もしあなたが音楽ファンであるなら、タイムラインを賑わしているこの名前を目にしているのではないだろうか?

TeddyLoidが1年半振りとなるニュー・アルバム「SILENT PLANET」を完成させた。今だベールに包まれた人物像にも関わらず、なぜこのアルバムに国内を代表する多くのアーティスト達が集っているのか?多くの才能を引きつけてやまないTeddyLoidとは一体どんな人物なのか?

本人に全曲の解説と客演アーティスト参加の経緯を語ってもらった。
 
「SILENT PLANET」の構想は前作の制作途中からありました。

次のアルバムを作るときは絶対にコラボレーション・アルバムにしようと決めていたんです。TeddyLoidのパブリック・イメージはボーカロイドやアニメが強いと思われているかもしれないのですが、ストリート系の音楽を聴いて育ってきたこともあるので、メッセージがあるような作品を作りたかったんです。定番のDJアルバムのようなヴォーカルをフィーチャーするだけではなくて、楽曲1つ1つに意味を持たせるような作り方をしたかったんですね。この人とじゃなきゃ出来ないようなコラボレーションのイメージが出来た人にオファーしました。
 

01. Game Changers with 中田ヤスタカ (CAPSULE)

中田ヤスタカさんに関しては、僕がTeddyLoidを始めた頃にはもう日本でエレクトロ・クラッシュ文化をドンピシャでやってらっしゃって。CAPSULEでの活動はもちろん、Perfumeなどプロデューサーとしても憧れの存在でした。はじめはDJでの共演をキッカケに仲良くさせていただくようになって、今では好きなレトロ・ゲームを一緒に遊ぶ仲になりました。そのことにもかけていますが、世界中の音楽シーンを変えてやる!僕らがゲームをチェンジする!という気持ちを込めて作った曲です。「一緒にやるならド真ん中のEDMをやりたいね。」と言ってくださって作曲していただきました。それを僕が編曲して、詩を書いて歌いました。中田ヤスタカさんは楽曲提供をしたことはあってもコラボレーションという形は初めてとのことでとても光栄です。

02. Searching For You feat. 柴咲コウ

柴咲コウさんとDECO*27さんの3人で2011年に結成したgalaxias!のリユニオンでもあります。柴咲さんの声はとにかく美しくて叙情的で、是非ともアルバムに是非参加してもらいたかったんです。彼女自身がトランスなどの音楽にも詳しくて、ダンス・ミュージックにも精通していることからEDMサウンドにも挑戦してもらいました。キーを上げた勢いのあるヴァージョンも作ったのですが、バラードにさえ聴こえてくるような展開も織り交ぜた「SILENT PLANET」

03. All You Ever Need feat. ☆Taku Takahashi (m-flo)

☆Taku Takahashiさんは、僕がTeddyLoidを始めてすぐの頃。MySpaceで曲を発表した2008年くらいからフックアップしてくれた大恩人です。これまでにも早くからクラブ・シーンに紹介していただいたり、アニメのサントラの共同プロデュースなど色んな仕事をご一緒させていただきました。ある日、偶然にもm-floのデモを聴く機会があって、そこにTakuさんの仮歌が入っていたんですね。伸びやかな声をしていたのが印象的でした。それからライブで歌われている姿を生で観て、絶対にシンガーとしてオファーしようと決めていました。今回はSMAPなどを手掛けるLEO今井さんに書いていただいた歌詞を歌ってもらったんで、完全にシンガーとして参加してもらったんです。ただデータが送られてきたときはクリエイターが作りやすいように何パターンもボーカル素材を送ってくれて、流石プロデューサーだなと思いましたね。

04. Secret feat. 池田智子 from Shiggy Jr. 

女性ヴォーカルも欲しいなと思っていた時期に、Shiggy Jr.さんの「GHOST PARTY」のリミックスをやらせていただいたんです。その作業をしながらこの声が絶対欲しいなと思いました。僕の得意なヴォーカル・カットアップに映える歌声だと確信していたんですよね。普段の話している声も素敵だし可憐なんですよ。生まれもった声の魅力を感じられる人だったので。結果的にポップバンドの彼女にも新しい挑戦になったと言ってもらえたし、フューチャー・フィルター・ハウスといった感じの曲が作れました。

05. Last Teddy Boy feat. HISASHI from GLAY

GLAYのHISASHIさんは、2010年に放映したテレビアニメ「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」で使われた僕の楽曲をチェックしてくださって、Twitterで直接話しかけてくれたんです。それ以来、お互いの趣味の話をしたり親交を深めさせていただいております。この曲は自分のルーツのひとつでもあるロカビリーをオマージュしたロック・テイストのダンス・ミュージックにしたかったのでギターを入れたくて依頼しました。いつも生のギターを入れるときは僕がエフェクトをかけたりエディットするのですが、元からフレーズがカットアップされいたり、クラブミュージック的なアプローチも見せてくれて、ダンス・ミュージックに合わせて全部仕上げてくれたことに感動しました。

