開催4年目にして過去最大の規模そして最高のラインナップを実現した都市型ダンスミュージックフェスティバル「ULTRA JAPAN 2017」。9月16日(土)~18日(祝・月)の3日間で、総勢98組のアーティストが出演し12万人もの人々を熱狂させた。ダンス・ミュージックファンが待ち望んだ年に一度のビッグフェスをレポート!

1日目

MAIN STAGE

合計37ものLEDパネルを搭載し、ULTRAのシンボル的な存在であるメインステージ。ダンスミュージックシーンの一歩先をリードし、常にオーディエンスに最新の音楽を届けてくれる最高峰のアーティストがラインナップされていた。

banvox
今回のULTRA JAPAN 2017メインステージのオープニングを飾ったのはbanvox。彼がプレイした「Summer」は、この日のために作られたイントロエディット。
iFLYERはアメリカツアーを終え、ULTRA JAPAN直前のbanvoxにインタビューを行っているので、そちらも要チェック!


Sam Feldt
トロピカルハウスシーンの重要人物、Sam Feldtは「Yes (Club Mix)」や「What About The Love」など自身の楽曲をメインに展開し、土曜の昼下がりをトロピカルで心地良い空間に演出した。

DEORRO
DEORROはエレクトロダンスミュージックの代名詞とも言うべき、バウンスの筆頭格。久しぶりの来日ではあるが、日本のファンにもわかりやすい選曲で、かつユーモアもあるエディットなどを組み込み、常に日本のファンを踊らせ続けた。未発表曲も披露し、バウンスの次世代を提示するライブとなった。


STEVE ANGELLO
STEVE ANGELLOは約1年ぶりの来日。セット序盤は自身が所属したユニットSwedish House Mafia及び個人名義での楽曲を連発し、ファンを喜ばせてくれた。Eric Prydz 「Opus」やStill Young 「White Label (Is This Love)」などセンセーショナルな楽曲を送り込んだ後は未リリース曲を数曲プレイし、彼をこよなく愛するファンにとってたまらないセットとなったのではないだろうか。


ALESSO
ULTRA JAPANではすっかりおなじみの顔となったALESSOは、DAY1のヘッドライナーとして登場。Alesso ft. Diana Gordon「Take My Breath Away」のイントロエディットで登場し、Diplo & AutoErotique「Waist Time」やValentino Khan 「Pump」など最新ヒットチューンをフロアに突き刺した。世界最高峰のダンスミュージックフェスティバルと呼ばれるULTRAの演出力もここぞとばかりに発揮され、最後の「If I Lose Myself」では盛大に花火が打ち上げられた。


 

LIVE STAGE

今年新設された注目のLIVE STAGEでは、ジャンル、そして世代の壁を超えた国内外の注目アーティストが次々と渾身のライヴパフォーマンスを行った。1日目は夜になるにつれ雨の強さが増していったが、それをものともせずに多くの人々がステージ前で熱狂していた。


水曜日のカンパネラ
コムアイの独特の歌声とダンスでオーディエンスを不思議な世界観へと惹き込んだ水曜日のカンパネラ。ラストに披露した大ヒット曲「桃太郎」が始まると、タイミング良く花火が打ち上がり、会場の熱狂は更にヒートアップ。曲終盤には、ステージに用意されていた巨大なバルーンの中にコムアイが入り、なんとそのままフロアへとダイブ! オーディエンスの上を気ままに転がった後、ステージに戻って見せた笑顔がとても印象的だった。


Porter Robinson
日本でも​大変な人気を誇るPorter Robinsonは、彼の登場を待ちわびたファンの大きな歓声に包まれて登場した。「Sad Machine」では、美しい日本の風景がアニメーションで描かれたヴィジュアルが流れ、親日家である彼の”日本への愛”を改めて感じた。そういった美しい映像をバックに「Divinity」、Mat Zoとの共作「Easy」へと続き、電子ドラム、キーボード、そして素晴らしい歌声で観客を魅了。Porter Robinsonのアンセム・ソングである「Language」の美しいエレクトロ・サウンドに、フロアのテンションは最高潮に達した。流暢な日本語で「超楽しかった!ありがとうございました!」と感謝の気持ちを伝え、素晴らしいライヴセットを終えた。


