダルはオーストラリアという結果に。



写真でも分かるように、かなり至近距離で競技を見ることができるため、選手たちが喜んだり悔しがっている姿を見ることができた。また、控え室のようなものも会場の中心に設置されていたので、練習風景までしっかりと見ることができた。


賛否両論あった今回のオリンピックだが、選手が飛び跳ねて喜んでいる姿を目前にすると、オリンピックのために努力をしてきたアスリートたちへの感謝の気持ちでいっぱいに……。

■ 最後まで徹底された「お・も・て・な・し」

試合が終わり、シャトルバスで再び修善寺駅に戻った際にも、ボランティアの方がやはり無料で飲み物を配っていたり「お帰りなさい」「お疲れ様でした」など声をかけてくれた。今回の観戦で最も記憶に残ったのは、とにかくボランティアの方の「おもてなし」の素晴らしさ。これが日本のクオリティーだと思うと、とても嬉しい気持ちさせられた。


駅には「寄り道をせずまっすぐ帰宅してください」との張り紙がたくさん貼られていた。


ボランティアの方々は、どうやら地元の方が主体となっていたようで「新型コロナが落ち着いたらまたここへ遊びにきてください」と書かれた張り紙や、ご当地の名産などが載ったチラシやパンフレットも置かれていた。

■ まとめ

筆者の個人的な意見としては、東京オリンピックの開催に対して少し疑念を感じていたが、実際に会場へ足を運び、ボランティアや関係者の方々、そして遠い海外からこの大会のために訪れたアスリートの方々の姿を目の当たりして、少し考えが変わったのも確かである。だが一方で、新型コロナウイルスの蔓延などもあるため、それでもやはり100%オリンピックを開催して良かったとは言い難いところだ……。


そしてまた、これがもし新型コロナ渦中の開催でなければ、どれだけ盛り上がったことだろう、と残念でもある。
「日本という国だからこそ、新型コロナの渦中に開催できた」と評価する海外メディアもいることも事実なのだ。
筆者も会場内、駅、会場周辺で従順に規則に従っている人々を見て、それに対しては納得だった。喫煙や飲酒はもちろん、大勢で溜まったり、大声を出したり、マスクを外している人は一切目にしなかった。


最後に……色々あるけれど、やはり筆者はオリンピックのために力を注いできた関係者、ボランティアの方々、そして日本人アスリートを含む海外から来日した全てのアスリートの方々へ心からの感謝をしたい、という感想で、このレポートを締めくくりたい。