2002年にリリースしたセカンドアルバム『Dutty Rock』からのシングル「Get Busy」で、ジャマイカ出身アーティストのジャマイカ録音の作品としては史上初の全米1位に輝き、グラミー賞の最優秀レゲエ・アルバムを受賞。2005年にリリースされたアルバム『TRINITY』からの「Temperature」がダブル・プラチナ、全米1位のメガ・ヒットとなり、ジャンルを超えた世界的スーパー・スターとなった “ダンスホール・レゲエ界の帝王” Sean Paul(ショーン・ポール)

今まで Beyonce(ビヨンセ)、Rihanna(リアーナ)などの作品にも参加し、SIA(シーア)や、Dua Lipa(デュア・リパ)、MIGOS(ミーゴス)ともコラボレーションしてきた Sean Paul が “ラテン音楽界のスーパースター” J. Balvin(J. バルヴィン)をゲストに迎えた新曲「Contra La Pared」3月14日にリリースした。
 

ジャマイカ出身のショーンとコロンビア出身の J. バルヴィンという、カリブ海の2大スターによる夢のような競演が実現したこの曲の、コンセプトや MV の撮影エピソード、さらには音楽の取り組み方や、今後のことまで深く掘り下げてインタビューを敢行した。
 

新曲「Contra La Pared」について

Q:新曲「Contra La Pared」(英語での意味はAgainst The Wall)のリリースおめでとうございます! 発音があってたかわからないのですが。

俺もスペイン語はネイティブレベルじゃないから、発音に苦労するんだけど、舌を巻いてこうやって発音するんだ。“Contra La Pared”、って。

Q:J.バルヴィンと共演したかなり “男っぽい” 曲ですね?

う〜ん、そうかな。でもヒットしそうなトラックだなって思った。J.バルヴィンと以前一緒にやった曲に似てたし、とにかくフック(サビ)をスペイン語にしたいなって思ったんだ。ラテン系のファン層はすごく俺をサポートしてくれてて、これまでもがっつりラブ&リスペクトを示してくれてきた。だから2000年代初期から「Punkie」のスペイン語カバーやったり、「Hold My Hand」のスペイン語カバーやったりもしたし、ウィシン & ヤンデルのウィシンとかエンリケ・イグレシアス、Gente de Zona なんかともコラボしたことがある。
J.バルヴィンとも、もう以前にコラボしたことあるんだけど、さっきも言った通り、このトラックはとにかく彼に似合う曲だなって思ったんだ。何にしたって、男っぽいメジャーな “野郎” が2人でやった曲だからね。だからそういう印象を受けたのかもな。納得だろ。


Q:ジャマイカを代表するあなたと、コロンビアを代表するJ.バルヴィンという、“カリブ海” の2大スターの共演で話題となっていますが、彼とは以前から親交があったのですか?

J.バルヴィンと最初に出会ったのは、Farruko(ファルコ)のアルバムリリースでだった。Farruko はプエルトリコ出身のレゲトンアーティストなんだけどさ、俺ら、それぞれ Farruko と仕事したことがあったから、彼が一緒にパフォーマンスしようって声かけてくれたんだよ。J.バルヴィンは俺のこと知ってたけど、俺はまだ彼のこと知らなかった。もう何年も前のことさ。2012年ぐらいか、その少し後だったかな。
実際、ピザだかホットドッグ買おうと思って列に並んでる時だったらしい(笑)。俺が列に並んでるところに「なあ、ソレいくらすんの⁈」って大声出してたんだけど、って、後から教えてくれたよ。「あ、アレ、お前だったのか?」って、リスペクトした。だからまあ、その時に会ったんだけど、正式に彼の音楽を紹介してくれたのはジャマイカ人プロデューサーの Rvssian(ロシアン)だった。「ロシアン」って、彼の名前な。それで連絡を取り始めたのと、彼も俺も Major Lazer(メジャー・レイザー)と仲良くて、俺ら用にトラックをプロデュースしてくれたんだよね。もう2年ぐらい前だったかな。彼らの、いや、J.バルヴィンのアルバムに収録されたんだったと思う。
で、今回の曲のデモが出来た時、すぐに彼に提案したんだ。これは、彼以外に考えられなかったからさ。
 

Q:彼のとっさの反応はどんな感じでしたか?

