様々な場所で耳にする EDM 界の "ゴーストプロデューサー" 。タブーな話題であるが、しかし事実として存在する職業である。​楽曲にクレジットされているプロデューサーに成り代わり、その裏で楽曲制作をしていたり、フィーチャリングとして名前は載っていないが、楽曲のクレジットには名前が載っている場合など、様々なパターンが存在する。​

そんなゴーストプロデューサーたちが所属し、様々なサービスを提供している EDM Ghost Production(イーディーエム・ゴースト・プロダクション)。この会社を運営しているロシア人ゴーストプロデューサーの Alexander Larichev にインタビュー! 知られざるプロのゴーストライター業とは一体どのようなものなのか、闇に包まれたその実態を探ってみた。​

インタビュー前編はこちらから:【音楽のおしごと】「EDM Ghost Production」経営者兼ゴーストプロデューサーにインタビュー!(前編)​
 

EDM Ghost Production 経営者兼ゴーストプロデューサー Alexander Larichev が語る「ゴーストプロデューサーのお仕事」(後編)

iFLYER:あなたは、EDM Ghost Production の経営者兼ゴーストプロデューサーとしてお仕事をされているわけですが、会社では主にどんな仕事を担当しているのですか?

Alexander Larichev:
僕は、カスタマーのニーズに合わせて全ての制作楽曲の品質管理を行いつつ、同時にゴーストプロデューシングもしている。​
最近では、非常にたくさんの人から楽曲制作をして欲しいという連絡が来るようになった。そのため、楽曲制作をして欲しいという顧客のニーズに応えられるように、会社の規模を拡大しなければならなくなった。
楽曲制作しているゴーストプロデューサーたちとは、お互いにフィードバックをし合って、皆で一つ一つのプロダクション手順などをきちんと確認しながらやっている。チームワークが大事だからね。そうやって、どんどん会社を大きくしてきたんだ。

数年前位から、既に完成形の楽曲を購入したいという言う人たちが増えて来た。
好きな楽曲をカタログから探して、ワンクリックで楽曲ファイルと著作権を購入できるって、すごく良いアイディアだと思うんだよね。こうやって僕のサイトにある「Shop」というセクションを思いついたんだ。世界各国のプロデューサーが楽曲をそこにアップロードして、ゴーストプロダクションとしてその楽曲を売る。それと同時に、DJ、映画製作会社、アプリ、ゲーム制作会社、ブロガーといった人たちも、簡単にそこから楽曲を購入できるんだ。しかもその楽曲はロイヤリティーフリー(ライセンスを取る必要がなく、ライセンス料が既に含まれていること)だし、著作者は購入者に渡る。すごく良いアイディアだと思うから、このビジネスをもっと大きくして沢山の人たちに使用してもらえるようにすることが、今1番の僕の仕事かな。


iFLYER:インターネットで「ゴーストプロデューサー」と検索すると、沢山のゴーストプロデューサーの会社が出てきます。他の会社と比較したとき、どういった点が EDM Ghost Production の強みだと言えるでしょうか?

Alexander Larichev:僕は「どうして僕らのサービスを使ってくれるのか」と、クライアントにいつも聞いているんだ。すると「提供されるサービスのクオリティーが高いから」という答えが返ってくる。そこが他の会社と一番違うところじゃないかな。
僕のチームにいるプロデューサーの多くは、自身でも楽曲をリリースしている人が多い。だから、どういった楽曲が今のトレンドで、どうやって制作したら現在のリスナーが好む商業的な楽曲になるかを分かっている。
あと、僕のチームはゴーストプロデューシングだけをしているわけではない。sample packs、beta-testing、 plugins、synthesizers も制作している。そういった制作作業が、僕らの楽曲制作のスキルを上げてくれるし、移り変わりの激しいダンスミュージックシーンに常にアンテナを張っていられる。プロデューサーの中には同じサウンドから動けなくなっている人もいるよね。でも僕たちは常に向上心を持って、様々なことにチャレンジをしてトップを狙っているんだ。