Empire of the Sun
1日目のライブステージのトリを務めたのは強烈なヴィジュアルとサウンドで世界を魅了するオーストラリアのエレクトロ・デュオEmpire of the Sun。この時間帯には雨足がかなり強くなっていたにも関わらず、初来日となるEmpire of the Sunの貴重なパフォーマンスを見ようと多くの人々がフロアに止まりライブを堪能していた。「We Are The People」「High And Low」などの名曲に合わせてダンサーの個性的な演出が繰り広げられた唯一無二のステージで、降りしきる雨さえもまるで演出の一部かのように感じさせた。
 

RESISTANCE STAGE

LIVE STAGEと壁一枚隔てた場所に設けられたRESISTANCE STAGEには、テクノ/ハウスの国内外トップアーティストが集結。出演予定だった石野卓球が体調不良で、またEATS EVERYTHINGが飛行機遅延のため、やむなく出演キャンセルが発表された。その穴を埋めるべく、SugiurumnとSeth Troxlerが予定されていた持ち時間よりも長時間のプレイを敢行。同ステージは、陽が沈み暗くなってくるとより一層ステージが映える。DJブースに設置された巨大LEDパネルに映し出された映像と縦横無尽に飛び交うレーザーが、フロアにいる観客を音の渦に引き摺り込んだ。
 

ULTRA PARK STAGE

ULTRA PARK STAGEは、Onitsuka Tigerと国内人気アーティストとのコラボレーションで”ART PARK”として登場。アート作品の展示やライブペインティングでULTRAの会場に彩りを添えた。DJブースは世界最先端のサウンドシステムVOIDがサポート。フォトジェニックなアートとエクストリームパフォーマーによるパフォーマンスを楽しみながら、国内の注目アーティストが繋ぐ良質な音楽に体を揺らしながらチルアウトする人々の姿が数多く見うけられた。


DJ BAKUはDJ KENSEIからのバトンを受け取るとドラムンベースから心地よいダンスホールへ。エントランスから入ってすぐのステージであるULTRA PARKは、訪れた人々を真っ先に出迎え、テンションを上げる重要な役割を担っていた。日が沈みパークステージやチェアがLEDでライトアップされると、昼間とは違った幻想的な雰囲気に一変。同日のMAIN STAGEにXLIIと結成したユニット・XXXSSS Tokyoとして出演したDJ SARASAは、PARK STAGEにも登場。その時間帯になると強い雨が降り始めたものの、ステージ前では雨に濡れても構わない!といった強者が何人も踊り続けており、DJ SARASAもそれに応えるように手を振りかざしてオーディエンスを煽っていた。
 
 

2日目

MAIN STAGE

Nick Martin
雨にも負けない勢いで、夏を彷彿とさせる青い波やヤシの木をスクリーンに映し出し、エネルギッシュなセットを披露したオランダ出身のNick Martin。セット中盤には、自身の楽曲「Looking For Love」を口ずさみながらプレイ。Ed Sheeran「Shape Of You」やZedd Feat Alessia Cara「Stay」のリミックス、Aviciiの新曲「Without You Feat Sandro Cavazza」など日本にも親しみのある楽曲を組み込んだセットとなった。


Slushii
雨足が強くなる中、メインステージにはSlushiiが登場。彼はMarshmelloを育てたMoe Shaliziによるマネジメント傘下に在籍しており、これまでもクラブなどへの来日はあったものの、大きなフェスへの参加はUltra Japanが初となり、初出演にして見事にメインステージの中盤を飾った。「Where my mellogang at?」とmarshmelloファンに応えるように、marshmelloとのコラボ曲からEP Brain Freezeより自身の楽曲も披露。Future「Mask Off」やKendrick Lamar「Humble」などヒップホップからDaft Punk「Harder Better Faster Stronger」、DJ Khaled「All I Do Is Win」やDarude「Sandstorm」などの名曲を連発し、Slushiiワールドを醸し出したのが印象的だった。短いスパンで何個ものヒット曲を連ねるスタイルは、まさにミレニアル世代を彷彿とさせる手法であり、レインボードリンクを思わせるレインボーカラーのキュートなビジュアルとは裏腹の多様なジャンルを見せつけてくれた。また、時には自身の歌声を惜しげなく披露し、曲のリリックも「TOKYO」と置き換えるなど、日本への愛情をアピールし、オタク感満載のセットを完成させていた。


