Mixmag によると、この夏ソーシャルディスタンスを保つため入場制限をするナイトクラブやフェスティバル会場にて、DJ やフロアの雰囲気を盛り上げるために、新たな音響システムの使用が予定されていることが発表された。その音響システムとは「録音済みのフェイク観客サウンド」であるという。


事前に録音された音響シミュレーションは、アリーナ規模の会場やスタジアムなどで使用されるものと予想されている。これらの大規模な会場は、入場規制を行ったり、ソーシャルディスタンスに従う必要があるため、以前のような超満員にするのは不可能となるため、会場の雰囲気を盛り上げるために使用されるとのことだ。


この提案は既に EDM アーティスト、Marshmello(マシュメロ)David Guetta(デイビッド・ゲッタ)The Chainsmokers(ザ・チェインスモーカーズ)らのヘッドライナー級のアーティストからは歓迎されているとのことだ。

The Chainsmokers は「この方法はとても理にかなっていると思う。これからダンスフロアに入れる人数は以前に比べて少なくなるだろう。そのためそういったサウンドは雰囲気を作るのに役立つと思う」とコメントしている。


だが一方で、匿名の音楽業界筋は Mixmag に以下のようにコメントしたそうだ。

この提案は市場操作するために大きな影響を持つものになるだろう。近いうちに、アーティストのマネージャーは、実際は空っぽのライブショーなのに、猛烈に素晴らしい雰囲気である会場のように演出することができるようになるだろう。

そして、近いうちに実際はファンが1人もその場に存在しないのに、物凄い数の偽のフォロワーがいる DJ がアリーナ会場のヘッドライナーとなるだろう。

▼ エミレーツ・スタジアム
この音響システムは、オランダの企業 Nepbedrijf 社が運営するものである。Nepbedrijf 社は以前、BTスポーツ社と協力し、サッカーのプレミアリーグにてフェイク観客サウンドを流していた。それに対して、アメリカ・ラスベガスに新規オープンする クラブのイベント・マネージャー Eric D. Matterhorn(エリック・D・マッターホルン)は以下のようにコメント。

彼ら(Nepbedrijf 社)が、全く歓声のない魂が抜けたような UK にあるエミレーツ・スタジアム(※60,260人収容)を、大繁盛で歓声に溢れるアリーナに変えた瞬間を見たとき、私たちは彼らがどのようなことをできるのか理解し、一緒に仕事をする必要があると感じた。

だが誰もがこの提案に賛成というわけではない。
あるユーザーはクラブの投稿した Instagram のポストに「私が唯一フェイクの拍手を聴きたいのは、MIDI からの拍手で Ableton(エイブルトン)で作られたものだけだ。」とコメントしている。
※Ableton とは DAW ソフトウェア。