05.12 (Sun)
切り裂きジャックは、テレビを見ながらこう言った。
「かつて、俺は怪物だった。現代では、俺は素人に過ぎない。...俺こそが未来なんだ」
1888年、ホワイトチャペルで起きた連続殺人事件のバックに流れていたのは、ヴィクトリア朝のミュージック・ホールの調べだった。そして2013年、時代の混沌を彩るサウンドトラックが、ブラック・ガニオンだ。
インターネットに接続してみよう。ディスプレイ画面に映し出される血生臭い映像の数々は、人間が根本的に破壊と殺戮を愛する生物であることを物語る。アラブ諸国の民衆蜂起(インティファーダ)やルーマニア革命は、自由を求める気高き精神に基づく闘争といわれる。だが、彼らの投げた石は占領者の頭部を砕き、 銃弾は独裁者とその妻を貫いた。”自由”すらも真っ赤に血塗らずにいられない、それが人間の性なのだ。
”スーパー・メタモルフォシス・グラインダー”ことブラック・ガ二オンは、2003年の結成以来、声なき声を轟音と絶叫に変えて、世界にぶつけてきた。泥濘のスラッジは怒濤のグラインドコアへと雪崩れ込み、チルなダブのカッティングはいつしかドゥーム・リフ、そしてケイオティックな混濁へと変異していく。エクストリーム・ミュージックとダブステップの邂逅の最初の成功例のひとつは、彼らがGOTH-TRADとの「METHOD」コラボレーションで成し遂げたものであろう。
ただ、彼らの音楽は単なるジャンルの羅列ではない。ひとつのスタイルに固執しないことで、その真の音楽像が浮き彫りになってくる。聴く側にも、同様のことが言える。ブラック・ガ二オンの音楽に向かいあうには、スタイル化されたモッシュではなく、本能を解き放つことが求められるのだ。彼らのステージは、自由と攻撃性の饗宴という、現代世界の縮図である。
2004年のEP『HAKKYO』、2005年のライヴ作『BLASPHEMY PACK』を経て、彼らは2007年に初のフルレンス・アルバム『FIRST』を発表。続いて2010年にはライヴLP『LIVE AT HUCK FINN “REST IN PEACE... AI”』、アメリカのローダナムとのスプリット作『ULTRASONIC GENERATOR SCHEMATIC』などをリリースする一方で、彼らはブルータル・トゥルース、サンO)))、エレクトリック・ウィザード、オム、カイレッサ、ネイルズ、トータル・ファッキング・ディストラクションなど海外アーティストとの共演も果たしながら、鮮烈なメタモルフォシスを遂げてきた。2013年、バンド結成10年という節目に世に問うのが、本作『SECOND』だ。
テロ、戦乱、暴動と、世界は混迷を深めていく。『SECOND』は、そんな時代を切り取ったドキュメントとして、リアルに迫ってくる。
日常と戦場の境界線は、もはやない。ブラック・ガ二... More Biography
「かつて、俺は怪物だった。現代では、俺は素人に過ぎない。...俺こそが未来なんだ」
1888年、ホワイトチャペルで起きた連続殺人事件のバックに流れていたのは、ヴィクトリア朝のミュージック・ホールの調べだった。そして2013年、時代の混沌を彩るサウンドトラックが、ブラック・ガニオンだ。
インターネットに接続してみよう。ディスプレイ画面に映し出される血生臭い映像の数々は、人間が根本的に破壊と殺戮を愛する生物であることを物語る。アラブ諸国の民衆蜂起(インティファーダ)やルーマニア革命は、自由を求める気高き精神に基づく闘争といわれる。だが、彼らの投げた石は占領者の頭部を砕き、 銃弾は独裁者とその妻を貫いた。”自由”すらも真っ赤に血塗らずにいられない、それが人間の性なのだ。
”スーパー・メタモルフォシス・グラインダー”ことブラック・ガ二オンは、2003年の結成以来、声なき声を轟音と絶叫に変えて、世界にぶつけてきた。泥濘のスラッジは怒濤のグラインドコアへと雪崩れ込み、チルなダブのカッティングはいつしかドゥーム・リフ、そしてケイオティックな混濁へと変異していく。エクストリーム・ミュージックとダブステップの邂逅の最初の成功例のひとつは、彼らがGOTH-TRADとの「METHOD」コラボレーションで成し遂げたものであろう。
ただ、彼らの音楽は単なるジャンルの羅列ではない。ひとつのスタイルに固執しないことで、その真の音楽像が浮き彫りになってくる。聴く側にも、同様のことが言える。ブラック・ガ二オンの音楽に向かいあうには、スタイル化されたモッシュではなく、本能を解き放つことが求められるのだ。彼らのステージは、自由と攻撃性の饗宴という、現代世界の縮図である。
2004年のEP『HAKKYO』、2005年のライヴ作『BLASPHEMY PACK』を経て、彼らは2007年に初のフルレンス・アルバム『FIRST』を発表。続いて2010年にはライヴLP『LIVE AT HUCK FINN “REST IN PEACE... AI”』、アメリカのローダナムとのスプリット作『ULTRASONIC GENERATOR SCHEMATIC』などをリリースする一方で、彼らはブルータル・トゥルース、サンO)))、エレクトリック・ウィザード、オム、カイレッサ、ネイルズ、トータル・ファッキング・ディストラクションなど海外アーティストとの共演も果たしながら、鮮烈なメタモルフォシスを遂げてきた。2013年、バンド結成10年という節目に世に問うのが、本作『SECOND』だ。
テロ、戦乱、暴動と、世界は混迷を深めていく。『SECOND』は、そんな時代を切り取ったドキュメントとして、リアルに迫ってくる。
日常と戦場の境界線は、もはやない。ブラック・ガ二... More Biography