アメリカ・ニューヨークにあるメトロポリタン美術館にて2021年9月13日に開催されるファッションの祭典、METガラ(メットガラ)が、参加に際しての新型コロナウイルス安全対策として、ゲストに新型コロナウイルスのワクチン接種証明書と、新型コロナ検査の陰性証明書の提示を義務付けているが、METガラの常連として知られるラッパーの Nicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)は、このワクチン接種を拒否し、不参加を表明した。

Nicki Minaj は、自身の Twitter にて、METガラの新型コロナウイルス対応に対して以下のようにコメント。
 

彼らはメトロポリタン美術館の予防接種を受けて欲しいと思っている。私がワクチン接種を受けるなら、それはメトロポリタン美術館のためというわけではない。十分に調べて納得できたら、そうするでしょう。私は今、それに取り組んでいる。それまでの間、私の愛する人たち、安全を確保してね。頭と顔に、2本の紐でマスクを着用してね。それほど緩くないものでね(手を合わせた絵文字&ハートの絵文字)

更には、こんなツイートも。
 

トリニダードの私の従兄弟は、彼の友人がそれを手に入れて(ワクチンを打って)無力になったので、ワクチンを打たなかった。彼の睾丸は腫れた。彼の友人は、数週間結婚を延期していたが、新婦が結婚式をキャンセルした。だから、ただそれについて祈って、脅したりするのではなく、あなたが自分の決定に満足したことを確認して欲しい。

しかし、米国で報告されているワクチンの副反応には、睾丸の腫れについては報告されておらず、Twitter では従兄弟の友人は "性病なのでは" とのコメントや、新型コロナウイルスに関する誤情報が拡散されるとして、Nicki を非難する声も。

しかし Nicki は、自身が MET ガラに参加しないのは従兄弟の友人の「睾丸が腫れた」からではなく「自身の赤ちゃんを心配して」のことで、メディアが彼女のコメントを大げさに誇張して煽っている、とファンに向けて反論している。

彼女は、以下のツイートで、MTV のビデオ・ミュージック・アワードの準備中、新型コロナウイルスに感染したと発言しており、それが METガラに参加しない最大の要因であると主張。

愛する赤ちゃん。私は、MTV のビデオ・ミュージック・アワードの準備中、ビデオを撮影していて、誰が新型コロナウイルスに感染したと思う? 小さな赤ちゃんに1週間以上キスしたり抱っこしたりできないことが想像できる? ママだけに慣れている赤ちゃんよ?「ワクチンを摂取しよう」Drake(ドレイク)はワクチンを接種してコロナに感染した、だから(ワクチン接種を勧めるのを)やめて。


更に、ファンの一人が「ワクチンはコロナへの感染を防ぐものではなく、重症化を防ぐものだ」と発言したことに対し「それは真実ではない。私は忌々しいワクチンを打った人たちと全く同じ症状だった」等ともコメントしているため、そもそもワクチンに対して良い印象を持っていなかった様子。

しかしその後、炎上っぷりにまずいと思ったのか、ファンたちに向けて「ワクチンを打つならどのメーカーのものが良いか?」等を投票形式で質問したりもしている。

黒人コミュニティの中には新型コロナワクチンに否定的な人が多い? その理由は……米政府による人種差別的・非人道的な「タスキギー梅毒実験」の歴史にあり??

アメリカ政府は、過去に1950年代半ば〜1972年まで、アメリカの一般病院で教育水準が低く貧しいアフリカ系黒人男性の入院患者に対して、医療を無料で提供し、年金等の恩恵を与えるという口車に乗せる形で、本人の了解を得ない人種差別的・非人道的な医療実験「タスキギー梅毒実験」を行なっており、その人種差別的で残虐な歴史を抱えているため、アメリカ在住の黒人の間では「ワクチン=人体実験されるのでは」という恐怖感・不信感が今だに根強く残っているという。そのため、黒人の中で指導者的な立場にある人が、ワクチン接種についてを黒人コミュニティに勧めると、それだけでも信用を失う可能性が高いため、積極的に勧められないという背景があった。

Nicki Minaj は一連のツイートの中では特にこの点には触れていないものの、黒人コミュニティの中ではこの事実はかなり根深いアメリカの闇の歴史的な問題となっているため、こういった考えが下地にある可能性は少なくはないだろう。また、彼女の故郷・トリニダード・トバゴは中南米であるが、コミュニティ的には黒人コミュニティの中にいるであろうため、やはり周囲にはワクチンに否定的な層も一定数いるであろうことは間違いない。

新型コロナウイルスや、そのワクチンに対しての考え方は、アメリカでは先進的な地域ではワクチン肯定派が多く、郊外へ行けば行くほど医療やワクチンに否定的な層が増えるというイメージが強いが、その背景にはアメリカが抱える様々な問題が複雑に絡んでいることも忘れてはならない。