「ニューロダイバーシティ」という言葉をご存知だろうか?
ニューロダイバーシティ=神経多様性とは、いわゆる一般的な方法で脳が働く「ニューロマジョリティ(神経学的多数派/神経定型者)」と、ADHD、自閉症、失読症、失計算症等を抱える、いわゆる「発達障害」とカテゴライズされてしまっている「ニューロマイノリティ(神経学的少数派)」の人々がいるが、それらの個々の違いを多様性と捉えて尊重しようという考え方のことだ。

音楽愛好家で、自らもニューロダイバー(※)である DJ Harold Heath(ハロルド・ヒース)が、なぜエレクトロニック・ミュージックシーンにはニューロマイノリティが多いのか、エレクトロニック・ミュージック・シーンがいかにニューロマイノリティな人々にマッチしているのかについてを考察しているので紹介したい。もしかしたら、何か普段の生活で生き辛さを感じている人には新たな方向性が見えるかも?

※ニューロダイバーシティを支持する人のこと。


 

エレクトロニック・ミュージックはニューロマイノリティの特性とマッチする


2022年、世界中のダンスミュージックの利益を保護することを目的に設立された国際産業ロビー団体の「Association For Electronic Music (AFEM)」がエレクトロニック・ミュージックシーンで行った調査結果によると、回答者の58%がなんらかの精神疾患を示し、そのうち38%は臨床的に神経障害を診断されていたとのことだ。
なお、一般的に神経変性疾患の推移有病率は15〜20%であるとのことなので、それと比較してかなりの多さであることは一目瞭然だ。

エレクトロニック・ミュージックの特徴には、ニューロマイノリティの特性との相性が良く、特にドーパミン神経伝達を増加させるエレクトロニック・ミュージックは、ADHD におけるドーパミンの欠如と組み合わさり、ニューロマイノリティにとって魅力的なものであると DJ Harold Heath は述べている。

更に、エレクトロニック・ミュージックの絶え間なく変化する刺激の多い世界観は、ニューロマイノリティによく見られる非線形的な思考スタイルにマッチしている。エレクトロニック・ミュージックのコミュニティは、独創性と革新性を賞賛するが、この2つはニューロマイノリティによく見られる傾向でもあり、過集中の能力は音楽制作や DJ プレイに最適案能力で、多くのニューロマイノリティにとって理想的な追求の場となる。


 

一般的な仕事が苦手なニューロマイノリティにとって、音楽シーンは働きやすい場

ニューロマイノリティにとって、一般的な労働の場は働きづらいと感じられる場合が多いもの。その点、始業時間・就業時間の拘束がなかったり、深夜労働もできたりと、労働の時間に柔軟でオープンマインドな文化を持つエレクトロニック・ミュージック・シーンはニューロマイノリティに適している。また、同シーンは精神安定剤等の薬物の使用に対しても寛容であるため、安心感を得ることができる。

現に、エレクトロニック・ミュージックシーンで活躍するニューロマイノリティ当事者は多い。
臨床心理療法士/ミュージシャン/DJ であるアダム・フィセックは、自身の ADHD と失読症を受け入れており、それが音楽キャリアに有利であることを見出している。また、ADD とADHD を抱えるブランドン・ブロックは、その特性を生かし、 DJ として優れた能力を持ち、それが彼のキャリアを後押ししているとのことだ。自閉症と ADHD を抱えるキャロライン・ザ・DJ は、自身の豊富な音楽ライブラリーはDJ活動に役に立っており、神経発散的思考は、創造的思考と問題解決能力を 高めているとのことだ。そして自閉症の DJ/作家のケイト・ワイルドブラッドは、細部へのこだわりを活かして印象的な音楽コレクションをキュレーションしている。

DJ プレイをすることで癒し効果も!?

DJ は、クリエイティブな場となっているだけではなく、多くの神経疾患を抱える人々にとってセラピーツールとしても役立っているという。ニューロマイノリティにとって、DJ をすることとは、他者と繋がり、本音でコミュニケーションを取り、感情をコントロールすることができるものであるとのことだ。クラブでの大音量の音楽と感覚過多は、逆説的に、感覚障害と闘う人々に安らぎを与えるとのことだ。