炎の絵文字、連発してきた!ファイヤー、ファイヤー、ファイヤーって(笑)。(注:ファイヤーは良い意味の“ヤバい”という意味で使われる)

Q:J.バルヴィンはラテン、というか “レゲトン” を代表するアーティストですが、“レゲエ” を代表するあなたにとって“ レゲエ” と “レゲトン” はどのような関係なのでしょうか?

レゲエは数多く様々な影響を受けてカタチになった音楽なんだ。俺らの島のモットーは、「たくさんの人種から成る一つの国民」っていうぐらい、小さな島でもたくさんの人がいて、世界のいろんな所から大きな影響を受けてきた。だから、それが音楽にも表れてる。
レゲエにはいくつか種類があって、まず一つ目はメント。これは、俺の耳にはソカにちょっと似て聴こえる。それがロックステディに発展して、それがレゲエへと発展していったんだ。そして、レゲエは世界で最も有名なジャマイカの音楽として知られるようになる。偉大なボブ・マーリーもそのジャンル自体の顔になってるよね。で、レゲエがそうやって大ヒットすると、ジャマイカでは他のコトをやるようになった。それがダンスホールさ。この音楽が聞ける場所にちなんでこう呼ばれるようになったんだ。レゲエとダンスホールはすごく親しい関連性があるわけさ。

俺は、“レゲエが親父、ダンスホールが息子” だって思ってる。レゲトンはもう一人の息子かな。アフロビートやソカもだね、最近は。15年ぐらい前のアフロビートを聴いてみると、今のサウンドとは全く違う。俺らがダンスホールとしてやってきたことが、年々と影響してるんだろうな、って俺は考えてる。
トリニダードのカーニバル音楽であるソカも、この15年ぐらいで、すごく俺らみたいなサウンドになってきた。以前と比べると、歌う代わりにもっとラップを入れるようになってるし。カリブの、ちょっと訛りのある英語使ってね。今こうやって挙げたジャンルはどれも、お互いすごく近い存在だと思うよ。
アフリカやら、ヨーロッパやら、いろんな所から受けた影響をブレンドしていくうちに、段々と似たサウンドになってきたんじゃないかな。もちろん、まず最初にレゲエがダンスホールへと変化して、ダンスホールがポップシーンで人気を博して、2000年代初期にレゲトンが聴けるようになって、っていう40年ぐらいに渡る話をしてるわけだけど。いろんなタイプのアーティストが登場して、今度は彼らがいろんな人にインスピレーションを与えて、さっき言ったみたいに、ソカやアフロビートが似てきたっていう。スゲえなって思うね。

ただ、その俺らの貢献がちゃんと認められてないって一面もある。海外のアーティストや有名なポップスターなんかが、ダンスホールっぽい曲やってても、「これは僕のダンスホール・アルバムです」とか「これは私のダンスホール・シングルです」なんてことは言ったりしない。例えば俺がいきなりカントリー & ウェスタンやることにしたら、俺だったら「これは俺の新作アルバムだ」なんて表現はしない。「これは俺のカントリー & ウェスタンアルバムだ」って言うさ。すでにしっかり確立されたジャンルだから、ウィリー・ネルソンやドリー・パートンみたいな人たちに対してのリスペクトを忘れるわけにはいかないからね。でもポップ・アーティストはさ……。だから、当然の敬意ってのが得られてないことが多い、って俺は言ってるんだ。誰のせいだ、なんては思ってない。これは単に俺らがすごい人気になった結果だと思ってる。でもだから、歴史の話をしたくなる。長くなっちゃったけど、俺らがどこから来たのか、っていうのを伝えたいんだ。ボブ・マーリーが国民的ヒーローとされている、ジャマイカ育ちの俺から見た歴史をさ。彼は、俺らのために高速道路を築いてくれた人だしね。

Q:サウンド的には、今回どのようなコンセプトだったのでしょうか?

