9月22日〜10月12日(金)まで、約1ヶ月にわたって開催される RED BULL 主催の都市型フェス「RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2018」。多種多様なジャンルのアーティストたちが、趣向を凝らしたステージやテーマを軸としたライブ、ちょっと変わった視点からの演出等で音楽シーンを盛り上げる、革新的な音楽フェスである。

10月3日は、株式会社ライゾマティクス取締役にして、アーティストであり、プログラマー、デザイナー、映像作家、更にVJ、DJとして、日本のアートシーン、ミュージックシーンの最前線で活躍する真鍋 大度(まなべ だいと)が、彼の活動や人生観、思想などについてを語るトークショー「A CONVERSATION WITH DAITO MANABE」が開催された。


会場は、渋谷区にあるコスモプラネタリウム渋谷。トークショーが始まるまでは、プラネタリウムのドーム横のスペースにてレッドブルを使ったカクテルが提供された。ライブハウスやイベントスペースとはまた違い、凛とした静寂が支配するプラネタリウム施設の落ち着いた雰囲気の中で、人々はレッドブルカクテルを片手に会話を楽しんで開演までの時間を潰していた。


ドーム内には、入り口のすぐ脇に赤いソファ、機材やPC、マイクが置かれたテーブル、そしてソファの後ろに大きな木製のレッドブルのロゴが設置されていた。着席すると、仄暗いドームの天井には渋谷のビル群の空の写真が投影され、トークショーへの期待を膨らませた人々は黙ってただそれを見上げていた。
ドーム内の照度がフッと明るくなり、トークショーがスタート。音楽ライターの原 雅明が司会を務め、真鍋のトークを牽引した。


まずは、真鍋の子どもの頃の写真から始まり、成長過程が説明とともに次々とドームの天井に映し出されていく。両親がミュージシャンという音楽一家に育った真鍋は、もともと音楽との関わりが強い人生を送っており、10代の後半は大学で数学を学ぶかたわら、 Hip Hop の DJ をしていたという。​


サラリーマン時代を経た後、岐阜にある IAMAS(国際情報芸術アカデミー)に入学。そこでメディアアートを勉強した真鍋は、音楽とテクノロジーを融合させた作品を多数制作。

「家を丸ごと揺らしてスピーカー化させた作品は、最後には(騒音で)警察がやって来て終了した」

「周波数を変えて何分聞かせると瞬きが止まらなくなるとか、そういうことに興味があった」

等、天才ならではのトンデモ話も飛び出しつつ、真鍋氏は当時の制作物を映像とトークで紹介。


また、真鍋が没頭していた筋電センサーを使用しての作品についてや、やくしまるえつこや野田洋次郎等、Parfume、NOSAJ THING、OK Go等のアーティストに提供した作品や制作を担当したMV についての話題にも及んだ。

真鍋は来場者からの質問にも丁寧に答え、ドームという狭い会場内で、来場者と真鍋との距離感の近さを感じさせた。


若かりし日に Hip Hop DJをしていたときの話では

「音楽でお金をうまく稼げなかったのでサラリーマンになった」


IAMAS 時の話でも

「マネタイズは得意ではない、お金を作るのと作品を作ることは全く違う」


と語った真鍋が作品と向き合う姿勢からは、真鍋が骨の髄までアーティストであり、そして常に時代の先を追い求める研究者でもあることが伺い知れた気がした。


現在では、京都大学の研究者である神谷之康と共に脳活動データから音や映像が自然生成されるようなプロジェクトを進めている、という真鍋。これからも、日本のオルタナティブでエクスペリメンタルな先端的ミュージックシーンとは切っても切り離せない、真鍋 大度という天才アーティストの行く末が気になるところである。

Photos by Yasuharu Sasaki / Red Bull Music Festival Tokyo 2018
Written by きのや

 

A CONVERSATION WITH DAITO MANABE

日時:2018年10月3日(水)
会場:コスモプラネタリウム渋谷 東京都渋谷区桜丘町23-21
出演:真鍋大度、原 雅明(司会)