5月9日(土)~10日(日) に、千葉県立富津公園にて開催されるRe:birth 2015への出演が決まったEXTRAWELT。1999年にSPIRALLIANZを名乗りSpirit Zoneよりデビューするも、翌年からはMIDIMILIZ名義での活動も始動。また、現在ではX-DREAMでも知られるMarcus C. Maichelのソロプロジェクトとしての認知になっているTHE DELTAの初期メンバーとして在籍していたこともある。今年でキャリア16年目を迎える彼らに来日前のインタビューを敢行した。

90年代のダンスミュージックシーンは、一体感を感じられていたように感じていたけれど、徐々に細分化されバラバラになってしまったように感じるからこそ、僕らの創っている音楽は、これ以上ジャンルが細分化されてしまわない事を願い、ジャンルを隔てずお互いが歩み寄れるようなものを意識している。​

前回MIDIMILIZとして来日した際にも僕がインタビューを担当させてもらったわけですが、その内容を「これまで受けたインタビューの中でベストだ!」と言ってくれたのを覚えています。その時の話題で「新しくEXTRAWELTという名義での活動を準備している」という旨を話してくれたのですが、早いものであれから10年が経とうとしています。以来往々にしてEXTRAWELT名義での活躍が際立っていると思うのですが、現在は他の名義での活動はどのようになっていますか?また、DER INTERPRETという別のプロジェクトも生きていますよね!?あなた方の中ではそれぞれの名義をこの10年の間、どのように使い分けて来たのですか?

EXTRAWELTを始動して以来、僕らのメインプロジェクトという立ち位置になってしまっているのが現状で、MIDIMILIZやSPIRALLIANZに時間を割くことがほとんど出来なくなってしまっているんだ。DER INTERPRETは僕(Arne)とX-DREAMのMarcusで、昨年ようやくスタジオに入る時間をなんとか作ることができた。時間さえ確保できれば、それらのプロジェクトはいずれ再度着手できる様にはなっていくと思う。何れにしても、もはやそれぞれの名義を使い分けているという感覚は無くなってきているんだけれど...。あまり名義にこだわることなく、自由に創造できる様に心がけている。強いて言うならEXTRAWELTのサウンドは他の名義下と比べると若干ゆっくり目のテンポになりがちかな?それは、僕らの制作時の感情や複数の要因が絡み合った末に出来上がった結果、今まで僕らが作ってきたダンスミュージックでは成し得なかった領域を表現することを心がけている。

2人組でトランスからテクノのフィールドに活躍の幅を広げているということで言えば、SON KITE / MINILOGUEとも比較されることが少なくないと思います。特に彼らもあなた方とほぼ同時期にCocoon Recordingsでの活躍によってブレイクした背景もあり、多くの共通点が見つけられます。先日彼らのSON KITE名義でのアルバムリリースと来日ツアーが重なった際も、僕がインタビュアーを担当したのですが、彼らは「聴く側、オーガナイザー等が解りやすいカテゴライズを好むだけであって、活動の名義に自分達からは何の使い分けもない」「当時テクノのフィールドでも活躍をしたかったのだけれど、SON KITE名義のままではトランスのレッテルが付いてしまって2つの名前を使い分けるようになっていった」という話してくれました。あなた方も同様に、このような異なるジャンルへの移行の手段としてEXTRAWELTを名乗るようになっていったのですか?それとも何か別の理由があったのでしょうか?

Border CommunityからのMIDIMILIZのアルバムリリースを考えていた際、アルバム名として考えていたのが『EXTRAWELT』だったんだ。そんな中先行EPをリリースした際、最初にアルバムの世界観として思い描いていたものとは違った作品が出来上がったんだ。で、あればこのまま何か新しいプロジェクトを始めるのもアリなんじゃないか!?と思いついた。その時は具体的に何処のレーベルからリリースしようなどというプランは何も考えていなかった。後にこのような祝福されるべき方向に向かうとは思ってもいなかったし、独自のダイナミクスを持った展開は、意図したものでなく、自然と生まれてきた感覚なんだ。これまでの制作活動の副作用から生まれたような感覚なので「主軸で制作していたプロジェクト無くしては成し得なかった」という意味において、テクノ、トランスというような隔たりや偏見はその時点では考えてもいなかった。そもそも僕らは自分達が創造したいと思うモノを自由に制作している結果が、偏ったジャンルに括られないように望んで活動をしているつもりです。90年代のダンスミュージックシーンは、一体感を感じられていたように感じていたけれど、徐々に細分化されバラバラになってしまったように感じるからこそ、僕らの創っている音楽は、これ以上ジャンルが細分化されてしまわない事を願い、ジャンルを隔てずお互いが歩み寄れるようなものを意識している。そういう意味では、僕らはジャンルによって名義を使い分けるようにしたというよりも、むしろバラバラになりつつあるシーンをもう一度融合したいという思いの方が強いかな?