(プロデューサーの)タイニーと仕事がしたかったんだ。彼はレゲトン界のトップ・プロデューサーの1人なんだけど、その理由はやっぱりラテン系のファン層にアピールしたかった、っていうのと、J.バルヴィンとまたコラボしたかったから。タイニーとは1、2曲試したんだけど、このトラックがガツンときたんだよね、俺には。彼が入れた“プ・プ・プー・ププ・プー”っていうフルートかなんかの音が、1年ぐらい前に J. バルヴィンがやった「Mi Gente」って曲を彷彿とさせたんだ。あれはホーンをたっぷり使ってた。いい感じだな、って思ってさ。だからサウンド的には、そうだね、ああいう方向を狙ってた。
 

Q:ちなみにラテン系のあなたのファン層はどんな人たちですか?

彼らはもう長いこと俺のことを応援してくれてきた人たちさ。俺の音楽がジャマイカの外でよくかかるようになったのが1999年ぐらいなんだけど、アメリカにもしょっちゅう呼ばれるようになったんだ。すぐニューヨークのクラブでもライブする機会が増えたんだけど、行ってみたら「ダンスホール系の人なんていないじゃないか!」なんてこともあったよ。ラテン系のオーディエンスが多いハコなんかは、他のダンスホール・アーティストだったら無理だったかもしれない、なんて思うこともある。それで「もっと彼らにもアピールしてみよう」って思ったんだ。

ニューヨークだと一晩にクラブ4軒回ることもあった。ラテン系2軒、カリブ系2軒。それで「このギャップを縮められるように努力してみよう」って思って、意識的にアプローチするようになったんだ。俺は、日本のサウンドとか、フランスのサウンドとか、外国の音を聴く時は、いつも何言ってるか知りたい。その曲にもっと近づけると思うから。だから、自分の曲もスペイン語に直せば、あのファン層にももっと身近に感じてもらえるかな、って考えたんだよね。

Q:この曲のミュージック・ビデオはどこで撮影したのですか?

スゴいだろ? あれは、米・ユタ州で撮影したんだ。ほぼほぼ J.バルヴィンのアイデアだよ。ヤツはあそこによく行ってるらしくてね。彼が「あのさ、あそこでやろうぜ」って提案してきた時の俺の反応は、「は?なんでだよ」って感じだったんだよね。「お前はコロンビア出身で、俺はジャマイカの出身なんだから、それを見せるのがいいんじゃないか?」って俺が言ったらさ、「見せるよ」って写真2枚送ってきたんだ。1枚目見ただけで「おっ」ってすぐ反応したよ。ビッグなサウンドに似合うスケールの大きさが目に入ってきたから。

俺もユタ州は行ったことあったけど、だいたい夜中ツアーバスで到着してパフォーマンスして、すぐ出発してたから、州のあのエリアは見たことなくてさ。撮影日はめちゃくちゃ寒かった。俺、グーグルであの辺リサーチして、どんな野生動物がいるか見てたんだ。クーガーでもいるかなと思ったけど、全然いなかった(笑)。恐竜の骨とかメガロドンの歯とか見つかることもあるらしい。うっかりメガロドンの歯につまづいたりしないかな、なんても思ったけど、それもなかった(笑)。それでも素晴らしい体験だったよ。ハマる人がいるのもわかる。本当に美しいから。


Q:撮影中のエピソードはありますか?

ああ! J.バルヴィンがウォーターポロ(水球)やるってことを知った! 俺もウォーターポロするから。最近またトレーニングを始めたところさ。去年の夏から、かな。「どうやって体型保ってるんだ」って聞くから「ウォーターポロやってるんだ」って答えたら、「おお、ポロ・アクアティコ!」って(笑)。最初信じなかったけど、彼がジェスチャーを見せたんだ。ウォーターポロ独特のハンドシグナルがあるからさ。で、「あ、お前もやるの?」って盛り上がった。

Q:すぐできる場所がなくて残念でしたね。

あの寒さじゃ、特にね!
 

最近の活動について

Q:今年1月にリリースした「Shot&Wine」は割とストレートなレゲエ・チューンでステフロンドンと再び共演したナンバーでしたが、レゲエをベースに様々なタイプの曲に挑戦してきたあなたが、今目指しているのはどんな音楽でしょうか?
 

