大自然の中で開催される音楽フェスティバルは常に人気だ。都会では味わえない開放感や、森の木々たちがレーザーや色とりどりのライトにサイケデリックに映し出される様子、どれだけ爆音を出しても文句を言われない環境、そしてキャンプ等のアウトドアができたりと、良いところばかりだ。

しかし、その「良いところばかり」というのは、"音楽ファンの人間にとって" だけなのかもしれない。

2020年後半には、新型コロナウイルスのパンデミックの影響による規制によって世界中の殆どのイベントやフェスティバルもキャンセル・延期となっていたが、メキシコ・キンタナロー州のカリブ海沿岸に位置するトゥルム市では通常開催していたという。

トゥルムは、観光地として知られるカンクンから車で2時間ほど南下した場所にあり、フォトジェニックなビーチや遺跡、オシャレなレストランやバー等が多数あり、欧米のセレブやインフルエンサーにも大人気の土地であるとのことだ。

しかし一方で野生生物の専門家が、トゥルムで開催されるイベントやフェスティバルが、地元の生態系に被害を与えているとして警鐘を鳴らしているという。
トゥルムでは、ホテルリゾートの Zamna Tulum 等で頻繁にフェスティバルやパーティーが開催されているようだ。
 

El Colegio de la Frontera Sur の生物多様性保全部門の責任者である Yann Hénau 博士は、キンタナロー州のジャングルで発生している騒音公害が、野生生物種の行動パターンを変化させていると結論づけ、The Yucatan Times に対して以下のように語っている。

自然地域で騒音が発生するという事実は、深刻な影響を及ぼします。はっきりとは言えませんが、鳥や猿など動物種や、他の哺乳類は、自分たちの領土が侵略されると他の場所へ移動しているようです。

これらは、私たちが認識していないが、実際に起きていることで、環境に影響を与えています。それは非常に残念なことです。

専門家の間では、人間の存在に慣れていない野生の在来種が騒音公害により元来の生息地を離れた場合、多くの場合死に至ると考えられているとのことだ。

上記の報告はメキシコのジャングルでの話ではあるが、これは何もメキシコのジャングルに限定された話ではなく、日本を含め世界中の各国でやはり同じようなフェスの騒音によるる生態系への被害がもたらされているものと思われる。それらを防ぐためには、例えばいくら自然の中とはいえ音量に気を使いつつ、指向性スピーカーを使用するなどして、なるべく会場以外へ騒音が漏れないようにするなど、何らかの工夫が必要になってくるだろう。

野外開催のフェスやイベントというと、ゴミ問題がクローズアップされることが多いが、実はそれだけではなく、騒音もまた一つの環境破壊に繋がってしまう可能性があることを忘れてはならないのかもしれない。