「SENSATION」は2000年、オランダのアムステルダム・アレナで誕生したインドアフェスティバル。他のフェスティバルとは一線を画した演出やコンセプトから「世界一美しいフェスティバル」と呼ばれ、現在では33カ国で開催されるほどの人気がある。日本では2015年、「Wicked Wonderland」をテーマに初開催され大きな話題となったが、今年はコンセプトやラインナップを一新し、昨年と同じく幕張メッセ9-11ホールを舞台に舞い戻ってきた。

今回は「SENSATION JAPAN 2016」の魅力、会場が大きく湧いたポイントを余すところなくレポートする。

●会場は前回以上に非日常的・快適にリニューアル

まず会場に足を踏み入れた途端、まるで異世界に飛び込んだかのような非日常的な空間に圧倒される。今回のテーマは「INNERSPACE」というタイトルで、スピリチュアル・精神性をテーマに、会場全体を新たな旅立ちに誘う。会場の天井から吊るされた120個の球体や花びらを模したステージがこのイベントの演出のキーを握っていた。



今回はコンセプトだけでなく会場の「おもてなし」もリニューアルされた。バーカウンター、レストルームを昨年度から大幅に増設し、クリーンスタッフを増員。さらに女性専用のパウダールーム、チルアウトスペースが新設されていた。イベント中、バーカウンターやレストルームに行列ができることはなく、来場者は常に快適な環境でイベントを楽しむことができた。

●会場を熱いパフォーマンスで沸かせた5組のアーティスト

開演時間の22時30分になるとフロアの両脇に設置されたスクリーンに10分間のカウントダウンが表示された。「SENSATION」の各国共通のルールである白のドレスコードに身を包んだオーディエンスたちは開催のアナウンスがあった日からこの日を待ち焦がれていたため、スクリーンに映される数字がゼロに近づくたびに胸が高鳴っていた。そしてカウントダウンがゼロを示した瞬間、火花、レーザー、スモークなどの派手な演出でオーディエンスを「SENSATION」の世界観に飲み込んだ。さあ、「SENSATION TOKYO 2016」の幕開けだ。

MR.WHITE

最初にステージに姿を現したのはMR.WHITE。「SENSATION」の顔として世界各国の開催地を揺らしてきた彼は昨年に引き続き2年連続で「SENSATION JAPAN」に出演。MR.WHITEのセットはShiba San「OKAY (Dave Winnel Mix)」で華やかにスタート。MR.WHITEの登場を待ちわびていたオーディエンスたちは彼の登場を割れんばかりの歓声で迎え入れた。



フロアの中央に設置されたステージは360°回転し、MR.WHITEは会場中のオーディエンスに優しい笑顔を振りまく。軽やかにリズムを取りながら美しく楽曲をつないでいくMR.WHITEはまさに世界一美しいフェスティバル「SENSATION」の象徴と言えるだろう。


 

YAX.X & HiRAPARK

そしてMR.WHITEの後に現れたのはYAX.X & HiRAPARK。昨年のデビューライブを皮切りにPACHAやMYSTERYLANDなどの各国の大型フェスへの出演を行いながら最近はMR.WHITEの右腕的存在として各国の「SENSATION」を沸かしている28歳のYAX.X、そしてまだ19歳ながら高校時代からSNSで圧倒的な人気を誇り、次世代のシーンを牽引していくであろう若手、HiRAPARKが最強タッグを組んだ。これまでに「SENSATION」にアジア人の出演は前例になく、このステージを以って「SENSATION」史上初のアジア人出演者が誕生した。カーニバルハウスやグルーヴハウスなど勢いのあるハウストラックをメインにフロアに突き刺し、オーディエンスは2人の奏でる音楽に心地よく身を委ねていた。



そしてこの日のために作ったアンセムソング「Neon Lights」を初披露。ネット電話で綿密な打ち合わせを繰り返して作り上げられた一曲は幕張メッセのオーディエンスを新境地へと導いた。

2人は初めて顔を合わせてから1日しか経っていないにも関わらず息のあったパフォーマンスで他の出演者たちにも負けないほどの存在感を示した。

STEVE ANGELLO

人気レーベル「SIZE.」のオーナーでありエレクトロシーンの一世を風靡したSWEDISH HOUSE MAFIAの元メンバー、STEVE ANGELOはこの日の要注目アーティスト。

