4月に来日したGold Pandaより6月5日にリリースされるニューアルバム「Half Of Where You Live」に関してコメントをいただきました。彼とのインタビューをチェックしよう。

『Half Of Where You Live』は、デビュー・アルバム『Lucky Shiner』から約2年半振りのアルバムになります。この間に生活も大きく変わったと思いますが、何が一番変わりましたか?

「本当に自分の人生は全く別のものに変わったよ。家賃もちゃんと払えるようになったしね(笑)。彼女もできたし、前のアルバムを作る前よりも幸せを感じている。以前はこれから人生をどうしていこうか悩む事もあったけれど、ファースト・アルバムを出して、僕がやるべきこと、出来ることっていうのが明確になったと思う。自分でも達成できることがあるっていう自信がついたんだね」

今はベルリンに住んでいるということですが、移住した経緯を教えてください。

「ベルリンには2年前くらいに引っ越したんだ。その前にハンブルグにも住んでいたから、ドイツに移住したのはもう少し前だね。すごく良いところだよ、クソ寒いけどね!(笑)彼女とドイツで出会った事がきっかけで、一緒に住み始めた。彼女はプロモーターをやっていて、Caribouをドイツのショーに呼んだ時に、僕がCaribouのツアー・サポートを務めていたから一緒に付いていったんだ。その時、彼女はゴールド・パンダはいらないと思ってたらしいんだけど(笑)」

そういった環境の変化は、どのように新作に反映されていますか?

「そうだね。ファースト・アルバムを出してから、ずっとツアーを回っていた事も大きく影響を与えていると思う。前のアルバムはすごくパーソナルな作品だった。今回のアルバムもパーソナルな部分はあるけれど、それよりも色んな場所を回った経験の方が強く反映されている。それと、サウンドもストレートでシンプルにしたかったんだ。ベルリンで多くのハウスやテクノを体験した事も影響の1つだね。ハウスやテクノをそのまま作るって意味ではなく」

確かにベルリンはテクノやハウス等ダンス・ミュージックのイメージが強いですね。

「地元の人は否定したがるけど、実際そうだよ。クラブも古くて大きなビルがたくさんあって、自由で良い雰囲気なんだ。毎日毎晩クラブ・イベントが開催されていて、中にはヘッドライナーが朝の8時からプレイするパーティもあるんだよ」

以前はクラブ・カルチャーと自分との関連性はあまり無いと話していました。それもベルリンに移住して変わりましたか?

「いや、今でもクラブ・カルチャーと自分の音楽はあまり関係ないと思っているよ。そこまで頻繁にクラビングするわけではないし。ただ、自分がクラブでプレイする仕事をしてきて、人がダンスをしている空気感とかを経験した事が反映された部分はあると思う。新作はダンス・アルバムとまではいかないけれど、以前よりもストレートで、ビートが中心になっているから、クラブ・シーンでも好かれる音になったんじゃないかな」

以前に比べると、全体にすごくシンプルでフォーカスの取れた印象を受けました。

「前よりも忙しなくない音を作りたかったんだ。以前は自分の音楽の質感に自信が持てていなかったのもあって、レイヤーを重ねることで厚みを出していた。今回はそれを止めて、レイヤーを削ぎ落としていくように作っていった。それに、『Lucky Shiner part.2』みたいなのも作りたくなかったから、それは意識したね。そういった事に早く気づいていたらもっと早く完成していたと思うんだけど、最初は前作のファンをキープしたり、がっかりさせないためには同じような作品を作った方がいいのかなって迷っていた時期があったから少し時間がかかってしまったんだ。それを乗り越えたらすんなりと作れたんだけどね」

新作の制作に取り掛かったのはいつ頃から?

「だいたい1年前くらいだね。6曲目の〈S950〉は『Lucky Shiner』よりも前に出来ていた曲なんだけど、その他は全部新しい曲。〈S950〉はいつかフィットする作品が出来るんじゃないかと思って昔からキープしていた曲で、今回の他の曲と似たような作り方でレコーディングしたんだ。ほとんどラップトップを使わずに、昔のやり方に原点回帰するような方法で、サンプラーのMPC2000やドラム・マシーンの808を主に使って作っていったんだよ。MPCや808は、昔から使っていても全く飽きることがない一番のお気に入りで、ライヴでもプレイしやすいんだよ。」

今回のアルバムが完成した時はどんな気持ちでしたか?