俺はアルバムベースで考えるタイプのアーティストなんだ。アルバムって、そのアーティストのそれまでの2年間と、次の2年間を定義付けるものだと思うんだよね。デカいアルバムの場合はそれ以上かもしれない。俺はそういう考え方をしてる。でも、「Baby Shark」みたいな曲がチャート入りしてるのなんかを見てると、「いや、アルバムばっかりガンガン押しても意味がないか」って思うわけさ。世界中でみんながシングルばっかり色々リリースしてるのにも気づいてる。

ダンスミュージックだろうと何だろうと。プロデューサーもラジオでかかるような曲やってるし、他のアーティストもそうさ。だから俺もクリエイティブ面での競争としてそこに参加するかは自分次第だし、自分に携わったツールだってスマートに活用しなきゃいけない。だから今はシングルに集中してるんだけど、シングルは毎回同じサウンドであってはいけないと思ってる。だからいろんな方向性で色々やってる。今も結構な数の人と仕事してるけど、みんなフレーバーは違うよ。

思いっきりダンスホールなのもあれば、ポップ・フレーバーなのもあるし、R&B フレーバーのもあるし、今回だったらラテン風だし。今目指してるのは、とにかくみんなの耳に届く曲を作ることさ。本気で。「Baby Shark」みたいな曲と、まさかビルボードチャートで競い合うことになるとは、きっと誰も思ってなかっただろ。これも、最近はみんないろんなモノに気を取られて、すべて手元でアクセスしてるんだ、ってことなんだなって思う。だから、自分の音楽のリリースの仕方についても、もっとスマートにやらなきゃいけないわけさ。
 

Q:昨年リリースした EP『Mad Love:The Prequel』ではデュア・リパ、エリー・ゴールディング、ミーゴス、ジャネイ・アイコ、デヴィッド・ゲッタ等、バラエティに富むアーティストとコラボレーションしていますが、あなたがコラボ相手を決めるのには、どんな点を重視していますか?

まずはサウンドから始まるんだ。それまで作品も知らなかったアーティストやグループに紹介されることもあるけど、曲を聴いて気に入れば「よし、やろう」ってなる。断ったケースもたくさんある。理由はだいたい、特にトラックに惹かれなかったとか、似たような曲をもうやったことがあって、そっちを盛り上げたいから、とか。コラボするかしないかの決断には他にも様々な条件が出てくるけど、まず大事なのはトラック。

それと、自分でやってていい曲ができるかどうか。「Mad Love」も、5回作り直したんだ。デヴィッド・ゲッタが「ん〜、もう1回やってみよう」って言ってさ。俺もそれは気にならない。音楽に関しては、俺が常に最終決断権を握ってる必要はないからね。もちろん自分の好きなこと、やりたいよ。でも同時に、他の人にも自分のやってる音楽を楽しんでもらいたいと思ってるわけだからさ。やり方がわからないとか、自分が慣れてない雰囲気の作品だったら、プロデューサーでも、他のアーティストでも、人に教わればいい、って思ってる。俺、コラボは本当に好きなんだ。ファンを繋げてくれるし、いろんな人を繋げてくれるし、アーティストとしての自分の考え方を成長させてくれると思うから。
 

Q:コラボのオファーが来ることはしょっちゅうだと思いますが、今でも自分から他のアーティストにアプローチすることもあるのですか?

当然さ! J.バルヴィンは、Major Lazer とやった前回の曲では俺に声掛けてくれた立場だけど、今回は彼の声が似合うって思って……ビジュアルまではまだ見えてなかったけど、さっき話した言ってたみたいに、業界のヘビーウェイト級の野郎2人で、って思って……(自分から声を掛けた)。でも「No Light」って曲では、あのフックを書いた時、あれを歌ってくれたのはエミリーって女の子なんだけど、彼女はよく人のデモ歌ってるんだよな。でも、俺からしたら、彼女はすごいいい声してると思うんだ。「この曲で彼女以上のことできるシンガーはいないだろ!」って思ったんだよな。

それと、誰かがデュア・リパの曲を聴かせてくれて、「彼女も素晴らしい声してるな!」って感動してたら、マネージャーが「じゃあこの曲やってもらったら?」って言ってくれてさ。「うん、いいね」って実現したわけさ。実際、素晴らしい出来だったよ、彼女。あと例えば、「Mad Love」では本当はシャキーラを狙ってたんだよな。でもなんか規制があって、リリックは提供してくれたんだけど、実際に歌うことはできないってことになってさ。だから「じゃあ周りの仲間に誰かいるかな」って考えて、「あ、ベッキー・G で行ってみよう」ってことになったんだ。彼女は、周りのプロデューサーから、彼女が小さい時から推されてて、俺もその成長を見てきたんでね。「じゃあ、まあやってみようか」ってコラボすることになったわけさ。これまでにも、ほとんど無名のアーティストを取り上げたこともあるからね、俺。

