
確固たる表現力、そして唯一無、これがSteve Bicknellのアーティスティックなダンスフロアを表現するにふさわしいだろう。Steveといえばエレクトロニックミュージックの先駆者であり代名詞である。模倣ではなく革新、量ではなく質を求め、世界で最も先進的な考えを一貫してきた彼は、革新的な夜の創造者として世界中から尊敬されて止まない。彼の主催するパーティ“LOST”は、クラバーやDJ、アーティストやプロデューサーの新世代を定義し、彼らの活躍をより一層を奮い立たせる大きなきっかけなった。LOST共催者としてSheree Rashitと共に、Jeff MillsやBasic Channel、DJ Roland, DJ Rush,Fumiya Tanaka, Richie Hawtin, Dan Bell, Suburban Knight, DJ Funk、Robert Hoodなど後世の著名人を次々に招致した。これもまたSteve独自のビジョンや感性に基づくものだった。世界的に先見の明がある彼らのUK進出を促し、米国への進出へとつながっていくことになる。彼らのこうした背景には、Derric May、Kevin Saunderson、Juan Artkinsm Francois Kevorkian、Laurent Garnierらと
のゆるぎない結びつきがあったということを忘れてはならない。
UKダンスシーン初期のベテランDJとなったSteveは、LOSTの開催運営にとどまらず、UKクラブカルチャーの歴史の中で数々のイベントへ参加する幸運と実力を備えていたこともまた事実である。当時画期的であったEnergyでの彼の成功は、Fabio&Grooveriderと並んでレジデントとしての地位を絶頂へと導くことになった。Wag, Solaris, Brainといった新鋭機新のクラブでレジデントとして活躍しているさなかに行った1990年のワールドツアーは、1980年代後半から1990年代初頭にかけてのロンドンの音と夜を形成していった。このDJ活動での功績が実り、Paul Oakenfold主催のレーベルPerfectoからついに彼の初リリース作品を世に発信することになる。人々はこの彼の躍進をかいま見、今後のSteveの方向性はビジネスライクなものになるだろうと予測していた。確かに彼の前には音楽ビジネスへの扉が開いていたが、あえて目前に拓けた道ではなく彼は彼の信念を揺るがすことなくエレクトロミュージックに集中することを選んだのだ。正真正銘の国際的なDJとなったSteve Bicknellは世界中を回り、
ヨーロッパや日本、オーストラリア、北米の世界各国でその唯一無人のプレイを惜しげなく披露し、オーディエンスを虜にしていった。Ostgut,Tresor, The Rex, Liquid Rooms, Rockets, Precious Hall, Sonar Festival, Zouk,Tribal Gathering, The End, Bugged Out, Slam, Pure, La Real, Octopus, Family Club, Traffic, Bergheim,Plastic People...Steveが訪れたクラブはこれほどまでに挙げてもまだほんの一部でしかない。表立って知られてはいないが、独自のサウンドスケープを創り出し人々の先入観払拭に挑むため、Steveはより一層の深みを追求するという音楽へ向き合う姿勢を通してその独自の音楽性を表現すること好み、世界中でその感性をオーディエンスと共に分かち合ってきた。
LOSTは進化を続け、変幻自在の夜を創造することによって彼のセットもまた多様な変化に富むものへと変わっていくことになる。SteveとShereeは、Burundiと呼ばれるTribalリズムを創り出し、Chiaroscuroと呼ばれるエクスペリメンタルな夜はSteveのリリースやDJプレイを通じて世界的に認められていった。ミニマルテクノとして知られているミュージックにも、この実験的な音楽性と実は深い親和性がある。テクノやシカゴハウスセット以外にも、Steveは"Spacebas”を主催しロンドン近郊で断続的に開催され、その後彼は、warehouse、Disco house、Techno、Electro、Broken beats、Dub Reggae、Dub Stepを次々とフィーチャーリングして新たしいセットを創作していくことになるが、これは"彼のイマジネーションのほんの一角"にしかすぎなかった。そうして、イタリアンハウスとはまた別の頭角をあらわす"Cosmic-desco-tech"がLOSTに新たに加わり、深くそしてどこか暖かみを感じるこのCosmic-disco-techは2010年にリリースされた。
1990年代初頭PerfectoとMuteからLOSTとして界隈に名を馳せたことをきかっけに、1993年、SteveとSheree共催のCosmic Recordsからリリースされた限定版EP以降、Steveの音楽性は大きく前進することになる。彼の創作する数々の作品とその多様多彩な感性を伴い、今日においてもCosmic Recordingsは世界のエレクトロミュージックの最前線に立ち続けている。Cosmicファミリー内には他に、SteveのS.B.Projectやシカゴを拠点とするDJ FunkやDJ RushなどとフィーチャーしたEPなどがある。LOST Recordings、そしてそのLOST独自のダンスフロアを反映するために製作される音楽は、Cosmic/LOSTと近い親和性を持つ著名なプロデューサーたちと共に多種多様な装いを纏いながら日々創り上げられている。Cosmicは、African Tribalismや厚みのある音、変抽象的なデトロイト、シカゴ、ヨーロッパ内外で注目されている視点の3つの要素を跨ぎ、UKシーンの革新を常に提案しているがLOST Recordingsはベース、リズム、情熱のすべてを包括的に提供している。musique concrete・batacudaからKraftwerk
・James Brownに至るまで、LOST Recordingsはアートとダンスが階層の次元で融合するまさにアートスピリッツが息づく場所と言えるだろう。Steveは、Luke Slater、Joey Beltram、Richie HawtinのPlasticman、DJ Rush、the Advent、Percy X、Hawchkaなどの数々のレーベルにも参加し、リミックスや制作活動に貢献している。彼の活動はとどまることを知らず、芸術評議会劇場プロジェクトや作品へもサウンドトラックを提供している。そして、LOST Recordingsのオリジナルスタジオサウンドに再構築・復刻した"Why? And For whom?" デジタル・フォーマット版のリリースによって、Cosmic・Clubtracks・ID(entity)・LOST Recordingsのリマスタリングを完遂することになる。今年リリース予定の新プロジェクト"Granell"も始動し、これほどまでに音楽の壁をプッシュし続け、シーンの形成に貢献している人は少ないであろう。
歴史は、Steve Bicknellは"Techno"あるいは"Acid House"DJとするかもしれない。しかし今こそ彼の活動の別の一面としてSpacebaseとCosmic-disco-techを介して世界へ発信されたスタイルを取り込む絶好の機会であり、これからも人々の探検心を掻き立て魅了することを止まないであろう。
www.lost.co.uk
steve bicknell

