ダンスミュージックシーンは随時多数のジャンルが生まれ、そして流行の経過と共に表舞台から消えていく。
そんな浮き沈みの激しいダンスミュージックシーンにおいて、90年代から存在すると言われており、しかも2021年の現代においても独自路線を突っ走っているジャンルがある。それが、Russian Hardbass(ロシアン・ハードベース)だ。

文字通り、ロシア発のハードなベースミュージックなのだが、そのサウンドはもちろん、MV がどの作品を取ってみてもツッコミどころ満載で延々と見ていられるほどの中毒性なので、いくつかご紹介したい。
 

とりあえずどのビデオにも共通して言えるのが、とにかくチープ。郊外の廃工場や、空き地みたいなところに集まって、タバコを吸ったり茶色いペットボトルに入った酒(恐らくビールまたはウォッカ?)を飲み回し、バットや棒を振り回しながら激しく踊っている。さすがはコサックダンスの本場だけあり?、皆ひょこひょこと足をよく動かす。
栄養が行き届いていないのか遺伝なのかほぼ全員ヒョロヒョロだが、時折ピストルやマシンガンを構えている不良(ロシア語でゴプニク)が出てきたりするのがおそロシアだ。
 

MVビデオに出てくる不良の女性(ゴプニツァ)たちは、この Russian Hardbass に関して言えば、特にセクシーなファッションというわけでもなく、大体男性と同じようなアディダスのジャージ姿であることが多い。なぜナイキではなくアディダスなのか……それは、1980年のモスクワ五輪開催の際に、ソ連製の繊維製品が粗悪過ぎたため、当時政府はアディダスと契約、しかし結局資本主義である欧州製のメーカーの服を選手に着せることを嫌がり、ロゴマークと3本線の1本を取り外して2本線にして選手に着せたのが大流行、その後犯罪者や不良のトレードマークとなった……とのことで、つまりロシアでアディダスは「悪いヤツの象徴」であるようだ。
 

また、やたら曲名や歌詞に「SLAV」という言葉が登場するが、これはスラブ語を使う民族の総称だが、ロシアの不良であるゴプニクの一部はロシア民族主義、パン・スラヴ主義に傾倒しており、反ヨーロッパ的な思想を持つ場合も多いようだが、おそらくDie Antwoord(ダイ・アントワード)が「Zef」という言葉を多用するのと同じで、「SLAV」というワードを自己肯定的にガンガン使用しているものと思われる。そう言えば、Die Antwoord と Russian Hardbass の MV の "田舎のヤンキー感" もちょっと似ているような……?
 

このロシアのギャングスタ気取りな MV が多い中、この Russian Village Boys の MV は、ヤンキー臭は依然として凄いものの割とコミカル路線なものが多く、ちょっとした独自路線を走っているように見受けられる。
 
 

とにかく、掘れば掘るほど更に見たくなる中毒性の高い Russian Hardbass の MV の世界……。
なんだか元気が出ないな、というとき、コロナで鬱になりそう……というときは、ウォッカをショットで煽って Russian Hardbass の MV を数時間鑑賞し続ければ、全てがどうでも良くなりそうだ。(そしてアディダスジャージを着たくなりそうだ。)