「Got To Love You」はアレクシス・ジョーダンをフィーチャーしてるけど、あの当時、彼女は俺ほど知られてなかっただろ。『Dutty Rock』に収録されてる「I’m Still in Love」もだね。サーシャは、ダンスホール界では1、2曲ヒットさせてたけど、やっぱり俺ほどは知られてなかった。だから、別に、有名であることは条件じゃないんだ。やっぱりサウンドだよ。うん、だから、自分からアーティストにアプローチすることもある。自分ばっかりが追われる立場じゃないよ。
 

Q:あなたが「Gimmie The Light」や「Get Busy」で世界的ブレイクを果たした2003年から、早くも15年以上が経過しましたが、あなたの音楽への取り組み方や音楽へのアプローチで、変わった点、変わらない点は何でしょうか?

音楽への取り組み方は、ほとんど同じだよ。スタジオに入ると燃えるし、新しいリディムを聞くのは好きだし。昔より作業が早くなったかな、と思う。今週3、4曲作ったら、次の週にはそれを何度もリピートで聴いて、「お、これ良いな!」なんて納得してたりする。自分でやったとは思えないこともあるんだよな。トランス状態っていうか、ディープな状態になるんだ、スタジオにいると。目の前にあるパズルを、ガンガン合わせて傑作ができるまで作業してる感じ。で、自分で一つ一つパーツ組み合わせて作った傑作の全体像を目の当たりにする。そうやってスタジオに入って音楽作る作業は、俺がこの業界にいて最もやりがいを感じるコトの一つだよ。

Q:ストリーミングの普及で音楽の聴かれ方もだいぶ変わったと思いますが、今の時代、アーティストがブレイクするのに必要なことは何だと思いますか?

それは難しいね。昔はさ、例えば、ジャマイカのダンスホール界ではとにかくラジオでかけてもらうのが大事だったんだ。そうすることで、自分の曲をいろんな人に何度も聴いてもらえたわけだからね。だからそれが目的で、DJ と知り合って、友達になって、頼まれ事してあげたりして、自分の音楽をかけてもらうように仕掛けてた。自分がいない時でも、人が自分の音楽を聴いてくれるようにね。あれも大変だったよ。だって、他のアーティストとの競争もあるし、たくさんの人と密に連絡取ってないとならないからね。でもインターネットが登場して、今度はみんな MySpace や Facebook なんかで自分の音楽を押し出すようになった。これは確かに素晴らしいけど、MySpace だけでも1500万くらいのバンドがいるわけだから、埋もれちゃうこともある。Twitter や Instagram の登場で、今度は音楽だけじゃなくて自分の「らしさ」やら、どんな風に人と交流してるかってのもアピールできるようになった。でも、これも役には立つけど、やっぱり山ほど人が溢れてるから、簡単に埋もれちまう。だから、俺みたいに、DJ と知り合おう、メジャー契約できるように、たくさんの人に聴いてもらおうって努力してた方がラクだったのか、今の若いヤツらのやり方の方が全然ラクなのかは決めがたいよね。みんなに知ってもらいたい、ってやってる動画ブロガーやアーティストやミュージシャンも、100万人の中から2〜3人、本気で大ヒットする人が出てくる。ものすごいサクセスストーリーもあるだろ。ジャスティン・ビーバーだって元は YouTube がきっかけだったわけで、それであれだけデカくなったんだからね。彼はだって、大物スターだろ。彼みたいな人がいるかと思えば、それを目指して頑張ってた子たちも何百万人といるはずさ。中には才能がある子もいるけど、見逃されたわけだよな。だから、どっちが良いとは言えない。でも、こんな風に何か新しいツールが登場したら、まず試してみて、どうしたら自分にとって上手く活用できるかやってみるべきだと思う。

Q:一時、メインストリームでは少し下火になっていた感もある“レゲエ”という音楽も、先ほどの “レゲトン” 等と共に復活した感がありますが、あなたはどう感じていますか?

