先日、クラブシーンを震撼させる、本来起きてはならない事件が立て続けに起きた。
ハウスミュージックのレジェンドであるアーティスト、Erick Morillo(エリック・モリロ)が女性をレイプした罪で逮捕・起訴された。その後 Erick Morillo は25,000 USドルの保釈金を支払い保釈され、次回の公判を控えていたが、9月1日に自宅で死亡しているのを警察が発見。警察は「明らかな犯罪行為等はなかった様子」であると発表していた。

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女性への性暴行罪で逮捕・起訴されていたハウス界のレジェンド Erick Morillo(エリック・モリロ)、マイアミの自宅で死亡

Erick Morillo がマイアミビーチ警察に逮捕された際、被害者はレイプキットで検査し、その結果 Erick Morillo の DNA の陽性反応が検出されたため逮捕されたわけだが、Erick Morillo はマイアミビーチ警察に自首している。


Erick Morillo はハウスミュージック、ダンスミュージックシーンに40年近くに渡って大きな功績を残してきたレジェンドであり、シーンの様々な人々が彼の死にショックを受け、彼の死を悼んでいる。

そんな中、Erick Morillo の葬儀がソーシャルメディアでライブ配信されることが決定した。このライブストリーミングでは、アメリカ・ニュージャージー州に拠点を置く慈善団体・Brian P.Stack Civic Association への寄付を募っている。同団体は、病気や貧困といった問題を抱える子どもたちやその家族への慈善援助や、様々な理由によって犠牲者となった人々への援助等の活動を行う団体である。

この葬儀のライブ配信にあたり、Erick Morillo の SNS 等では彼の家族により、以下のようなコメントが発表されている。
 

「Erick は、ファンからのサポートに対し、常にとても感謝していた。だから私たちは、彼の葬儀をライブストリーミングしようと決めた。それにより、彼の人生を尊敬し、皆さんと一緒に彼の生きた証を祝うことができる」

しかし、これに対し、EDM メディアの YourEDM ではダンスミュージックシーンで32年のキャリアを持ち、Erick Morillo と近しい存在であったとされる DJ/ミュージシャン/俳優/ラッパーである Mr.C、本名:Richard West が発した手厳しいコメントを掲載している。

Richard West は幼少期に同性からの性的虐待を3年間に渡って受け続けており、その経験から自分と親しい存在であった Erick Morillo について深く思うところがあったようで、SNS で以下のような投稿を綴っている。
 

上記の投稿は非常に長いので、一部を抜粋して翻訳したのが下のもの。

今日は、Erick Morillo の公判日だった。しかし、もちろんそこに彼はいない。僕は、この事件の被害者へ心から哀悼の意を表する。そして、この被害者はレイプされたのにも関わらず、正義を受けることができない。

このコミュニティーの年長者として、僕がこの投稿をする事は僕の責任だと思っている。そしてこのシーンにいる女性たちを守るために。
僕は約3年間、10歳から13歳にの時にほぼ毎日とある男性から性的虐待を受けていた。度重なるこの性的虐待は僕の意思に反していた。僕はまだ子供だった。僕はこの性的虐待者から、彼の要求通りにしないと僕がゲイだと僕の母親や友達に話すと脅されていた。僕は他人の目が怖くてずっと黙っていたんだ。だから僕は性的虐待を受けた被害者と言う観点から、Erick Morillo の事件についてコメントしている。

僕は、彼がイビザでレイプしたと聞いた。しかしそのことを告発した女性は一人もいなかった。それに僕の知り合いの女性の中にもそういった人はいなかったので、僕はそれはただの噂だと思うしかなかった。僕は、この頃からすでに Erick Morilloと距離を置いていた。だって火のない所に煙は出ないって言うからね。
その後、ニューヨークでレイプしたという噂を耳にした。しかしこの時も誰も彼を告発しなかった。その女性たちが誰なのかも分からなかったから、僕はこれはただの噂だと思うしかなかった。

