現在親露派武装勢力・ドネツク人民共和国対ウクライナ軍による激戦が繰り広げられているウクライナの工業都市「ドネツク」で DJ のキャリアをスタートさせた、Propaganda Records 主宰のウクライナ人 DJ/Producer、Nastia(ナスティア)が、7月29日・30日に開催予定となっている世界最大級のテクノフェス「Awakenings」への出演キャンセルを発表した。
その理由として Nastia は「ウクライナの DJ として、ウクライナでの戦争に寛容なロシア人と同じラインナップでプレイすることはできない」と発表している。

Nastia は昨日、以下の投稿で Awakenings への出演キャンセルを発表した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

NASTIA(@nastia.dj)がシェアした投稿

ウクライナのDJとして、私はウクライナでの戦争に寛容なロシア人と同じラインナップでプレイすることはできない。戦争を戦争と呼べない人。ロシアが私の故郷で行っている犯罪、つまりレイプ、殺害、窃盗、拷問、破壊に気付いていない人。

私は明確な立場のウクライナ市民だ。私の立場は私のビジネスやキャリアよりもはるかに強力で重要なので、戦争が終わるまで最後まで貫く。沈黙または無知の中でロシアを代表することは、そのアイディアとイメージを代表することを意味する。

誇り高きウクライナ人アーティストは、我々と同じ考えを持たないロシア人と同じイベントで一緒に演奏することはできないと心から信じている。それは単純に不快だからだ。

私たちは、あなたが我々に味方しなければならない時代に生きている。今現在、中立というものはあり得ない。あなたが戦争に反対しているならーあなたはあなたが戦争に反対していると言うべきだ。あなたが沈黙している、またはあなたが愚かで音楽を愛しているフリをしているなら、それがあなただ。

全てのアーティストは公人である。全ての公人には責任があり、自分の立場を明確にする必要がある。戦争はまだ終わっておらず、まだその途中にある。ロシアが私から奪った家に本当に帰りたい、だから私は忘れることができない。
多くの方がここで私を本当に理解したりサポートしたりすることは期待していない。コメントで自由に表現して欲しい。

同時に、私はウクライナのための寄付を再開し、Awakenings で稼ぐ予定だった金額は、7月の声明からそこに寄付される。
私の使命と、自由と故郷のために戦う他のウクライナの人々や私を支えたいと思うなら、寄付によってあなたの連帯と支援を示して欲しい。それは違いと変化をもたらすだろう。

ウクライナに栄光あれ。

Nastia の上の投稿の中の "ロシア人" とは、同フェスに出演予定のロシア人テクノDJ/Producer の Nina Kraviz(ニーナ・クラヴィッツ)に向けたものと見られている。Nastia は以前、ロシアのテクノDJ/Producer の Nina Kraviz を SNS上 で以下のように批判していた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

NASTIA(@nastia.dj)がシェアした投稿

Nina Kraviz が彼女の沈黙を「明らかにする」ためにある種のインタビューを準備しているという情報がある。彼女は「両親が危険に晒されていることを怖がっている」と言うだろう。それは責任から逃れようとするロシア人の主な言い訳だ。

Nina はほぼ2ヶ月間、SNS に何も投稿していない。彼女のファンのほとんどは、彼女がロシアで立ち往生していて困っていると思っている。しかし、彼女は現在ベルリンに住み、世界中を旅してビジネスをし、シャンパンを飲み、何も起こっていないふりをしている。

project human-nonhuman があります。左寄りの、ロシアに住むロシアのアーティスト、歌手、俳優、テレビのホストなどが声明を出し、ロシアの侵略とその政府を判断している。右側には、プーチンとウクライナでの戦争を支持する人々がいる。声明を出した人の両親が逮捕された例は一件もない。これは言い訳として使われるかもしれない。公人として声明を出すことは更に可能だ。この場合、政府の違法行為がメディアスペースに持ち込まれやすいからだ。

彼女は公の人であり、そのようなメディアに大きな力を持つ人が2ヶ月間沈黙し、何も起こらなかったかのようにビジネスをしているので、私は彼女に呼びかけている。あなたには、人々があなたに与えた力に対して責任がある。私たちの業界がこのようなケースをどのようにラインナップしているのか理解できない。エレクトロニック・ダンスミュージックの世界のシーンは、なぜ彼女が沈黙しているのかを聴衆に堪えるように彼女に求めないという、その無力さを示している。

さまざまなフェスのラインナップで彼女の名前の発表の下にあるコメントをチェックして欲しいー質問がある人、彼女の立場を知りたがっているファンに対して無礼だ。

音楽は常にセクシズム、人種差別、人権、危険を伴う政治と共にあるー私たちがそれとは何の関係もないと言わないで欲しい。そして、2度とあなたを馬鹿にするこのロシアのポーズをとる人を信じないで。

二つの涙を流して、彼女は二つの涙を流して恐怖を口にする。彼女が必要なときー彼女は自分の権利のために死ぬことができるが、そうでないときー彼女は苦しみをシュミレートする。何かをしない理由を見つけることは、それをする力を見つけることよりも常に簡単だ。

Nina は帝国の出鱈目だらけの親プーチンの愛国者だ。

この Nastia の批判を受け、The Crave、Movement Music Festival、PollerWiesen といったフェスがラインナップから Nina を削除、更に Clone Distribution も Nina と彼女のレーベルである Trip Recordings とのコラボを終了させている。

関連記事
>>オランダの音楽配給会社Clone Distribution、ロシアのテクノDJ、Nina Kraviz(ニーナ・クラビッツ)の親プーチン的姿勢に反発、彼女主宰のレーベルTripとの関係を切ると発表

>>"親プーチン派" であると批判されたロシアのテクノアーティストのNina Kraviz(ニーナ・クラビッツ)本人とTrip Recordingsレーベルマネージャーがそれに対して反論

>>親プーチン派と疑われ世論の怒りを買ったロシアのDJ/Producer Nina Kraviz(ニーナ・クラヴィッツ)、出演予定だった3つのビッグ・フェスティバルのラインナップから外される……


ウクライナ人であり、故郷を支えようと公の発言やウクライナへの支援を続ける Nastia の主張と批判は、実際に自分が被害に遭い、故郷が無残にも蹂躙されている人間として当然のものであるが、果たしてこれが Nina Kraviz や、彼女の肩を持つ人々の心に届くのだろうか……。

なお、Nastia の Instagram には、ロシアがウクライナ侵略を始めて以降、多数のロシア批判の画像や映像とコメントが UP されている。また、Nastia がニュースサイト Skynewsのインタビューに対し、ウクライナ侵略についてを受け答えしている動画も貼られている。

それによると、Nastia は逃げたくなかったが夫に半ば無理やり逃げるように指示され、12時間掛けてドライブし、国境を越えたという。今現在はアムステルダムで娘と共に過ごしており、ウクライナをサポートするためにウクライナの現状を SNS にポストしたり、募金を募ったりして祖国をサポートしているようだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

NASTIA(@nastia.dj)がシェアした投稿


投稿の中には日本のニュースでは流せないような、かなり凄惨でリアルなウクライナの現状を捉えたものもあり、ショックを受ける人もいることだろう。ウクライナの現状を知るためには見る価値がある一方で、メンタル的に落ちている人や何らかの不安を抱えている人は見るのを避けた方が良い場合もあるので、気を付けて欲しい。