フランスの音楽作家・作曲家・出版社協会の Sacem と、ドイツの音楽作家・作曲家・出版社協会 GEMA が実施した、両協会所属会員である15,000人を超えるクリエイターおよびパブリッシャーに対する調査結果によると、生成 AI の台頭により著者とクリエイターの収益の27%が中期的に危険にさらされていると推定されているとのことだ。

この取り組みでは、音楽ビジネスにおける AI の使用に関連する機会と課題についての詳細な分析が提供されており、テクノロジーの急速な進化に直面し、フランス人、ドイツ人クリエイターや出版社が AI の意味を理解するという差し迫ったニーズに応えるために必要なマイルストーンとなる。

生成 AI は、2022年末に突如として登場して以来、目覚ましい成長を遂げてきた。Goldmedia の分析によると、音楽における生成 AI の市場は、2028年までに30億ドル(約4,505億8,350万円)以上に達すると予測されている。

GEMA の CEO である Tobias Holzmüller 博士は以下のように述べている。

著者は、自分の作賓の使用に対する透明性と管理を必要としている。しかし最も重要なことは、彼らが収益の公平な分配を必要としており、その収益は2028年までに生成 AI の分野で10倍に増加するだろう。

上記を踏まえて考えると、クリエイターは、自身の作品が音楽コンテンツを生成するための AI トレーニング・データベースで使用され、それをマーケティングする団体に収益をもたらす場合、公正な報酬を確保すること、そしてストリーミングサービスが AI によって生成された音楽コンテンツにかき消される危険があるデジタル環境において自分の収入を守ること、この2つの問題に直面し、対処していかなければならないとのことだ。

多くの音楽クリエイターにとって、従来の収益は既に生成 AI による圧力にさらされている。
この調査では、著者とクリエイターの収益の27%が中期的に危険にさらされていると推定されているが、これは、Sacem と GEMA の会員にとって、2028年までに累計収益損失27億ユーロ(約4,349億8,948万円)​に相当するとのことだ。
調査対象となったクリエイターたちも同様の懸念を共有しており、71%が AI によって収入が奪われ、将来が脅かされると考えているとのことだ。

SACEM の CEO、Cécile Rap-Veber 氏 は以下のように述べている。

調査結果の数字は、推定損害がクリエイターにとってかなりの額になる可能性があることを示している。オプトアウトの権利を行使することで、クリエイターと AI 企業の間に透明かつ公正な関係を確立したいと考えている。

この調査ではまた、調査対象となったクリエイターの35%が既に仕事で AI を使用していることが明らかとなり、35歳未満ではこの数字が51%にもなる。この調査では、AI の使用が増加しているにも関わらず、64%回答者は、その使用に伴うリスクがメリットを上回ると考えており、音楽業界のクリエイターが AI に対して慎重な考えを持っていることが明らかとなった。

また、音楽クリエイターと出版社の95%が AI ツールを開発する企業に対して透明性の向上を求めており、93%が政策立案者が AI と著作権の課題をより重視することを望んでいる


Cécile Rap-Veber 氏は以下のようにもコメント。

研究の数字は、推定される被害がクリエイターにとって相当なものになる可能性があることを示している。

AI に関する欧州規制の最終決定の一環として、我々はフランスとドイツの政府に対して、生成型 AI 企業に対する効果的な透明性要件の導入に反対しないよう求める。

また、Tobias Holzmüller 博士も以下のようにコメント。

生成 AI は創造的プロセスを変えており、既に多くの音楽クリエイターによってツールとして使用されている。この技術の急速な発展は、莫大な経済的可能性をもたらす。これは、Goldmedia 研究所の結果によって確認されている。作家によって生み出された作品がこの革命の基礎となる。それにも関わらず、多くの音楽クリエイターの観点からすると、これまでのところリスクがチャンスを上回っている。この状況は、関係者全員がこの開発の成功に適切に参加できるような方法で全体的な状況を形成する場合にのみ変わる。クリエイターには透明性と安全性が必要なのだ。