The Chainsmokers
昨年トリを飾ったHardwellに次いで、本年度のULTRA JAPAN大本命のThe Chainsmokersが登場。当初はSteve Aoki率いるレーベル・DIM MAKから曲をリリースしていたThe Chainsmokersだが、今ではImagine DragonsやColdplayなど本人たちも夢にも思っていなかったであろう世界的なビッグアーティストたちと曲作りを果たすほどスターダムへとのし上がった二人。前日までバンコク公演をしていた疲れを見せない迫力で観客を沸かせた。Andrewの恋愛経験に基づいて作られた大ヒット曲「Closer」や「Roses」などを披露しながらも、ダブステップやベースミュージックを思わせる選曲のチョイスは、非常にThe Chainsmokersらしい仕上がりに。「Make Me Feel Better Don Diablo Cid Remix」や「Something Just Like This Don Diablo Remix」など他のアーティストによるリミックスも交え、今年のSummer Sonicにも来日したDAYAとの「Don’t Let Me Down」にはPapa Roachの「Last Resort」をミックスするなど展開を読めないセットで観客を沸かせた。初のアルバム『Memories Do Not Open』にも収録されている「Honest」や「All We Know」などリリックが刺さる楽曲もAndrewの生歌を聞ける貴重な時間となり、観客には感極まって泣いたり笑ったりしながら、皆が各々の捉え方で名曲の数々を堪能していた。
 
 
 

LIVE STAGE

LIVE STAGEには次世代を担う日本人アーティストが多数ラインナップされていた。この日のライブステージの幕を開けたのはMATZ。そしてULTRA EUROPEのメインステージにも立ったガールズDJ moeは、この日のために作られたスペシャルライブセットを披露し、若き天才たちの世界観が存分に展開されていた。


SALU
 この日のLIVE STAGEで大きな話題となったのが、ヒップホップアーティスト、SALU。磨き抜かれたライブパフォーマンスはもちろん、親友として知られるSKY-HI、SNSを通して有名になった「Cho Wavy De Gomenne」のJP THE WAVY、日本のヒップホップシーンにおけるレジェンド、MC 漢やDOなどそうそうたる面々がステージにサプライズ出演し、豪華すぎるゲストを迎えてフロアを盛り上げた。


TCHAMI
LIVE STAGE2日目のトリを飾ったTCHAMIのステージは圧巻の一言だった。教会を模したDJブースが設置された荘厳な雰囲気の中、全身黒の服を身にまとってステージに現れたTCHAMI。彼が名付けたジャンル「FUTURE HOUSE」の代表的な楽曲を多数プレイし、途中には聖歌隊のコーラスも加わってまさに「神がかり」的なライブを展開。オーディエンスは彼の神々しいパフォーマンスに手を合わせ、敬意を表現していた。そんな彼のライブ中に朝から降り続いた雨が止んだ奇跡的な光景も印象的だった。
 

RESISTANCE STAGE

この日のRESISTANCE STAGEは、アンダーグラウンドな音楽の最前線をULTRAファンが体験するには絶好の機会だったのではないだろうか。 朝から雨が降り続いていたため、唯一フロアに屋根があるRESISTANCE STAGEに多くの人が集まっていたが、Nic FanciulliやSasha & John Digweedなど、世界屈指の実力を誇るアーティストたちが淡々と上質なビートを鳴らし続け、普段はハウス・テクノに触れる機会の少ない人たちにその魅力を大いに体感させるステージとなった。
 
 

ULTRA PARK STAGE

ULTRA PARK STAGEにはDAY1に引き続き、フォトジェニックでエンタメ要素の強いアクティビティで終始賑わっていた。EITAがアーバンファンクなオープニングを演出し、DJ YUMMYやDJ MAARなどシーンの第一線で活躍するアーティストがいつまでも揺れていたくなるような音楽を提供してくれた。
 
 

3日目

強い雨風をもたらした台風は深夜のうちに過ぎ去り、朝方には一気に気温が上昇した首都圏。台風の影響でエントランスのオープンが30分遅れて開始されたものの、予定通りのタイムテーブルで始まった。幸いなことに機材やステージなどに大きなトラブルはなかったようで、無事最終日となる3日目のULTRA JAPANが幕を開けた。1日目、2日目とは打って変わって空一面には抜けるような青空が広がり、ようやくフェス日和と言える天候に。「晴れてよかった〜」としきりに口にする人々は、久しぶりの気持ち良い快晴を満喫していた。