そして1ヶ月後、このマイアミの事件が起こった。3日前、僕は彼が死んだというニュースを見た。彼の裁判の3日前だ。
彼の被害者は正義を見る事はないだろう。
人々は「有罪が証明されるまで無罪だ」と言っている。
だがいま、その判決が下されることはないだろう。だけど、僕たちはみんな、彼がレイプしたことを知っているはずだ。

そしてここ数日間、僕は多くのDJ 達が Instagram や Facebook に Erick Morillo と一緒に笑って映っている写真を投稿したり「RIP 安らかにお眠り下さい」と言ったり、最高な DJ / Producer で面白い人だったなどど言っているのを目にした。
まるで性的虐待者がヒーロー扱いされているようだった。

もちろん、彼への尊敬の意や、友達を亡くしたことの悲しさや同情は、100%理解できる。
だけど、もしもこういった投稿を被害者が目にしたら、彼らがどう思うと考える?
もしくは、この音楽シーンで活躍している DJ やプロデューサーたちが、立ち上がり声を上げ、レイブ犯を称賛している姿をレイプ被害者が見たら、どう思う?

もしも、これが Jeffrey Epstein(アメリカの極悪性犯罪者)や Jimmy Saville(青少年に性的虐待や強姦を行っていた)だとしたら、立ち上がり称賛し、同じことをするだろうか?
そこにはなんら大きな違いはない。

ここ最近、僕自身 SNS から距離を置いている。それは僕の感情が揺さぶられ、自分が性的被害者だと思い出してしまうから。
僕が正直に懸念していることは、こういった投稿を見て性的被害者たちがどう感じるか、ということだ。

絶対に支持しないよね。

中には「Erick Morillo の家族や友人への敬意を示すため、レイプの裁判に関しては言うべきではない」と言う人もいる。
僕は賛成できない。これらの投稿が性的被害者に与える精神的苦痛を想像してみて欲しい。もしも、その被害者があなたの彼女、妹、姉、あなたの大切な人だったらと想像してみて欲しい。

はい、僕は、Erick Morillo がイビザにあるラグジュアリーなヴィラに女性たちを無料で招待し、滞在させ、その代償として彼女たちは彼と性的行為しなければならない、という話を聞いたこともある。それはそうだろう、そこには承諾がある。

しかし、女性がお酒に酔っ払っているときは承諾がない。
女性が全く正気でいないときは、それは承諾ではない。

結論は、僕はこの音楽シーンをとても愛しているということだ。そして35年間も共にしてきた。
僕たちのシーンにいる性的虐待を受けた女性たちが、僕たちのシーンにいる人たちが公共の場でレイプ犯を支援するような投稿して、被害者たちはどのような影響を受けるのか、僕は本当に心配している。
そのことを少し考えて貰えないだろうか?

この Richard West による発言や、YourEDM の記事は、極端な言い方をすれば「死者に鞭を打つ」言動であり、レジェンドの名誉を傷つけているものなのかもしれない。その証拠に、クラブシーン、ダンスミュージックシーンにおいて、この投稿は物議を醸しているし、あまりメディアにも取り上げられていない。

しかし、否定的な意見の一方で、Richard West のコメントには「多くのイビザ在住の DJ が失職を恐れて公にこれについて話さない」等とのコメントも寄せられている。
 

誰かの命が消えてしまうことは、非常に悲しくショッキングなことである。
しかし、だからと言って「死」というものによって全ての罪が許されるというものではない。被害者側の苦悩は、犯人が死んだところで消えるわけではなく、その記憶は一生に渡って彼らの心を蝕み続ける。

Erick Morillo がダンスミュージックシーンに残した功績は偉大なものだが、その一方で彼が犯してしまった過ちは見逃されるべきものではないし、彼の功績によって彼の過ちが補填されるのかといえば、それは絶対にない。

残された私たちは、今後、同じような悲劇を防ぐためにも、その辺りを決して履き違えてはならないのではないだろうか。