06. Break'em all feat. KOHH

僕は日本語ラップも大好きなんです。もはやラッパーの枠には納まらないKOHHくんは現代のリアルを歌ってる人だなと思っていました。弟のLIL KOHHくんのリミックスを手掛けた経緯もあって、今回はデモを聴いてもらうところから始めました。彼はダンス・ミュージックとしてのトラップではなくて、現行ヒップホップのアトランタで流行っているようなトラップ・ミュージックをやりたいと言っていて。さらにデスコアというかなり激しいメタルにも興味を持っていて、これらを融合させられないか?というお題があって、僕にとっても挑戦といえる試みでした。お互いセッションするように制作できたし、他に類をみないようなサウンドに仕上がって未だ興奮が冷めないような感覚すらあります。

07. We Are All Aliens with WRECKING CREW ORCHESTRA

世界的に注目を集めているダンスアーティスト集団、WRECKING CREW ORCHESTRAの電飾コスチュームに身を包んだ「EL SQUAD」のパフォーマンスが本当に刺激的で。これは一度でも観たことがある人なら同意していただけると思います。今回、唯一のインストゥルメンタルですが、彼らがどうやって踊ってくれるかを想像しながら作りました。このコラボレーションは12月から始まる彼らの最新公演を観ていただければ完成します。宮本亜門さんが演出を手掛ける「SUPERLOSERZ (スーパールーザーズ) SAVE THE EARTH 負け犬は世界を救う」のテーマソングになっています。

08. Lion Rebels feat. JUN 4 SHOT from FIRE BALL & N∀OKI, NOBUYA & KAZUOMI from ROTTENGRAFFTY

京都の人気ロックバンドROTTENGRAFFTYさんのリミックスを作らせていただいたのですが、ちょうどその時期に彼らが日本のダンスホール・レゲエを代表するFIRE BALLさんと2マンライブをやるということで、そのジャンルを超えた組み合わせを自分のアルバムでも実現したいと思ったんです。ダブステップの上でラウドロックとレゲエの熱いマイクバトルが実現していることに感動しています。

09. VIBRASKOOL feat. 近田春夫 (Professor Drugstore a.k.a. President BPM) & tofubeats

約20年振りにラッパーとして参加していただいたのは近田春夫さん。父親が聴いていたレコードの帯などを書かれていたのでロックの人だと思っていたのですが、日本語ラップを日本で最初に確立した一人だとお聞きしてヒップホップの師として参加していただきました。その門下生役のtofubeatsくんにもラッパーとして参加してもらってます。彼と僕で近田さんのVIBRASKOOLに入学するも、結局はバトル〜下克上するというイメージで、僕自身もスクラッチやヒューマン・ビートボックスをレコーディングしておふたりとバトルしています。

10. Above The Cloud with 小室哲哉

いわゆるTKサウンド全盛期を知っている世代ではないのですが、もちろん多くの作品を聴かせていただいて尊敬していました。浅倉大介さんが僕の楽曲を小室さんに聴かせていただいていたこともあって、お会いする機会に恵まれて直接オファーできました。曲作りに関しては全部データのやり取りで言葉もないんです。お互いにクラウド上で会話をするっていう感覚で、ここをこうして来たなら、僕はあっちをいじって送り返そうみたいなデータのキャッチボールを何度かやって完成しました。リミックスをまたリミックスしていくような刺激的な体験でしたね。

11. はじらい Like A Girl feat. 志磨遼平 from the dresscodes

志磨さんのthe dresscodesとはレーベルメイトなんです。ライブを観に行く機会があったんですが、もみくちゃでお客さんにダイブするような光景もあって、これまでビデオの世界でしか知らなかった光景を実際に目の当たりにした時にロック・スターをそこに見たんですよね。今回のコラボレーションは曲作りだけはなくて、ライブを一緒にやった時にどうなるんだろう?と頭に描いてるので、これを自分のライブでも一緒に出来たら最高だなと思ったんです。こだわりのあるヴォーカルを上手くダンス・ミュージックにはめてくださったのですが、さらに僕の好きなようにアレンジさせていただけたことも嬉しかったです。

12. Grenade feat. 佐々木彩夏 from ももいろクローバーZ

ももいろクローバーZさんはこれまでも数多くの作品を手掛けてきたので、ダンスホール・レゲエやダブステップ、フューチャーハウスなど新しいアプローチを探していたのですが、"あーりん"こと佐々木彩夏さんにソロで参加したいただくことが決まって、敢えてオーソドックスなバラードを選びました。ライブを観たときに感じていた伸びやかな歌声を素直に生かしたかったんですね。でもトラックも実はドラムをトラップ的に組んでいたり、新しい形のポップソングに仕上がったと思います。爽やかにアルバムを締めくくる曲となりました。これほどまでに全方位系で音楽に精通したアルバムがいまだかつてあったであろうか?それぞれがポーズではなく、TeddyLoidを通して強い意思をもった作品として成立している。時代が生んだ天才の登場に歓喜しよう。最先端の世界水準といえるクオリティをもちながら、日本の音楽を偽りなくレペゼンしているのだから。

(Interview/Text YANATAKE)