億万長者で見ず知らずの他人の命を救ってしまうヒーロー……というと、バットマンやアイアンマンといったアメコミヒーローを彷彿とさせるが、現実にもそんなカッコ良すぎるいい話が起きることもある。

今年4月、ラスベガスにある人気ナイトクラブ「Omnia Nightclub」のパーティーにて、一人の男性が恐らく心臓発作で倒れ、息が止まってしまった。そこに居合わせた男性が、臨機応変に CPR(心肺蘇生法)を行い、この男性の命を繋いだというのだが、その心肺蘇生を行ったのは、Jira、Trello といった日本でも広く普及するプロジェクト管理ソリューションやプログラムを開発するテック企業「Atlassian」の共同創業者で、ビリオネアとしても知られる Scott Farquhar 氏だった。
Scott Farquhar 氏は、同社のカンファレンスのためにラスベガスに滞在中で、オーストラリア・シドニーから飛行機で到着したばかりだったという。


CNBC によると、このカンファレンスの3日前だったこの日、Scott Farquhar 氏は友人と共にラスベガス・ストリップで最も人気があるこの「OMNIA」に遊びに出かけていた。
夜がふけて、Scott Farquhar 氏がトイレに向かったところ、仰向けに倒れている男性に気がついた。ストロボライトと EDM が周囲に鳴り響く中、Scott Farquhar 氏は「その男性が亡くなっているのではないかと思った」という。


「これまでに見た人の中で、一番死んでそうな人だった」とScott Farquhar 氏は CNBC に語っている。

Scott Farquhar 氏は倒れている男性の横に立ち、男性が息をしているか確認したが、男性の呼吸は止まっていた。この男性が幸運だったのは、Scott Farquhar 氏が親切な人物だったことと、Scott Farquhar 氏が10年以上に渡り、オーストラリアでスカウト(ボーイスカウト)として応急処置の授業を受けており、心肺蘇生の専門的な技術を身につけていたことだった。


Scott Farquhar 氏は心肺蘇生を開始した。しかし、途中で Omnia のセキュリティがやって来て、Scott Farquhar 氏に心肺蘇生を止めるように言ったという。Scott Farquhar 氏はそれに反論し「じゃあ、お前がやれよ」と言うと、セキュリティは態度を変えて心肺蘇生を続けるように告げたとのことだ。

通報を受けた医療スタッフが現場に到着する頃には、男性は息を吹き返していた。目を覚まして立ち上がったものの、顔色は青ざめ、呼吸は荒い状態だったとのことだ。
医療スタッフは男性を車椅子に乗せ、外に連れ出した。

Scott Farquhar 氏は以下のように語っている。

スカウトの訓練がなければ、あの人の命を救うことはできなかったと思う。
運が良ければ使う必要はないのだろうが、必要であれば命を救うことができるのだ。

自主性、協調性、社会性、たくましさやリーダーシップなどを育み、自ら率先して幸福な人生を切り開き、社会の発展に貢献する人間となることを目指すのがスカウトだが、まさに Scott Farquhar 氏はそれを体現する人物であると言えるだろう。