ドイツ・フランクフルト出身のデュオJam & Spoonが、イタリア出身のアーティストAge Of Loveが1990年にリリースしていた「The Age Of Love」をリミックスして、"世界初のトランストラック" を生み出してから四半世紀が過ぎた。ベテランのトランスファンの中には、トランスのルーツは1980年代後半のアシッドやアンビエントだと言う人もいるかもしれないが、間違いなくこのトラックが分水嶺だった。多幸感が得られるビートと壮大なヴィジョンを擁していたこのトラックは、スタジアムサイズのブレイクとヒプノティックなアルペジオの新しい形を作り上げ、英国からゴアに至る世界各地の汗臭いウェアハウスやビーチでトリッピーなアンセムが次々とプレイされるひとつの時代を生み出した。
2000年代初頭になると、トランスはジャーマンテクノのルーツから離れ、量販店の棚に置かれるケバケバしいデザインのコマーシャルなコンピレーションCDに姿を変えていった。元々、トランスサウンドは超エモーショナルなメロディとバラエティ豊かなサウンドパレットが特徴だったが、この頃になると徐々にセンチメンタル化が進み、甘ったるいトラックさえ生み出されるようになっていった。そして、Paul Van Dykが言うところの「トランスをカントリー&ウエスタン以来の最悪の音楽として考えるキッズが生まれた」のだった。
しかし、トランスが "死に絶えた" ことはない。Armin van Buurenのラジオ番組『A State of Trance』は毎週約400万人が聴取しており、TiestoやSashaのようなDJたちは熱狂的な支持者たちが待つ小都市から世界各地のスタジアムまで、様々なヴェニューでプレイしてきた。しかし、トランスサウンドがコマーシャルな方向に進むにつれ、アンダーグラウンドDJたちはこのサウンドをプレイするのを避けるようになり、やがて、トランスはハッピーハードコアやブロステップのような風刺の対象になった。
しかし、2017年頃からこの流れに変化が起きている。定番のRoland JP-8000のSupersawサウンドがサウンドシステムから流れるようになっており、トランスクラシックをプレイするDJの数が増えているばかりか、このオールドスクールサウンドを新解釈したサウンドを生み出すプロデューサーの数も増えている。過去を引用しつつ、そこに現代的な理解を加えているこのムーブメントは、レトロアクティブ(遡及)とレトロスペクティブ(回顧)のコンビネーションと言えるだろう。
レトロスペクトの流れではゴア、レトロアクティブの流れでは、プログレッツシ、ダークサイケが細分化されたトランスの先鋒を担っている。
そんな中でKSKもまたダークサイケにこだわり2017年は「ONDO2 -新年祭-」を皮切りに(同所属のKyanariとともに出演)、自身がオーガナイズするnative Lab.の野外パーティ
「DJ RINANEKO 3h Special set」等に出演し精力的に活動を行った。そして年末は初開催の「華の舞」にGEST DJとして出演。文字通りの火付け役となり、フロアをわかせてくれた。
今回もその力を見込んで、連続出演を依頼。すでに固定ファンのいる彼は、お客さんも一緒にパーティーに呼び込むため、高円寺CAVEの自主開催するPartyなどでもお呼びがかかるほどだ。
最良質なサイケデリック・グルーヴを追い求める漢である彼はNative Lab.の芯を捉えた音を表現する。パーティに内在するすべてのものを"ひとつの遊び心"として捉え、ユニークに未来にドライヴさせてくれる。