MAIN STAGE

TJO
メインステージのオープニングはTJO。ULTRAの本場マイアミ、ヨーロッパなど世界を知るパーティロッカーな彼がマイクとオーディエンスのツボを抑えた選曲でものの見事にオーディエンスの心を掴んだ。サックスプレイヤーSHINHI TAKEDAがサプライズで登場! ULTRA JAPANの数日前に発表された新ユニット「BLADES OUT」のメンバーとしての一面を披露した。


中田ヤスタカ
中田ヤスタカはベースミュージックをメインに展開。セットが開始すると、ステージの照明が灯った数秒後にドロップに入り、その後立て続けにダブステップのアンセムを繋いでいく、攻撃的なセットでとにかく「ブチあげる」ことに特化したセットとなった。途中できゃりーぱみゅぱみゅの「ファッションモンスター」をダブステップにアレンジしたマッシュアップをかけると、フロアは大歓喜。「Love Don’t Lie (Ultra Music Festival Anthem)(feat. ROSII)」を満を持して披露し、中田ヤスタカの初のULTRA JAPANのパフォーマンスは大成功に終わった。


GETTER / REZZ
GETTERとREZZは初来日。それぞれ独自の世界観を持つアーティストで、兼ねてから来日を期待されていた。GETTERは日本の伝統でもあるハチマキを巻いて気合を感じられるベースセットを展開。おふざけありの演出も楽しませてくれた。一方のREZZはインダストリアルテクノをメインに、ダークな世界観を演出。不気味なのになぜか心地よい、無骨でミニマルな音を鳴らし続けた。オーディエンスも踊り狂うというよりも、ただそのダークな世界に陶酔していた印象だった。
 


Steve Aoki
Steve Aokiが作る音そのものがトレンドとなり、世界中のトラックメイカーがそれに続いてゆく。そんなトレンドセッターとしての存在を証明するように、Steve Aokiはヒップホップを軸にしたセットを披露。曲中ではシャンパンのボトルを持ってフロアを歩き回ったり、フロアに水を吹きかけたり「Steveらしい」パフォーマンスでオーディエンスを沸かせた。Steveおなじみのケーキ投げではファンがここぞとばかりに「Cake Me!!」のボードを掲げてアピールし、それにSteveが気づいてケーキをぶつけるという場面も。


 

LIVE STAGE

DJ AKi + YUUKi
DAY3のLIVE STAGEを見てきた中で衝撃的だったのがDJ AKiとYUUKiによるステージ。サプライズゲストとしてラッパーのACEが登場。「ドラムンベースとラップ」という組み合わせは異様にも聞こえるが、各シーンの最前線で活躍する2人にはジャンルの垣根など存在しない。本気と本気をぶつけ合い、最高のグルーヴが生まれた。


Underworld
今年から新設されたLIVE STAGEのトリを飾るのはUnderworld。往年の名曲をライブでつなぎ合わせ、彼らを古くから知るファンたちにとってはたまらないセットとなった。ラストに流れた「born slippy」のイントロで、フロアの熱は最高潮に。2人がステージを去ってからも数分間、フロアからの拍手は鳴り止まなかった。
 
 

RESISTANCE STAGE

少し汗ばむほどの天候となったDAY3もRESISTANCE STAGEは絶好調。KEN ISHIIやSEKITOVAなど日本が誇るアーティスト達から、ULTRA JAPAN初出演のJoseph Capriati、Carl Coxまで「RESISTANCEが目当てでULTRAに来た」というファンもいるほどの層の厚いラインナップで終始盛り上げていた。誰もが認めるテクノ・ダンスミュージック界の重鎮Carl Coxは21時ギリギリまでビートを鳴らし続けた。彼のラストソングと同時に花火が打ち上げられフロアは大熱狂の渦へ。


最前線を走り続けるアーティストたちによる全力のパフォーマンスと最高峰の演出によって、あっという間に過ぎ去ったULTRA JAPAN 2017の3日間。世界中からダンスミュージックファンが集まり熱狂したこの思い出は、参加者の胸に一生忘れることのない記憶として刻まれることになるだろう。