iFLYER:ゴーストプロデュ―サーの1日を教えてください。

Alexander Larichev:起床、emailを確認、今やっている楽曲プロジェクトに取り掛かって、クライアントが望む楽曲になるように変更する作業をしたり。。。楽曲の改訂が終わった後は、少し休憩を取ってチュートリアルを見たり、新しいサウンドや plugins をテストしたり、僕のチームと話し合いをしたりする。
それらが終わった後は、また新しい楽曲の制作に取り掛かる。数曲のデモを制作し終わった後は、それをクライアントに送って返信を待つ。6時間~8時間楽曲を制作し、疲れたらリフレッシュしに外に出る。ジムに行ったり、散歩したり、友達と遊んだり、家族と過ごしたり。こういった生活を毎日繰り返しているよ。


iFLYER:ゴーストプロデュ―シングに対してネガティブな反応や発言をしている人も中にはいますが、あなたにとってのゴーストプロデュ―シングとはどのようなものなのでしょうか?

Alexander Larichev:僕はゴーストプロデューシングすること、誰かのために楽曲制作をすることについては、特に問題はないと思っている。ゴーストプロデューシングは、ずっと以前からあるものだしね。
どうして誰も Drake(ドレイク)や Britney Spears(ブリトニー・スピアーズ)を責めないの? 彼らの楽曲には沢山の人が関わって制作している。だけどみんな彼らの名前や楽曲のタイトルしか見ていないだろう?
楽曲制作したプロデューサーのクレジットを載せるときもあれば、載せないときもある。条件や契約書をきちんと前もってお互いに話し合っていれば、何も違法なことはない。特に DJ がゴーストプロデュ―サーを使用すると、みんなそのDJを責めるけど、ポップスターや歌手は糾弾されない。「DJ」という職業であっても、必ずしも彼ら自身が楽曲を制作しているわけではないと思う。もちろん自分の好きなアーティストが、ゴーストプロデューサー全く使用しないで、アーティストが一人で楽曲制作をしているのはクールかもしれないけど、だからといって Tomorrowland で Daivid Guetta がメインステージでプレイして、そこでダンスする人が減るわけじゃない。どういう理由であれ、みんな楽しむよね、だって音楽が最高だから。


iFLYER:最近のEDMシーンについてはどう思いますか?

Alexander Larichev:現在のシーンには色々な楽曲があり過ぎるし、詰め込まれ過ぎていて、過飽和な感じがするかな。
最近のフェスはすごく規模も大きくて素晴らしい。だけど、毎日毎日楽曲がリリースされていて、ちょっとリリースされ過ぎなのでは、という気がする。サウンドデザインや楽曲のアイディア、ミクシングの面から言えば、現在リリースされている楽曲の80%くらいはあまり良いとは思えない。だから、そんな中で宝石のような楽曲に出会うことは、すごく難しいことだと思う。でも、ラッキーなことに僕たちには Spotify のアルゴリズムがあるからね。僕は Spotify で好きな楽曲を好きなだけ聴いているよ。
直近の EDM シーンで残念に思うのは、毎年世界各国で行われるフェスのラインナップかな。フェスのラインナップの90%は、毎年毎年同じようなラインナップだよね。僕は沢山の有能で才能のあるアーティストの楽曲を聴いてきたけど、そういったアーティストをフェスで見ることは一度もない。だから、ラインナップのローテションがあると良いな、と思うね。例えば、フェスのラインナップの50%はそういった今後期待の新人が出演してくれたら良いよね。


iFLYER:最後に、EDM Ghost Production のサービスを使用して見たいなと思っている方に、何かメッセージはありますか?

Alexander Larichev:クールな楽曲アイディアを持っているけど、スタジオがなかったり、その楽曲をプロ仕様のファイルにすることができないくてお困りの方は、ぜひ僕たちに連絡して欲しい。ぜひ一緒に楽曲制作をしよう!
 

賛否両論あるゴーストプロデュサー業であるが、1つ明確であることは、実際に誰が制作しているかは別として、素晴らしい音楽は素晴らしいということではないだろうか。また、ゴーストプロデューサーは、楽曲制作をしたいがスタジオを持っていない、楽曲制作に必要な機材を持っていないため制作できない、サウンドや制作したいアイディアは明確にあるがそれを形にできずに前に進めない……といった問題へのコンサルもしてくれる、とても心強い存在である。
闇に秘められたゴーストプロデューサーという職業がどのようなものなのか、このインタビューを通して少しお分りいただけただろうか。
 

EDM Ghost Production

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