世界中でスタジアムを揺るがす大物でありながら、1990年以降来日公演が実現していないエレクトリック・ポップ・バンド、デペッシュ・モード(Depeche Mode)。彼らの来日を「祈願」すべく、最新作を除くこれまでのオリジナル・アルバム12枚を4月23日に特別な仕様で一挙再発売。世界で初めて、英オリジナルLPに準じた紙ジャケット仕様、高品質なBlu-spec CD2仕様が採用された、来日「祈念」盤となっている。

これらの祈念盤発売を祝して、電気グルーヴの石野卓球が2013年発表の最新作『デルタ・マシーン』を含むデペッシュ・モードの13枚のオリジナル・アルバムのひとつひとつへコメントを寄せた。石野卓球は、中学生時代からの筋金入りのデペッシュ・モードのファン。彼が音楽をはじめたきっかけの一つにもなっている。いち音楽ファンとして聴いた初期の作品、自身も音楽のプロとして聴いた中期以降の作品、そして30余年の時を共に歩んで受け止める最近の作品。それぞれに対して、時代を並走してきたリアル・タイムのリスナーならではのコメントを寄せている。

『ニュー・ライフ』(1981)へのコメント:
リアルタイムで聴いたのはこのアルバムから。聴いたときは、とにかく「急に大人になったなあ」という印象が強かった。いま聴くとそれほどでもないのだけど、当時はとにかくそう思った。東京の輸入盤店に通販のオーダーを入れてから、中学校から帰る毎日「きょうこそ届いてるんじゃないか」ってそわそわしちゃって、バイトや部活とか休んで帰っちゃったり(笑)。12インチも買うようになって、「ミーニング・オブ・ラヴ」とか買ったな。

曲をマーティン・ゴアが書くようになったという変化と同時に、音も変わった。まず、このアルバムからドラムの音が圧倒的に変わったんだよね。そしてそれまでアナログ・シンセサイザーのみだったのに、ここからデジタル・シンセサイザーのPPGも使いだして、音色の深みもまったく変わった。前作がカラフルな原色だとすると、こちらは油絵。深みが出ている。そして暗い。そこが好きだった。

瑣末な話になるけど、アルバムに未収録の「ゲット・ザ・バランス・ライト」がこの後に出るけど、あれだけドラムの音が『ニュー・ライフ』の頃に戻ってて、それが不思議だった。「ア・フォトグラフ・オブ・ユー」みたいな、いまでは本人たちがギャグにしているような曲も入っていて、いまのデペッシュ・モードとは大きくちがうんだけど、前作が幼虫だったら、これはサナギのアルバムかも。

メインのソング・ライターのヴィンス・クラークがやめた後で、よくここまでちゃんとしたアルバムを作れたなあって感心します。

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