世界的なムーブメントとして席巻し、今では誰でも聞くようになったダンスミュージックであるが、ジャンルが細分化され過ぎていて、違いがわからないという人も多いだろう。EDM という言葉が作られる前と後では、同じ名前のジャンルでも全く別物の場合もある。
ここではその違いも含めてジャンルをわかりやすく紹介したいと思う。
前回の House編 に続き、今回は「Techno(テクノ)」を紹介したい。
 

・Techno(テクノ)

テクノはアメリカのミシガン州デトロイトで1980年代半ばから後半にかけて現れたエレクトロニックミュージックの一種。特定のジャンルの音楽に対してテクノという言葉が最初に記録されたのは1988年で、現在テクノのスタイルは数多くあるが、デトロイトテクノはすべての原点であり、多くのサブジャンルが構築された起原として見られている。

デトロイトでテクノはシカゴハウス、ファンク、エレクトロニックジャズなどの黒人音楽と Kraftwerk(クラフトワーク)、Giorgio Moroder(ジョルジオ・モロダー)、Yellow Magic Orchestra(イエロー・マジック・オーケストラ)などのアーティストによるエレクトロニックミュージックとの融合によって生まれた。
テクノは一般に反復するインストゥルメンタルミュージックで、中心となるリズムはほとんどの場合4つ打ちのキック、BPM は120から150、機械的な音を多用し、曲というよりはほぼリズムで、強い音でメリハリがあるのが特徴。

代表的なアーティスト:The Advent(ザ・アドベント)、Aphex Twin(エイフェックス・ツイン)、Autechre(オウテカ)、Bandulu(バンドゥル)、Si Begg(シ・ベッグ)、Adam Beyer(アダム・ベイヤー)、Thomas Brinkmann(トーマス・ブリンクマン)、Marco Carola(マルコ・カローラ)、
Dave Clarke(デイブ・クラーク)、Carl Cox(カール・コックス)、Vladislav Delay(ヴラディスラフ・ディレイ)、Drexciya(ドレクシア)、Paul van Dyk(ポール・ヴァン・ダイク)、Darren Emerson(ダレン・エマーソン)、Fluke(フルーク)、The Future Sound of London(フューチャー・サウンド・オブ・ロンドン)、Laurent Garnier(ローラン・ガルニエ)、A Guy Called Gerald(ア・ガイ・コールド・ジェラルド)、Hardfloor(ハードフロア)、DJ Hell(DJ ヘル)、Ken Ishii、Chris Liebing(クリス・リービング)、LSG、Jeff Mills(ジェフ・ミルズ)、Pan Sonic(パン・ソニック)、Plastikman(プラスティックマン)、Luke Slater(ルーク・スレーター)、Speedy J(スピーディー・ジェイ)、Surgeon(サージョン)、Keith Tucker(キース・タッカー)、Umek(ウメック)、Ricardo Villalobos(リカルド・ビラロボス)、Cristian Vogel(クリスチャン・ボーゲル)、Richie Hawtin(リッチー・ホーティン)
 
 
 
 

∟ AMBIENT TECHNO(アンビエント・テクノ )
インテリジェント・テクノとも呼ばれ、テクノ、アンビエント・ハウスから派生して生まれたジャンル。大衆が踊るダンス志向の音から離れ、電子的なリスニング・ミュージックとして人気を博した。B12、Aphex Twin(エイフェックス・ツイン)、The Black Dog(ブラック・ドッグ)などのアーティストによって開発された。

代表的なアーティスト:Aphex Twin(エイフェックス・ツイン)、Autechre(オウテカ)、B12、Biosphere(バイオスフィア)、The Black Dog(ブラック・ドッグ)、Gas(ガス)、The Orb(オーブ)、Orbital(オービタル)、Richie Hawtin(リッチー・ホーティン)
 
 