STEVE ANGELLOは
JAPAN ARE YOU READY!?のシャウトとともに登場し、90分に渡るセットを「Rebel Nation」でスタート。それと同時に天井から吊るされた120個の球体が青や白に光り輝き、ミラーボールが会場全体に光を差し、現実のものとは思えない幻想的な空間が生み出された。



STEVE ANGELLOはSWEDISH HOUSE MAFIA時代の楽曲や自身のレーベル「SIZE.」の楽曲、1週間前に来日したばかりのMatt Nashの楽曲など満遍なくプレイ。さらにSWEDISH HOUSE MAFIA時代のチームメイト、Sebastian Ingrossoが手がけた「Reload」でオーディエンスが大合唱し、日本のファンの歌声が幕張メッセに高らかに響いた。この光景には思わず涙腺が緩んでしまったという方が多いだろう。
STEVE ANGELLOの数年ぶりの来日を心待ちにしていたファンたちは彼のステージを心の底から楽しみ、これまでに見たことがないほどの一体感を生み出した。

その後もSTEVE ANGELLOは自身のIDトラックを2曲披露するサプライズでオーディエンスの心をつかんだまま離さず、最後は「Someone Else」でフィニッシュ。

TOM STAAR

エレクトロハウス界に彗星のごとく現れ、相棒の”KRYDER”と並び、 一躍頭角を現し、今、最も旬で最も人気のあるプロデューサーとなったTOM STAAR。世界一ブッキングが難しいDJとも呼ばれた彼は相棒KRYDERとタッグを組んで制作した「Jericho」で登場。前の出番でステージを沸かせたSTEVE ANGELLOのレーベル「SIZE.」からもリリースをしているTOM STAARは自分が手がけた楽曲に加えてJack Ü ft. Bunji Garlinの「Jungle Bae」やValentino Khanの「Deep Down Low」などのフェス定番曲を織り交ぜながら会場にいる全てのオーディエンスを揺らし続ける。



TOM STAARのセットは常に安定感がありながらもストーリー性がある展開をしており、プログレッシブなサウンドからディープなサウンドまで幅広く網羅し、最後は自身のヒット曲「Bora」とSWEDISH HOUSE MAFIA「Save The World」のマッシュアップで気持ち良くステージを後にした。

YELLOW CLAW

オランダが生んだベースミュージックの至宝、YELLOW CLAW。今回のトリを飾るのはこの2人組ユニットだ。彼らはいつも「Untouchable」を一曲目にプレイするのが定番だったが今回はそのルーティンを打ち壊し、「Catch Me」のCandlelight Remixでメロウにスタート。

穏やかな音楽に気持ち良く揺れたかと思いきや、Gregor Salto and Wiwekの「On Your Mark」のイントロが会場に響きわたり、一気に加速を始める。5月に新木場ageHaで初来日を果たし、完璧なまでにフロアを縦横無尽に揺らした彼らには怖いものは何も無い。一曲目から攻め続ける彼らの勢いに押されず、オーディエンスも遠慮なしにハンズアップし、彼らの鳴らす音楽にシンクロしていく。会場の照明や会場に吊るされた120個の球体は赤く照らされ、彼らのキャッチとして掲げる「Blood For Mercy」の世界が「SENSATION」の会場に姿を現した。



その後は「In My Room」や「Shotgun」など自身のヒット曲を続々と撃ち込み、フロアをアナーキーな世界に塗り上げる。
最後はMCの
Everybody!テヲアゲロ!の煽りの後、YELOOW CLOWファンが待ち望んでいた一曲、「Till It Hurts」をプレイ。YELLOW CLAWは温度を下げることなく常に熱いパフォーマンスで走り続けた。



白の洋服に身を包み、会場に集まったオーディエンスたちは5組のアーティストたちのパフォーマンスに文字通り「白熱」し、非日常的で快適な空間を存分に満喫した。来年は誰が出演し、どんな演出が施されるのだろうか。すでに11月にはメキシコ、ドバイでの開催を控えている「SENSATION」がさらなる進化を遂げて日本に戻ってくる日を待とう。



数々のインフルエンサーが来場したSENSATION、写真はこちら