「アルバム全体としては、今回の方が良い仕上がりになっていると思う。2枚目のアルバムが出来て、初めて開放感や自由を感じられたんだ。次の作品は、もっと新しいゴールド・パンダを見せられるんじゃないかって」

前作はノスタルジックなイメージがありましたが、今作ではそのイメージにも変化があります。

「このアルバムは、もしかしたら少しダークな部分があるのかもしれない。気が沈むようなダークさではないんだけど、今回はドリーミーな部分をなるべく排除しようとしたんだ。特にアメリカに行くと、よく「あなたの音楽は〈Chill〉だね」って言われるんだけど、それに嫌気が指していて。その言い方がすごく嫌なんだ。だって、形容詞だったら〈Chill〉じゃなくて〈Chilled〉が正しいはずなのに!僕はイギリス人だから、そういう細かい部分が気になってしまうんだよ。もちろんアンビエント・ミュージックは好きだけど、そういうカテゴリーに入れられるのがイヤだったから、少し変えようとしたんだ」

今作には地名の付く曲が多く収録されています。ツアーで回る土地のカルチャーの違い等にインスパイアされる事は多いですか?

「ツアーで外国に行くと、送り迎えがあって、ホテル、レストラン、クラブ……って連れていってもらって、良い待遇をされる事の方が多いから、それでカルチャーを体感できているのかどうかは分からないけれど、他の国でインスピレーションを受ける事は多いね。」

例えば〈Brazil〉という曲がありますが、これはどんな風に出来たんですか?

「サンパウロに行ったんだけど、すごく活気があってクレイジーな街だったんだ。それで、家に帰った時に偶然ブラジルについて歌っているレコードを見つけて、それで空港から街に向かう途中の興奮をチャントの形で表現してみた。そういう都市についてのアルバムになってるんだよ。多くの曲は、ツアーから帰ってきてレコードを聴いていたりする時に、旅先のイメージを喚起する断片が見つかって、そこから発展させていったんだ」

旅についての曲が多い中で、どこかホームを恋しく思うような曲も収録されていますね。

「〈An English House〉という曲は、自分がどこの国に住んでいても部屋をイギリスっぽいモノで埋め尽くして生活してしまうっていうテーマなんだ。今はベルリンで生活しているけど、内心はイギリスをすごく恋しく思っていて、今でもイギリスに戻りたいと思う時があるよ」

〈Flinton〉というタイトルは、ヨークシャー州にある村の名前のようですが。

「Flintonというのは、実は僕のツアー・マネージャーの名前の事なんだ。地名になっているのは偶然なんだけど、調べてみたらそういう名前の村があるって知って、面白い偶然だなって感じたよ。彼とは本当に長年の友人で、一緒にツアーで世界各地を旅してきた人なんだ」
最後の〈The Most Liveable City〉は、アルバムのテーマを象徴してるようにも思いました。

「The Most Liveable Cityというのは、Monocleという雑誌が毎年発表している〈世界の最も住みやすい街〉というランキングからとったんだ。自分にとって住みやすい街はどんなのだろうって想像して、クリーンで安全で、でもニューヨークやロンドンと同じくらい刺激があって……っていう。そんな街は実際には存在しないんだろうけどね(笑)さらに、聞き取るのは難しいかもしれないんだけど、実はこの曲には〈Junk City II〉と同じ音のピースを使ってて、〈Junk City II〉がディストピアのような街並みを想像して作ったのと対比させているんだよ。〈The Most Liveable City〉の最初に出てくる鳥の鳴き声は、アマゾンを特集したテレビ・ドキュメンタリーを録音したもので、その後の女の人の声は僕の彼女がスカイプで連絡してきた声を使ったんだ」

今作も「都市」が1つのテーマとなったアルバムになっていると思うのですが、あなたが「都市」に惹かれるのはなぜ?

「ベルリンはまた雰囲気が少し違うけれど、特にニューヨークとかロンドンは、全てのものが忙しくて、中で暮らしていると何もしないでいる事が難しい。何かに急かされているような感覚になるんだ。僕は何もすることがなくて途方にくれるより、そっちの感覚の方に惹かれるんだよ。「都市の孤独」みたいなものを以前から表現してきたんだけど、自分にとっては外国であるベルリンに移住してその感覚がさらに強まったようにも思う。そういう部分が新作にも反映されていると言えるかもしれない」

4月に開催されたGOLD PANDA JAPAN TOURのイベントレポはこちらをチェック。

 

 

Release Information

 

Artist: GOLD PANDA
Title: HALF OF WHERE YOU LIVE
Release Date: 2013/06/05