そうだね。俺とは違うジャンルの人にはそう思えるかもしれないけど、俺とかは、12〜13才の頃、本格的にやり出す前からダンスホールに魂注ぎ込んで生きてきた人間だからね。世界的には盛り上がってなかったかもしれないけど、俺は今と同じぐらいのめり込んでたよ。だから、それはその人の興味によってじゃないかな。
カリブ海のフランス系の島にはズークっていう音楽があるんだけど、俺の耳には時々入ってきては、また静かになって、って感じなんだな。でも、あの人たちにとっては、ズークが好きな人にとっては、毎日のことだろうしさ。Major Lazer やらジャスティン・ビーバーやら、ドレイクやリアーナがやってるんで、またここ数年また盛り上がってきた印象なんだろうね。あとエド・シーランなんかも影響を感じさせる。さっきも話題に出たけど、アフロビートも。うん、まあ
だからまた盛り上がってきてるってことか。


Q:最近のアーティストで注目している人は誰ですか?(レゲエとそれ以外で)

アフロビートだと、近々 Davido とコラボすることになってる。連絡取り合うようになったら、いいヤツだし、音楽も好きなんで、うまく実現できるといいなって思ってる。あと、ドミニカ共和国出身の Mozart La Para と最近コラボしたんだ。「Lento」って曲なんだけど、これは近々リリース予定だよ。いろんなの何でも聴くようにはしてる。中にはホットなアーティストもいるし、たまにクレイジーなのにも出くわす。インディーズのアーティストとかさ。 XXXTentacion にもしばらく注目してたんだけどね。あんなことになっちゃうなんて、悲しかったよ。さっきインターネットのおかげでアーティストが発見できるって話したけど、彼なんかは俺にとってまさにそのケースだったんだ。それまで全然聞いたことなかったんだけどね。ラジオとかクラブでかかってる音楽以外、なかなか聴く機会がなかったからさ。まあだから彼みたいな人とか。他には……Ray BLK。シンガーって呼ぶべきなのか、R&B アーティストって呼ぶべきなのか、ちょっとわかんないけど、まあシンガーソングライターなのかな。イギリス出身、ナイジェリア生まれの魅力的なアーティストだよ。彼女とも最近仕事したんだけど、早くみんなに聴いてもらいたいなと思ってる。
ジャマイカでは、プロデュース業もやってて、若手の世話もしてるんだ。Gang Gang ってリディム作ってて、これには俺と、スプラガ・ベンツと Konshens と、あと他にもいろんな人が参加した全11曲のプロジェクト。まあそれがジャマイカでの俺らのやり方だからね。一つのリディムでたくさんの曲作っちゃう、っていう。で、若手アーティストは、Sotto Bless、Dan Java、あと Ras Ajai が入ってる。彼らには期待してるよ。あと、ジャマイカに Masicka って若手がいるんだけど、彼もかなりイケてると思う。あと、Squash だな。

Q:Gang Gang、すごい楽しみですね。

うん、素晴らしいプロジェクトだと思うよ。一つのリディムで11曲違う曲作ったんだからさ、パーティーで DJ が思いっきり楽しめると思うし、バッドマン・チューンもあれば、人生について真面目に歌ってる曲もある。ジャグリング(注:次から次へと曲を繋いで客を盛り上がらせる DJ スタイル)って呼ばれるやり方なんだけど、俺は好きなんだよね。俺のカルチャーにおいては大事な要素だったんだ。最近はシングル・リリースが当たり前になってきてて、あんまり行われないけど、ジャグリングはダンスホールにおける教会みたいなもんでさ、俺にとっては。一つのビートでいろんな教えやバイブスが説かれる。とにかく気分がアガるんだ。


Q:先ほどドミニカ共和国出身の Mozart La Para とのコラボ曲の話がありましたが、「Lento」が次のシングルになるのですか?

いや、あれは彼のリリースだよ。

Q:次の新曲リリースの予定はありますか?どんな曲になるのでしょうか?

うん、あるよ。ただ、どれをシングルにするかで悩んでるんだ。この1年でかなりたくさんの曲作ったから、中にはプロデューサーが仕上げやってる曲もあるし、まだコーラス部分のシンガーやゲストのヴァースを調整してるのもあるし。今回のこの曲ぐらい自信ある作品が、今いくつかあるんだよ。

Q:その他、今後の活動予定を教えてください。アルバムの予定もありますか?