僕自身もDJをするので、よく感じるのですが、このようにトランスとテクノには永きに渡って見えない壁のようなものが存在しているように感じることがあります。そんな中、今回のあなた方が出演するRe:birth Festivalをはじめとする、トランス系オーガナイザーが主催するイベントは、昨今比較的テクノに限らず、様々なジャンルと融合、共存を試みているように思えますが、逆にテクノフィールドを軸に活躍するオーガナイザーがトランスに歩み寄りを見せている事は、ほぼ皆無のように思います。これは日本だけの現象なのか、世界でも同じように、テクノシーンが抱くトランスアレルギーのようなものは感じますか?またそれはなぜだと思いますか?

こういうジャンルレスなフェスティバルは徐々に増えてきているように感じるし、自分達もそうしたジャンルの壁を越えたフェスに好感を持っています。ポルトガルのBoom Festival、イスラエルのIndigo Festival、アメリカのSymbiosis Gathering、オーストラリアのRainbow Serpent Festival、ドイツのFusion Festivalなど、母体が Psy-Tranceのオーガナイザーは、異なったジャンルを取り入れて新しい風を起こそうとしているように感じます。そしてそうしたムーヴメントは古き良き時代の感覚を取り戻しながら、今まで以上に世界各地で大きくなってきているように感じます。

一方でテクノ系のオーガナイザーが何故ジャンルに対してコンサバティブなのか、理由は解らないけれど、推測するにテクノというジャンルは誕生の時点から物凄く一定の基準のクオリティと完成度を獲得してしまっているシーンだと思う。なので、既に成功しているところから、わざわざ新しいことを試みて失敗してしまうかもしれないリスクを誰も取ろうとしていないんじゃないかな?

テクノ、トランス、ハウス、ブレイクビーツ等のジャンルのルーツは同じ種から派生して、独自の進化を遂げて行く中で、アーティスト、レーベル、プロモーター達が其々に「これだ!」という独自の「音楽的聖杯」を発見したような感覚になった時、他との差別化を図りその聖杯を守ろうとする。そしてそこに音楽業界のプレスやマーケティングが、より多く売れるように誇大な広告を仕掛けているだけに過ぎないんじゃないか?と感じることもある。

ここ数年で最も印象に残っているフェスティバルがあったら教えてください。また、この夏出演予定のフェスなどがあれば教えてください。

先ほどの質問に答えたフェスは全部印象的だし、お勧め出来るよ。それに僕らは世界中様々なフェスに呼んでもらってプレイしてる中で「特にお勧め!」と言うものを選ぶ事ができない。規模の大小には関係なく、小規模だけれども良質のフェスは沢山あるからね...。今年既にプレイしたフェスでいうと、Family Park、Loveland、Sonne Mond & Sterne、Echelon、UAF、Symbiosis Gathering。これから出演予定で楽しみにしているのは Into The Woods、Forte Festival、Baum Festival、Lethargy... 辺りが凄く気になっているよ。

MIDIMILIZを脇に置き、EXTRAWELTとしての活動を中心に過ごした10年から、今回MIDIMILIZ名義でのLiveオファーを受けたわけですが、今後MIDIMILIZとしての活動や、作品作りを再開するような思惑はあるのでしょうか?

MIDIMILIZ名義でのLiveはRe:birthのためだけの今回限りの特別なセットになるんだ。Re:birth以外でのMIDIMILIZとしての活動は今の所考えていないんだ。そして、ジャンルも多彩で様々な要素があるフェスティバルに呼んでもらえて非常に光栄だし、今から楽しみで待ち遠しいよ。出演者も魅力的なラインナップだよね。Mixmaster Morrisは昔からずっとお気に入りのアンビエントDJだし、DJ KRUSHと共演できるなんて、アメージングだよ!