∟ MINIMAL TECHNO(ミニマル・テクノ )
テクノのサブジャンルの一つで、1990年代初頭に Robert Hood(ロバート・フッド)と Daniel Bell(ダニエル・ベル)によって作られたとされている。
テクノの基本である4つ打ちに少ない音数で、同じフレーズが幾度となく延々と繰り返されるのが特徴。メロディーは重要視されておらず、リズムや一音のインパクトが重要視されている。

代表的なアーティスト:Richie Hawtin(リッチー・ホーティン)、Jeff Mills(ジェフ・ミルズ)、Maurizio(モーリッツ)、Suburban Knight(サバーバン・ナイト)、Ricardo Villalobos(リカルド・ヴィラロボス)
 
 
 

∟ HARDCORE TECHNO(ハードコア・テクノ )

1990年代にオランダやアメリカなどで同時期に生まれたジャンル。1990年に Mescalinum United(メスカリナム・ユナイテッド)が最初のハードコアテクノ(ガバ)のトラックである「We Have Arrived」をリリースしたことで知られるようになった。後に Aphex Twin がリミックスをリリースしている。
BPM が早く 160〜200ぐらいで、時にはそれ以上の場合もあり、強いビートに大胆で特徴的なベース、時には攻撃的なリズムによって他のジャンルとは区別される。現在でもハードコアテクノは進化し続けていて、様々なサブジャンルが現れている。
 
 

∟ Gabber(ガバ)
初期の頃はオランダ、ドイツ、フランス、オーストラリアなどで人気があり、BPM は150〜180ぐらいだが、中には300近い楽曲も存在する。とてつもなく重いキックが特徴で、キックにディストーションをかけた音を「ガバキック」ともいう。2002年にメジャーになりヒットするのだが、2002年よりも前と後では音楽の傾向がことなる。現代主流になっている Gabber は初期に比べて複雑な音を用い、BPM は150〜165と少し遅い。
 

∟ Bouncy Techno(バウンシー・テクノ)
ガバの影響を受けたハードコア・テクノのジャンル。特に弾むような感覚のベースとビートが特徴。これが後にハッピー・コアや UK ハード・コアへの反転を生み出した。
 

∟ Breakbeat Hardcore(ブレイクビート・ハードコア)
1992年から1996年にかけて人気のあったブレイクビーツを使ったジャンル。オールドルクールのジャングル、アシッドハウスから影響を受けた。
 

∟ Happy Hardcore(ハッピー・ハードコア)
ブレイクビート・ハードコアか派生したジャンル。Bouncy Techno、Italo House で用いられるピアノリフなどを使い、BPM は165〜180。感傷的な歌詞のボーカルとよく組み合わされることが多い。
 

∟ UK Hardcore(UK ハードコア)
Happy Hardcore や Freeform Hardcore を経て誕生したジャンル。曲調は様々なものがあり、ハードトランスもようなものから、最近ではダブステップ、ドラムンベースなどの影響も受け、多岐にわたる進化を遂げている。
 

∟ Powerstomp(パワーストンプ)
Gabber と Hardstyle の影響を受けた UK Hardcore のサブジャンルで、弾むようなハードな4つ打ちにベースラインが特徴。
 

∟ Trancecore(トランスコア)
Happy Hardcore や UK Hardcore に トランス(特にハードトランス)の強い影響を受けて作られたジャンル。Acidcore(アシッドコア)と密接に関連している。
 

∟ Freeform Hardcore(フリーフォーム・ハードコア)
Hardtrance から派生したジャンルで、Trancecore の一種。アシッドっぽさもありながら、トランスの手法も用いられる。ムーブメントとは逆行している独自の形態をとることが多くあり、ジャンルの中で大きく分けて UK 系と FIN 系の二つが存在する。
 

∟ Psycore(サイコア)
Psychedelic Trance と Happy Hardcore を混ぜたようなものだが、Psychedelic Trance をただスピードアップしたものと捉えられている。