アルバムは、うん、それに向けての作業はしてるよ。でも、さっき言った通り、まだ周りの体温が俺に合ってないっていうか、みんなの中で、俺のアルバムへの受け入れ体制がまだできてないと思う。だからシングルでアッタクしてるわけさ。去年はベッキー・G との「Mad Love」や、Tory Lanezとの曲や、Migos、エリー・ゴールディングとの曲もやっただろ。そんな風に、また幅広いタイプのことをやって、もっとリリースしていくつもりでいるよ。

Q:今もジャマイカに住んでいるのですか? その理由は?

ああ。俺はジャマイカ生まれだしさ。俺の両親は国代表の水泳選手でさ、俺も5才の時から人に水泳教えるぐらいだったんだ。他の人にも、毎年夏は彼らと泳ぐように勧めてる。14から24才ぐらいまでは、俺も水泳とウォーターポロでジャマイカ代表やってたんだ。そういう面で、俺は愛国心あるしさ。今やもうそばにいない人や、俺のこと嫌ってる人間、俺を大したアーティストじゃねえなって思ってる人だっているけど、そういう人たちがいてこそ、今の俺がある、って俺は思ってるんだよ。だから、そんな自分の国の歴史に携わっていたいと思うんだ。悪い面もたくさんあるけど、美しく素晴らしい面も本当にたくさんある。俺は、自分という土台を使って、ジャマイカのそういう素晴らしい部分を世の中に発信したい。それが自分にとっての義務だと思ってるんだ。俺って人間を形成してくれた場所だから。他の土地だと落ち着かないと思う。マイアミも大好きだし、ニューヨークも LA も、いろいろ好きな場所はあるけどさ。日本に行くたび、クレイジーなぐらい最高な体験をしてる。でも自分のホームであるジャマイカにいるってことは、俺にとってすごく大事なことなんだ。
 

日本について

Q:最後に来日は2015年でしたが、近々に来日の予定はありますか?

うん、日本に行くたび、日本の文化に本当に感動するんだ。みんなのお互いへのリスペクトは、最高だよ! 住んでるわけじゃないから、日々の生活がどんなものかとは言えないけど、日本で目に入ってくる様子は、みんな本当にお互いに思いやりがあって、本当に素晴らしいことだと思う。あと俺は食が大好きだから、日本の食事が大好きさ。新鮮で。

Q:もうだいぶ日本にはお詳しいとは思いますが、日本での最大の楽しみは何ですか?

食べ物だよ、もちろん!

Q:今まで日本アーティストともいくつかコラボレーションしましたが、日本のアーティストはどんな印象ですか?

日本のアーティストは柔軟性に長けてると思うね。ジャマイカに来て、俺らのスタイルでクラブ盛り上げちゃう日本のアーティストもいるしさ!オーディエンスを、本気で盛り上げちゃうんだ。アーティストにサウンド・システムも。Major Laze r……じゃなかった、Mighty Crown とかスゴいぜ。彼らは俺らのジャンルにおいては大きな影響力持ってる。サウンドクラッシュとかも優勝しちゃうんだからな。しかもクレイジーなことにさ、生粋のジャマイカ人みたいなサウンド聴かせてくれる。2人揃って横浜出身の日本人の野郎がさ(笑)。だからそういう多様性だね。ラッパーの Zeebra とかもさ、使ってるビートとか、何言ってるかわからなくても、彼のスタイルはイケてるなって思うよ。ダンスホール・アーティストからサウンド・システム、ラッパーにポップ・アーティスト……俺もポップ・アーティストとコラボしたことあるけど、そんな感じで、日本のアーティストっていうと、とにかく多様性があるなって思ってる。

Q:最後に日本のファンへメッセージをお願いします!

コンニチハ、ジャパン! みんなにラブ & リスペクトを込めて挨拶させてもらってる、ショーン・ポールだ。俺はみんなのカルチャーの大ファンなんだ。俺の音楽気に入ってくれてる人もいるみたいだから、また近々来日できるのを楽しみにしてるぜ!絶対盛り上げるから、それまで楽しみにしててくれ! Nuff Love!

インタビュー協力:Aiko Ishikawa