そういえば、Arneおめでとう!最近子供が生まれたばかりだという知らせを聞きました。父親になった事で音楽制作をする上で心境や環境が変わった事はありますか?

ありがとう!変わった事といえば、決定的に物事の優先順位が変化した事だね。なので今まで以上に、何をするにも計画性を重視するようになったよ。これまで以上に時間の使い方を工夫して行かなければならないからね。同時にものすごい幸福感と、誇りを感じる事ができるようになってきた。このチビ助が、今まで僕が創造したどんな音楽よりも最高のリリース作品だね!(笑)

今後は子連れでのフェス参加する事も楽しみの一つですね!?そんな事で言えば、Wayanのご両親は、ドイツの老野外フェスティヴァル「VOOV Experience」のスタッフだった事もあり、幼少からこのシーンを体験していますよね?この25年間で、良い意味でも悪い意味でも変わってしまった事。変わらずに受け継がれているもの、があれば教えて下さい。

そうだね、僕がこのシーンを知るのは早すぎたかもしれない(笑)そしてこの20年間で良くも悪くも、色々な事が変化したと思う。僕らがエレクトリックミュージックに出会った頃は、まだまだ一部の人たちのための「少数派」な音楽だった。一般的に「テクノなんて音楽じゃない!」と思っている人たちが少なくなかった時代...。当時からロックやヒップホップに集まる客層と僕らのシーンが決定的に違っていたのは平和的な人々が多く、エゴイスティックな表層が無かったように感じます。言い換えればロマンチックな人々が多かった。皆それぞれに個性的で違った格好をしていたけれど、ある一定の方向をみんなが目指して、同じ夢に向かっていたように思うんだ。側から見ればクレイジーと思われるような格好をしている人もいれば、ゲイもレズビアンも、若い人たちも、年を重ねた人たちも、皆が同じ空気を平等に同じようにダンスフロアを共有して楽しんでいた、革命とも言える雰囲気がそこには存在していた。

今日ではエレクトリックミュージックは他の音楽ジャンルと同様に成熟し、十分に確立されたと思うんだ。よって大きなお金の流れも関わり始めた。それはサウンドシステム、映像、ライティング等のシステムに資金投資出来、クオリティが向上している事に直結しているので、非常に良い事ではあるけれど、20年前に在った「一体感」というものが置き去りにされてしまっている気もします。例えるなら「お金さえ払えばV.I.P.エリアを使える!」というようなシステムがそうで、勿論そうしたところで散財をしてくれる人がいるからイベントの規模やインフラが向上するのだけれど、明らかにパーティーにとって重要な要素「一体感」が削ぎ落とされてしまった気がします。アート作品も独自の表現を持ったオリジナリティに富んだものを見つけるのが困難になってきているようにも思います。

EXTRAWELTやその他の名義での今後の活動予定があれば教えてください。

つい最近リリースされたばかりの曲Glitterbug - Far Far Light (EXTRAWELT Remix) は、ココでチェック出来るよ。
 

また、今後の活動予定はEXTRAWELT名義でのツアーが中心になっていて、楽曲リリースに関してはEXTRAWELTでのリミックス等も含め以下のタイトルが控えています。是非チェックしてもらえると嬉しいね。

Breaking Bricks EP / on Halo Cyan (plus Remixes by Ulrich Schnauss,Vril, Joey Beltram)
Juno Reactor - Final Frontier (EXTRAWELT Remix)
Landside - Wasteland (EXTRAWELT Remixes)
Stephan Bodzin - Blue Giant (EXTRAWELT Remix)
Pan Pot - Optimistic Gray (EXTRAWELT Remix)

最後に、来日を待ち望んでいる日本のファンへメッセージをお願いします。

Konnichiwa everyone! So so so so so.. neee....僕らの方こそ久しぶりの来日を待ち望んで、日本のみんなに会えるのをとても楽しみにしています!
P.S. 日本に着いたら「焼肉」を食べようかな?それとも「しゃぶしゃぶ」がいいかな?どうしよう自分たちで決められないんだよ! ;)

Interviewer : KOTARO MANABE (WONKAVATOR)

 
Re:birth Festival 2015
2014年5月9日(土)、10日(日) @ 千葉・富津岬
TIME: START 5/9 12:00〜CLOSE 5/10 18:00